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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯4 今までも、これからもおとめ
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『私は一番ここが好き』

 まわりをかこんでいた殿方とのがたたちが、だい大人おとなたちが、女学生二人をろそうと土俵どひょうへ上がって来た――何をそんなにムキになっていたのか。


 しかし、私にとっては、そのよう明確めいかく敵意てきいを殿方からけたことは無く、ただ恐怖きょうふだった。


 土俵際どひょうぎわ、たじろぐ私とはかえ大郷司だいごうじ万千まちは私を守る様に仕切しきり、ドレス姿すがたを気にもめず身構みがまえた。


 その背中せなかは大きく見えた。


「時間いっぱい、といったところかしら――大丈夫だいじょうぶですわ、何があっても貴女きじょを土俵から出させはしない。わたくし、しょう々貴女を見直みなおしましたわ」


 ハッ――。


 はっけよい――のこった。


 そんな間合まあいだった。


 彼女はドレス姿にもかかわらず、土俵へ上がって来た殿方達と組み合い、大の男達おとこたちを次から次へとばしていった。


 それは何と爽快そうかいで、面白おもしろ光景こうけいだろうか。


 大の大人が、彼女より大きい男達が土俵の外へ投げ出されていく。


 いくら彼女の体格たいかくが良くても、彼女は乙女おとめなのだから、何と滑稽こっけいだろうか。


「あのむすめ、なんとはしたない。女子じょし相撲すもうなどと…。女性なら女性らしく、女学生なら女学生らしく、おしとやかに――」


 土俵の周りにあつまっていた女性の言葉だった。


 たりまえぎて気付きづかなかった――あの女性が言ったことは間違まちがいじゃない。私もそう教えられそだった。


 しかし、それはただ女性が女性を差別さべつしているだけではないのか。


 私は、私を差別していただけではないか。


 それそのものが女性差別ではないのか。


 私はその事に気が付かずに…。いや、気付かないふりを、気付いていても見て見ぬふりをしていたのだ。


 もし、今日の様な事が彼女のうわさみなもとだとしたら、大郷司万千は何時いつからそのことを、何時からそれらと戦って――。


「――はぁ、はぁ。もう、しまいですの?たわい無いですわ」


 あっという間だった。十人はたであろう大人達は投げ飛ばされ、彼女にかなわないと、すで戦意喪失せんいそうしつあきらめている。


「大郷司さん、怪我けがは?貴女あなたは何時もこんな事を?――貴女がやらないといけないことなの?」


「今日はまだ、投げ飛ばせるだけしですわ。世の中、りや、小手投こてなげではかたづけられない事ばかりですわ――わたくしの戦う相手は、そのほとんどが目に見えないものばかりですの。しかし、たしかにそこに有る。だれめたのか、何故なぜ存在そんざいするのか。その理由さえ分からない様なもの。それは執拗しつようまとわり付き、わたくしをくるしめる。わたくしはそれだけにはてない。だからあらがうしかない、戦うしかないのよ」


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