魔女語
サーカスの天幕から抜け出した私達の前に現れたのは、道化師の格好をした、外国人であろう女性だった。
彼女はこの国の言葉ではない言葉を、まるで聞いた事の無い言葉で話しかけてきた。
しかし、私が驚いたのは、その言葉を夜音も話している事だった。
「夜音、一体何処の言葉を話しているの?その人の言葉が解るの?」
「何言ってんだ?解るも何も、別にあたしは普通に話して――」
「――彼女には理解出来ないわ。私達は今、魔女の言葉を話しているのだから。この言葉は魔女にしか通じない。魔女の公用語、言わば魔女語。東洋の魔女はそんな事も知らないの?」
「!?お前、魔女か?」
まるで言語ですらない様な、聞いた事の無い言葉。
一体何処の国のものだろう。朴さんの様に、言われなければ分からない様な見た目でもなく、黒髪に褐色の肌。
間違いなく外国人だろう。
しかし、何故夜音はそんな異国の言葉を話せるのだろうか?
それに彼女は、私ではなく、夜音に何か話している様だった。まさか、さっきの事が夜音の所為だとバレてしまったのだろうか…。
「夜音、彼女は何て言っているの?――まさか、さっきの事バレちゃったの?」
「待て、あたしも混乱してんだ。奴は何を言っているんだ…」
「さっき、私の出番の時――貴女でしょう?『魔女の一撃』を使ったのは。あれは防ぎようがないから痛いのよ」
「『魔女の一撃』?」
「『チェスト』の事よ。あんな衝撃それしか考えられない――よくも私の出番を台無しにしてくれたわね」
「呪文の事か――それより、質問に答えろ。お前は魔女か?何故あたしにだけお前の言葉が解る?何故こいつには解らない?」
「さっきも言ったでしょ、魔女の言葉だからよ。魔女にしか解らない――それに私が魔女かどうか聞くのは野暮じゃない?」
「だから、あたしに解る訳ないんだよ…。あたし、魔女じゃないから…」
「勿論、私も魔女じゃないわ。魔女の言葉を話せるだけ。しかし、それを知らない貴女が話せるということは――」
「魔女はあたしじゃない、こいつだ。こいつが魔女だ。あたしは、魔法を少し使わせてもらっただけだ」
女性は私を撫でる様に見つめた――夜音が私に付いて何か言ったのだろうか。
彼女達の会話は理解出来ないが、何か言い争っている様だった。
いい加減私に説明をしてもらいたい、彼女が何を言っているのか、夜音は何を話したのか?




