適材
魔女の私は、私の住む国の法律、国際法、『オズ』の法律。一体どれに従えばいいのだろうか?
「『OZ』には『OZ』の法律がある。それは時として、何よりも優先されるもの。忘れないで、ここは『OZ』の領土であることを――」
私に魔法を使かわせ、裁判をどうにかしろと、遠回しに伝えたいのだろうが、無理な相談である。
今は、いや、夜音が居なくては使えないのだから――。
「――但し、『OZ』の法律を知っている人間は存在しないらしいわ」
「それじゃ、どうすることも出来ないじゃない」
「だから貴女に任せるわ――うまくやってね」
『うっ!う~ん?それって――』
腑に落ちない彼女の話を聞きながら、広場の中心にある素敵な噴水を通り過ぎ、街の大通りを抜け、気付くと女性街の最深部『六鳴館』まで来てしまった――。
ところで、この中に万千や環は今も居るのだろうか。さすがに帰っただろうか。
夜音にしても監禁なんてされていないだろうな…。
この館が牢獄に見えてきた。
「違う、そっちじゃない。こっち――」
彼女が指を指した場所は『六鳴館』の隣、といっても奥詰まった場所で、その建物に気付かなかった――。
古びたその建物は、周りの建物とは異なり、まるで『女性街』ができる遥か前からその場所に在ったかの様な佇まいだった。
「この建物は一体――随分…歴史を感じるわ」
「ここは元々、教会だった建物よ――この国でいうなら…、寺院ってところ?」
「裁判をするのでしょう?『六鳴館』ではないの?」
「彼女達だけじゃ、貴女を裁けないからね――私の国でも魔女裁判は教会で行われていたわよ」
神頼みって事?
はぁ~、今更だが、私が魔女と証明出来なかった場合どうなるのだろう。
『オズ』に行けないのはもちろん、唯で家に帰してくれるのだろうか。今になって夜音の言葉が脳裏を横切った。
死ぬかもしれない――。
「私に出来る事はここまでね。舞台は用意した――準備は良い?覚悟は出来ている?」
「…『雷鳥』は魔女やオズを信じているの?――いいえ、普通は相手にもしない筈だわ」
「それは貴女次第。言ったわよね、一心同体って。死ぬときも一緒よ――さぁ、行くわよ」
「え!?ちょっ、待っ――」
――っては貰えず、彼女は古びた元教会の扉を開けた。
広さは『六鳴館』の半分にも満たないが、中は外見ほどの劣化は見られなかった。
中央の通路を挟み、左右に何列もの座席が在り、その正面には演説が出来そうな机が一つ――見渡す限り、まだ誰も来ていないようだった。
だからか、私は目を奪われてしまった――。
一際目を引いたそれは、入って正面、演説机の向こうの壁。
その上半分が硝子で出来ており、色が付き、絵が描かれていた。
見惚れるほどの美しさだった。




