魔法
唯一の手掛りを知る人間が、目の前に――私はどうすればいいのだろう…。
「貴女には順を追って説明したいところだが…。私にとって必要な君だ。いずれ迎えに来るつもりだったのだが――今知る覚悟はあるのかい?」
「今知らないと、きっと後悔するわ。教えて…、教えて下さい」
彼女は懐中時計を覗き見、腰に手を添え、溜息を吐いた。
「時間が無い。簡潔に答えよう――魔女とは、貴女がさっき見せた様な力、『魔法』を使う者の通称。私の国では――まぁいい。で、『OZ』とは、その魔女の『国』のこと。私は環をそこへ連れて行くと約束している」
信じられない。それは本当なの?だとしたら私は、この力は――そもそも『魔法』って一体何?『魔女』は私の事?『オズ』が国?それじゃあ、私の他にも魔女が?母もそうなの?それで『オズ』へ?
「信じられない――それに、『オズ』なんて国は無い……」
「地図にはない国。しかし、存在する。その証拠が貴女――確信と喜び。貴女の存在が計画の証明。これほど嬉しい事は無い」
「私は、その魔女というもので、私以外に魔女が……?そんなのって、そんな事が現実なら――」
「世界がおかしくなる?――まぁ信じられないだろうけど、そうはならない様、法律も存在するわ。嘘か真か、国際法で魔法は世界で禁止とされているわ。しかも、その法律は『OZ』が作ったものらしい」
私の世界は、私を置いてけ堀にし、果てしなく広がってしまった。
私は何も知らず、あたかも世界の中心居るとでも錯覚していた。しかし、実際は私抜きでも廻っていたのだ。
心の何処かで自分は特別だと思っていた。その所為で私は、何も知ろうとはせず、何も知らなかったのか。
「そんな事言われても、私――どうすれば…」
「…悪いけど、時間切れね。行くわ――何れ貴女を正式に迎えに来る。その時続きを話しましょう」
「まって!私は――いや!行かないで!私も――」
「残念だけど、このクルマに貴女の席は無いわ――どうしてもというなら、女性街へいらっしゃい。その時は全て話すわ」
「――!」
「見つけられたらだけど――ごきげんよう」