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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯5 おとめの――
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闇に呑む

 てっきりアキコさんが魔女まじょであるとおもみ、彼女ならこの部屋から、この異空間いくうかんから脱出だっしゅつさせてくれると思っていた私は、それが出来ないと知り、夜音よね暗中あんちゅう模索もさくで出口をさがしていた。


 アキコさんにいたっては、『乙女おとめ画報がほう』の入っていたはこすわみ、動こうともしなかった。


 何も見えず手探てさぐりで出口を探していたが、この部屋は不思議ふしぎな事にかべというものが存在そんざいしなかった。


 歩いても歩いても何にもぶつからず、何処どこまでも続いていた。


 その広さはてがわからず、何処までも進めそうで、しかし行きぎてははぐれてしまうので、その先には行けなかった。


 一体何処まで続いているのか――その果てを目指し、歩く事も考えたが、アキコさんはその場から動かず、彼女をいては行けず、私と夜音もその場にとどまっていた。


「アキコさん、出口を探さないと――」


「探して見つかるなら苦労くろうしない」


「それは……」


 アキコさんは変わらず箱に座り、その近くに私も座り、夜音はすぐ横に寝ころんでいた。


 ――どのくらいったのか、何時間、将又はたまた数十分。数分。それすらも分からない。ただ、それ以来いらい私達は何も話さなかった。


 こうなってしまった以上、この空間から出るためにはやはり魔法まほう必要ひつようだろう。


 そうなったら私、もとい夜音のちから必要ひつようだった。


 私は魔法とべるものはほとんど使えず、使える唯一ゆいつの魔法は、私でなく夜音しか使えないのでだから。


 『チェスト』の魔法――私はこの魔法にたび(すく)われており、今回ももしかしてと期待きたいしていた。


 しかし、この魔法で何も変わらなかったらと思うと、それはそれで使えないものである。


 呪文じゅもんとなえて何もきなかったら絶望ぜつぼうである。


 しかし、それしかない――この状況じょうきょう打開だかいするためにはそれしかなく、私はそれにかける事にした。


 それには彼女の協力きょうりょくが必要で、私はける事にした――私が魔法を使えなくり、夜音が魔法を使えるように成った事を。


 このさいはらえれなく、それに機会きかいでもあった。


 かくしている事に限界げんかいかんじ、打ち明けてもともど方法ほうほうかんがえたり、魔法と上手うまいたいと思っていたからだ。


 それには夜音がやたらに魔法を使わない様にさせなくては――。


「――夜音。私、じつは魔法が使えないの」


「……知ってる」


「――それで、何故なぜか夜音が魔法を使える様に成っているの」


「……知ってる」


「――じゃあ、何か唱えてよ。呪文…」


 何故だろう、おどろきが無い。夜音がその事を知っていたというのに――。


 実際じっさいは驚いているはずなのに、まるで力が、感情かんじょういてこない。


 この空間に長く所為せいか、それとも出られないかもしれない絶望感の所為か、どうでもよくなってきた。


 ――夜音もそうなのか、反応はんのううすい彼女は、むくりと立ち上りおもむろに呪文を唱えた。


「『メンソーレ』――」


 ――と。


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