闇に呑む
てっきりアキコさんが魔女であると思い込み、彼女ならこの部屋から、この異空間から脱出させてくれると思っていた私は、それが出来ないと知り、夜音と暗中模索で出口を探していた。
アキコさんに至っては、『乙女画報』の入っていた箱に座り込み、動こうともしなかった。
何も見えず手探りで出口を探していたが、この部屋は不思議な事に壁というものが存在しなかった。
歩いても歩いても何にもぶつからず、何処までも続いていた。
その広さは果てが解らず、何処までも進めそうで、しかし行き過ぎては逸れてしまうので、その先には行けなかった。
一体何処まで続いているのか――その果てを目指し、歩く事も考えたが、アキコさんはその場から動かず、彼女を置いては行けず、私と夜音もその場に留まっていた。
「アキコさん、出口を探さないと――」
「探して見つかるなら苦労しない」
「それは……」
アキコさんは変わらず箱に座り、その近くに私も座り、夜音はすぐ横に寝ころんでいた。
――どの位経ったのか、何時間、将又数十分。数分。それすらも分からない。唯、それ以来私達は何も話さなかった。
こうなってしまった以上、この空間から出る為にはやはり魔法が必要だろう。
そうなったら私、基夜音の力が必要だった。
私は魔法と呼べるものは殆ど使えず、使える唯一の魔法は、私でなく夜音しか使えないのでだから。
『チェスト』の魔法――私はこの魔法に度々救われており、今回ももしかしてと期待していた。
しかし、この魔法で何も変わらなかったらと思うと、それはそれで使えないものである。
呪文を唱えて何も起きなかったら絶望である。
しかし、それしかない――この状況を打開する為にはそれしかなく、私はそれにかける事にした。
それには彼女の協力が必要で、私は打ち明ける事にした――私が魔法を使えなく成り、夜音が魔法を使える様に成った事を。
この際、背に腹は代えれなく、それに良い機会でもあった。
隠している事に限界を感じ、打ち明けて元に戻る方法を考えたり、魔法と上手く付き合いたいと思っていたからだ。
それには夜音がやたらに魔法を使わない様にさせなくては――。
「――夜音。私、実は魔法が使えないの」
「……知ってる」
「――それで、何故か夜音が魔法を使える様に成っているの」
「……知ってる」
「――じゃあ、何か唱えてよ。呪文…」
何故だろう、驚きが無い。夜音がその事を知っていたというのに――。
実際は驚いている筈なのに、まるで力が、感情が湧いてこない。
この空間に長く居た所為か、それとも出られないかもしれない絶望感の所為か、どうでもよくなってきた。
――夜音もそうなのか、反応の薄い彼女は、むくりと立ち上り徐に呪文を唱えた。
「『メンソーレ』――」
――と。