それ、それ、それ。
もし彼女が魔女であるなら、まさか夜音を――。
「――貴女が夜音を?」
「如何にも――嵐山夜音が何処にも居ないとなれば、必然的に『女性街』を疑う。隠し部屋の事を聞いていれば尚更な。案の定、連れて来てくれた」
「彼女は何処?」
「ここに――」
――彼女は徐に闇の中へ手を伸ばした。すると、抱き寄せる様に夜音を引き寄せた。
「夜音!?」
意識が無いのだろう、夜音は立ったまま彼女に抱きかかえられている――それが分かるのは、私が夜音もはっきりと見えているからだった。
不思議な事にこの空間では、人物や物は見えるらしい。
夜音は気を失っているのだろうし、これではまるで人質だ――この状況、似た様な事が以前にもあったな。
しかし良かった――私は夜音が見つかってホッとしていた。
「夜音をどうする気?」
「どうもしない。邪魔だしね――」
そう言うと彼女は、夜音を自身の目の前に突き出した。
突き飛ばされた意識の無い夜音は、私の目の前で崩れ落ちそうになり、それを私は咄嗟に抱きかかえた。
危ない――一体何を考えているのか。
「ところで、私は日記にあるものを置いて来た。ところがそれは日記を離れ、ある人物の元へ行った。しかし、それを持っていた人物は老いて、それを手放した事が分かった――何故ならそれは、永遠の若さなのだから」
!?――永遠の若さ?それって、歳を取らないって事?一見よさそうだけど、確かどこかで…。
「私はそれが無いと日記が読めないんだ――それを持っていた人物は、君たちの間では『ゲーテ』と呼ばれていた」
『ゲーテ』さん!?彼女は確か急に老いて、それは私に魔法を移したから――それがそうだと言うの?
「日記の在り処を知っているとすれば彼女。きっと私のそれも日記に戻っている筈――貴女は知らないか?『ゲーテ』の居場所を?または日記の在り処を?」
「それが貴女の目的?そうまでして――日記には一体何が?」
「――『OZ』への行き方」
『オズ』への行き方!?やっぱり、『オズ』は本当に――日記にはそれが!やっと見つけた!『オズ』への手掛かり。
それも行き方だなんて、彼女に協力すれば私も連れて行って貰える筈。
それしかない――。