表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯5 おとめの――
127/131

怖――

 暗黒あんこく――。


 部屋へやの中はそれともちがい、しかし、それしかおもかばなかった。


 階段かいだんくらさとはまた別の暗さ。


 あかりを部屋の中へ入れても、そのかりがまれえてしまう。


 まるで部屋一面(いちめん)、いや部屋一杯(いっぱい)墨汁ぼくじゅうくされているような、灯りが意味をなさない。


 ゴクッ――。


 つばを飲む音さえ吸い込まれそうだ。


 この部屋はまるで何処どこかか別の場所へつながっているのか?――それも現実げんじつや、実在じつざいする場所じゃない。


 地獄じごく奈落ならく。そんな所見た事は無いが、そんなたとえが良く似合にあう。まさか極楽ごくらく浄土じょうどじゃないだろう――。


「帰ろう――こんな所に夜音よねない。それに、この部屋へ入ってしまったら二度と出て来られない。そんな気がする」


「えぇ、同感どうかんだわ。かえしましょう」


 二人の言う事に私も同感であり、そう言ってもらえて心底しんそこホッとした。こんな部屋には入れない。


 入りたくない。入るわけが無い――。


 ドンッ――。


 その時、私の体に何か衝撃しょうげきが走った。


 それは背中せなかからかんじ、くと私は前へし出され、部屋の中へ入ってしまっていた。


 誰かに押され――。


 一瞬いっしゅんで光が消えてしまった――私は上へもどため、バイロンさんに灯りを手渡てわたしてしまっていたのだ。


 しかし、灯りが有ったとしてもここでは意味は無い。


 何故なぜなら、私はぐにかえり、部屋の外へ出ようととびらかったのだが、それが見つけられなかった。


 ほんの一歩いっぽうしろにった扉が見つけられない。


 暗闇くらやみ、暗黒のなか模索もさくし、必死ひっしに手をばしても何にもれない。


 扉が消えてしまった。それどころかかべも何も無い――。


 あせる私は方向ほうこう感覚かんかくうしない、自分がどちらから来たのかさえ分からなくなっていた。


 いや、もうそういう次元じげんではない。


 何も無いのだから。


「えっ!?――えっ!えっ!?」


 こんなに暗く黒いのに頭はしろになる。はんべそかきながら考えたが理解りかい出来できない。


 一体何が起きたの?何で扉が無いの?


 これじゃあ、まるでゲーテさんと同じ――五十年このまま。


「たっ!助けて…。助けて!助けてー!!」


 誰か助けて――万千まち夜音よねたまき。そこに居るのでしょう、バイロンさん、ハイネさん。


 誰でもいいから助けて!


「誰か!誰か!誰かー!!」


「――うるさいねぇ。少ししずかにしな」


 !?――誰か居る!?


「誰!?誰か居るの!?」


 何故なぜこんな所に――いやそんな事より、誰でもいい、私を助けて!


「――何処どこ!?」


「ここだよ――」


 目がれて来たとはいえ、暗闇にもかかわらずこんなにもはっきりと見えるものだろうか?


 ――まるでその人物自身(じしん)が光をはなっているかの様な、暗闇をわすれさせるほどく見えた。


 その女性は今までずっとそこに居たのか、まさか何処からかあらわれたのか、はこの様なものに腰掛こしかけ、何か本の様なものを読んでいた――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ