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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯5 おとめの――
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浮遊走

 ――それから私達は、あかりを用意よういし、ゆかいた地下へと続く階段をりる事にした。


 おあつらきなかくし部屋。話に聞いていたそれなら、この階段は隠し部屋へつながっている。


 そしてそこに夜音よねが――。


 しかし私には一抹いちまつ不安ふあんがあった。


 五十年、ゲーテさんはそこにめられという。


 そんな所に入っても良いものか。


 ただ、ゲーテさんの時とはちがい、今日私は一人ではない。かりに私に何かあったとしても誰かが助けてくれるだろう。


 そうねがいたい。


 床に開いた地下へと続く階段は、灯りを用意したにもかかわらずまるで先が見えないやみであった。


 それは恐怖きょうふでしかなく、誰も降りようとはしなかった。


「何をしているの?おとめ、早く行きなさい――」


たまきこそ、お先にどうぞ」


て、何があるか解らない。誰か一人(のこ)そう――」


 言われてみればその通りであった。しかし、その一人のかたがおかしかった――私が行く事が前提ぜんていであったのだ。


 そりゃあ、私だってここまで来たのなら行きたいが、どうしてもってほどではなく、夜音が居るなら私だろうと、はなから決めつけなくとも――。


 結局けっきょく、環が一人残る事となり、何故なぜか私が先頭せんとうで降りる事にった。


「――いっ、行きます!」


 灯りをつ私を先頭に降りた階段は、灯りがその一つしか無いとはいえ、自分の足元あしもとがかろうじて見えるくらいくらく、その先が見えるはずもなかった。


 こわい――暗闇くらやみが怖い。幼稚ようちな感想だが、そうとしか言えない。暗闇が、闇が怖い。


 ふるえる私に、唯一ゆいつすくいだったのは、ハイネさんの手が私の両肩りょうかたっている事だった。


 ゲーテさんはこんな所を一人で降りるなんて――。


 私は一歩ずつ、そこに次のだんがある事をたしかめながら、おそる恐る足を出した。


 はずさぬようゆっくりと――。


 次の瞬間しゅんかんくずちないか、闇の中から突然とつぜん何かがあらわれない事を願いながら。


 ――次第しだいに闇や階段にれてると、今私は階段を真下ましたに降りているのか、それともがったりまわったり、まさかのぼってはいないだろうが、それすら分からなくなっていた。


 自分がどれだけ歩いたのか、降りてからどのくらいったのか。それも分からない。


 ――とてもつかれた。まるでなん時間も歩いた様な、それどころか実際じっさいには五分と経っていないのかもしれない。


 ――っと。気がおかしくなりそうに成った矢先やさき、そのとびら突如とつじょ現れた。


 目の前に現れるまでその存在そんざいに気付けない程突然(とつぜん)で、おどろくというそれではなかった。


 てつの扉――。


 見るがぎおもそうであり、見る限りひらきそうもなかった。


「――開きそうか?」


 扉の前、呆然ぼうぜんとしていた私はわれかえり、それが扉である事を思い出した。


 そして私は扉を押した――。


 ――扉は見た目とは裏腹うらはらに驚く程(かる)く開いた。



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