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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯5 おとめの――
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頑張る姿

 白石しろいし出来でき階段かいだんは、その表面ひょうめんがツルツルにみがかれていた。


 しかし、私が手をいた場所一帯(いったい)みょうにざらつき、そこだけがちが素材そざい作りにっている事がわかった。


 そしてよく見ると、一段いちだん一段規則(きそく)ただしくならべられた石のさかいとは別に、不自然ふしぜんつなぎ目が長方形ちょうほうけいに、丁度ちょうどたたみ一畳分いちじょうぶんほど材質ざいしつの違う場所をかこように出来ていた。


 もしかすると、ここが――。


「――った、った!った!!」


 ――ここが地下への入り口だとしたら、隠し部屋へ通じているに違いない。


「階段か、それは盲点もうてんだった――で、どうやってける?」


「きっと何処どこかに開閉かいへいする装置そうちの様なものが――」


「いえ、きっと呪文じゅもんよ。八乙女やおとめさん、何かとなえてみて」


 呪文と言われても私が知っているものは一つしかなく、とてもそれではひらくとは思えず、えずその事については聞こえないふりをした。


 バイロンさんは入り口らしき場所をさぐり、たまきは装置の様なものが近くに無いかさがしていた。


 ただハイネさんは目をかがやかせ私を見つめて来た。


 それには目をそむける事しか出来ず、私自身そろそろえられなくなって来た時、それは動いた。


「おい!動くぞこれ!せる――」


 そう言うと、数段すうだんの長方形に材質が違った場所を、彼女は少し押して動かして見せた。


 しかし私は、とびらが動いたよろこびよりも、魔女まじょへの重圧じゅうあつから解放かいほうされたほううれしかった。


 ――バイロンさんは私達が集まるのを待ち、視線しせんを合わせ、言葉をわす事無くうなずき、それをんだ。


 ガ、ゴゴゴゴ――。


 階段の一部は少しずつ動いた。万千まちならともかく、彼女でも動かせるのだからそれほどおもくはないらしい。


 じょ々に開かれる扉に、いよいよ隠し部屋へ入れる期待きたい頂点ちょうてんたっした――が、バイロンさんが押していた階段の一部は、数十センチ程動いたところで止まってしまった。


 ガコッ!!


 その時、固唾かたずんで見守みまもっていた私達の後ろで、何かが動いた音がしたのだった。


 その音に気が付いたのは私だけで、私以外今はそれどころではない様子ようすだった。


 しかし、押し込んだ階段の一部はそれ以上動かなくなった様だった。

 

 それでも必死ひっしに押しているバイロンさんを、環とハイネさんは自らも体にちからが入り見つめていたが、私は後ろでった音が気になりかえった。


 するといつの間にか、さっきまでは無かったあな広間ひろま中央ちゅうおうゆかに開いていたのだ。


 ――もしかして、今押している方が開けるための装置だったのか?


 私はおそる恐る床に開いた穴をのぞき込んだ――あんじょう、地下へと続く階段がそこには在った。


今直ぐにでもあの必死に段を押して、それを体に力がはいぎてみている人達に教えてあげるべきだろうか。


 しかしその時の私は、その必死な姿に見入みいり、声をけそびれてしまっていたのだった。



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