感触
私も急いで一階へ降りると、だだっ広く階段位しかない広間を、彼女達は何かに取り憑かれた様に探していた。
知っていると言った私を差し置いて。
とは言え、私もその場所は知らない。地下へと続く隠し部屋など。
「ちょっとおとめ、全然見当たらないじゃない。隠し部屋は何処なの?」
「そりゃあ、隠し部屋だもの。そう簡単には見つからないわ」
「だから、その場所を――」
「――魔女の力を使わないと見つからないのか?」
「まぁ、魔法を見せてもらえるの?」
彼女達三人に詰め寄られ、私は入り口の場所を知らないとは言えぬ雰囲気であった。
「…さぁ、何処でしょう?――入り口さえ見つければ入れるのだけれど」
――落胆した彼女達は、余所余所しく私から離れて行き、二階へ帰ろうとまでしていた。
「待って!地下室は本当だから――」
それから私を含む四人は、何かしら部屋への手掛かりがないか、一階を隈なく探した。
しかし、やはりというか隠してあるものを見つけるのは難しく、見つける事は出来なかった。
流石にこれ程見つけられないと諦めの雰囲気が漂い、私も探せば見つかるだろう位の気持ちでいただけに、少々気まずかった。
このままでは私が嘘をついたみたいな――しかし私が言うのもあれだが、その根拠も聞かず私の言う事を良く信じたものだ。
端から隠し部屋位あるだろうと、そう思っていたとしてもまるで疑わない。それだけに申し訳ない。
――今更だが、ゲーテさんの話を思い出してみよう。彼女は一体何と言っていたか。
確か、『探しても見つけられない様な、まるで隠していたかの様な扉』と。まるで頓知である。
探しても見つけられないのなら、探さなければ良いのか。そして、隠していた様な――今は隠していないのか?
「――少し休もう。二階で一服しよう」
「えぇ、そうね。もうくたくただわ」
「行きましょう、おとめ――貴女の所為ではないわ」
私の所為と言わんばかりか――しかし、やはり環は変わった。
いつもなら『貴女の所為で時間を無駄にしたわ――』位言いそうで、歯に衣着せぬ物言いだが、取り敢えずは思ったであろう逆の事を口に出している。
いや、そもそもそんな事を考えていないのか――。
そんな事を考えながら、二階へ上がろうとした所為か、中腰姿勢を長く続けた所為で疲れたのか、足元がふらつき、私は階段の一段目を踏み外してしまった。
転んでしまいそうになった私は、その拍子で階段に手を着いた。
そして、その時にある違和感を覚えた。
私の触ったその場所は、周りの石で出来たそれとは異なり、何か別物の様な感触であったのだった。