その箱で――
「この事について『二代目』は知っていて?」
「いや、まだ。きっと二代目と夜音は一緒に居るだろうと――」
「それなら探す必要も無いわね――隠し部屋が在ればの話だけれど」
「ハイネ。貴女は何時――最後に二代目に会ったのは何時だ?」
「そういえば久しく会って無いわね――」
『う~ん…』
私と環は彼女達の話を聞いているだけであったが、別にその話に興味が無い訳ではない。
私に至ってはその事について考えるのに必死であった。
『あっ!――』
隠し部屋――。もしそんなものが在るとすると、それはそこしかなかった。
今の今まで忘れていたが思い出した。
ゲーテさんから聞かされていたその存在を。
あれは夜音がサーカス団に捕まり、女性街へ助けを求め、ゲーテさんに会い、サーカスへ向かう車内。
何故そこに居たのか、何をしていたのか解らず仕舞いだったが、彼女は好奇心からその地下へ降りた。
五十年。今となっては本当か嘘か、彼女はその部屋で五十年を過ごし、魔女に成りかけた。
隠し部屋の地下室。
そこには魔女について書かれた日記がり、ゲーテさんからはその内容を聞けず、今となってはその在り処も解らず――しかし朴さん曰く、ゲーテさんはその在り処を私なら分かると。
こんなにも都合よく物事が進むだろうか。
唯、夜音も日記も在るとすればそこにしかない。
その地下室に――。
「私解かるわ――隠し部屋の場所」
その瞬間、その場に居た私以外の全員が、私を驚いた顔で睨み付けた。
正確にはその場所は解らなかったが、その存在を知っているのだから知っているも同然だろう。
きっと直ぐ見つかる筈。
「おとめ!?本当なの?何故貴女が――」
「何故だ?魔女だからか?何処だ?」
「流石だわ、八乙女さん。やはり貴女は――」
その反応は当然というか、しかしそれにしても大袈裟ではないか――興奮したバイロンさんは私の胸倉を掴み、環まで私に詰め寄り、仕舞いにハイネさんは踊り出していた。
余りの出来事に私の方が驚いてしまった。
「ちっ、地下に隠し部屋が――この建物『六鳴館』の地下に」
「地下――地下室か!?それは盲点だった」
「隠し部屋なのでしょう?探しても見つからない訳ね――そんなの見つかりっこないわ」
「ラ~ララ~。さぁ、その地下室へ参りましょう」
――そして彼女達は我先に一階へ降りて行った。
私を部屋に一人残して。