もてなし
「遅かったですね――待ちくたびれましたよ」
「何でアンタが出迎えてくれるんだ?」
「ハイネさん――」
私達を出迎えてくれたのは、裁判での有罪判決を受け、幽閉されていたであろうハイネ氏であった。
その出迎えは私にとって複雑で、彼女は私を、『魔女』を『オズ』を利用しようとしており、その為なら女性解放戦線『新しい太陽』や『二代目雷鳥』まで利用しようとしていた人物である。
そんな人物が何故今も『女性街』に居るのか、居られるのか――分かり切っている。彼女の存在が必要で、彼女自身『オズ』の為だろう。
それは私にとっても重要で、彼女のそれがどんな理由であろうと、そこだけは協力したいし、してもらいたいのである。
しかし、彼女の目的は戦争への参加――それだけは阻止したい。
――待ちくたびれた所為であろうか、ハイネさんは機嫌が悪い様だった。
しかしその格好ときたらどこぞの貴族かと見紛うほど着飾り、幽閉とは程遠い暮らしを連想させた。
まさか今日も舞踏会ではないだろうな――。
「ばっちり着込んで社交界にでも行くのかい?」
「そんなところですわ――立ち話もなんですし、中へ」
女性街中枢『六鳴館』。入るのは初めてではないが、奥へ通されたのは初めてだった。
中には誰も居らず、その所為かやたら広く感じ、装飾や作り等、全貌をまじまじと見る事が出来た。
どこも作りが凝ってあり、歴史に詳しくない私でも歴史的建造物と思う位立派で、何故こんなものがこんな所にと、ますます不思議であった。
そして当然だが、初めて二階へ上がり客間へ通された。
中は豪華絢爛で、つい見入って仕舞い、自分がここへ何しに来たのかを忘れてしまう程だった。
「で、今日は一体どうかしまして?――」
フカフカな椅子に紅茶まで出され、その言葉は意外だった。
「――『女性街』の何処かに夜音が居るらしい」
「まさか、ここなら一番初めに、それも隈なく探したじゃない」
「その通りだが――街中探させたが居なかったらしい。それに、考えられるとすればここしか無い」
「貴女も探したでしょう?もう、探していない場所なんてないわ。有るとすれば隠し部屋位なものよ」
「『女性街』にはオレ、私達が知らない事が多い。或いはそんな場所が――」
隠し部屋。そんな都合よく――。