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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯5 おとめの――
121/131

相席

 ――蚊帳かやそとだった私とたまきは、野次馬やじうまの女学生達が帰り、クルマによううながされた。


 よこ三列さんれつ、私はおくに、環をはさみ『市川いちかわじゅん』が乗りんだ。


 中は意外いがいせまく、三人が乗るのは少し窮屈きゅうくつであった。


 走り出すクルマの車内しゃない、『市川純』はやっと解放かいほうされたのか、色眼鏡いろめがねはずして大きくためいきき、おもむろにそれを外した――。


 私はおどろき、しかしその瞬間しゅんかん彼女は『バイロン』へともどったのだった。


「――これは偽物にせものさ。かみも、『市川純』も」


 彼女はかぶっていたそれを、黒くつやめく髪をいだのだった――みじくぼさぼさの髪。化粧けしょうも落とし、彼女の印象いんしょうそのものに戻った。


貴女あなたは一体――今は『バイロン』さんなのね?」


「オレ――私について環から聞いてなかった?」


「私も昨日知ったばかりよ――」


何故なぜ女優じょゆうを?女性じょせい解放かいほう戦線せんせんため?」


「『市川純』と、そう呼ばれているだけの事。『バイロン』も――それより、夜音よねが『女性じょせいがい』にるって?」


「おとめが言うには、ぱくさんがそう言っていたと――」


 はぐらかされたか、それとも私になど教えてはくれないか――彼女の秘密ひみつ。それは私には関係かんけいの無い事で、私自身ほんの些細ささい好奇心こうきしんでしかなかった。


 ゆえにそれ以上は聞かなかった。


 今から女性街へ行けるのだから。夜音がそこに居るのだから――。


 しかしバイロンさんの話を聞くに、女性街(など)一番初めに探し、そこには居ないと言っていた。それは無いと。


 ただ環が、私がそう言うならと――。


 私をれて行けば何かやくに立つと思い、連れて行かなくてはならないと考えたらしい。


 環も同じ様な事を言っており、『おとめ』を連れて行けば夜音は出て来るのではないかと――。


 二人とも私を利用しようしているが、おかげで今日は女性街へ歓迎かんげいされて行ける訳である。初めてに。


「そう、今日は貴女を連れて行かなくてはいけないの――絶対にね」


 そう言った彼女の先には女性街が見え、その彼女は『バイロン』でも『市川純』でもないのかもしれない。


 ――女性街へ着き、そのもんの前に停まると、運転手の男性は何をする訳でも無く門を開けていた。


 どうやらかぎなどかってはいなかったらしい。たとえそうだとしても、私は無断むだんでは入れなかっただろう。


 しかし、鍵(くらい)掛ければいいのに――。


 クルマは女性街へ入り、そのまま進み『六鳴館ろくめいかん』の前までけてくれた――そして、そこにはある人物が私達をちわびて居た。


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