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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯5 おとめの――
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ハイカラさん

「!?――るってどういうこと!?」


 次の日――女学校では万千まちうわさ持切もちきりだった。


 その内容ないようたまきから聞かされていた事とはことなり、尾鰭おひれが付けられていた。


 万千が民衆みんしゅう先導せんどうし、軍需ぐんじゅ工場こうじょう襲撃しゅうげきとらわれの女学生を救出きゅうしゅつ、や。められたこめかえし、物価ぶっか掌握しょうあくしたとか――その騒動そうどう功績こうせきから神輿みこしかつがれ、万千をたたえるまつりをおこななど


 一体誰が信じるのか、うそ八百はっぴゃくである。


 環の言う事実じじつ大概たいがいであるが、結論けつろんから言うと間違まちがいだった。


 いさましくった万千であったが、自由じゆう文化ぶんか学園がくえんもとい、軍需工場に米など無く、買い占めとは無関係むかんけいの工場へみ、さわて、間違いに気付きづげて来た。


 環の話を要約ようやくするとこんなところである。傍迷惑はためいわくな話である。


 一歩間違えればいくら万千でもただではまなかっただろう。


 そんな真実しんじつを知らずか、女学生達はいろめきち、少しは反省はんせいしたか、今日は大人おとなしくしていた万千を取りかこんでいた。


 ――環にいたっては、その存在そんざいすら見つける事が出来なかった。


 今日も来て居ないのか。


 環とは『女性街じょせいがい』へ行く約束やくそくをしていたが、私は何か『女性街』へ行く気にはなれず、それはそれで好都合こうつごうではあった。


 しかし放課後ほうかご、昨日と同様どうよう環は姿すがたあらわした。またもセーラー服姿で。


 授業をサボタージュするなど、新学期しんがっきそう々いい度胸どきょうである。


「『女性街』へ行くわよ、おとめ――」


「あんまりサボタージュすると留年りゅうねんするわよ、環――それに、私達だけでは入れない…」


「――問題ないわ。今日はあしきだもの」


 そう言ってこうを向いた環の視線しせんの先には、何処どこかで見たようなクルマが校門こうもんから昇降口しょうこうぐちへ向かって来た。


 そして私達の前でそのクルマはまった。


 まさか私達をむかえに来たのか、ただそう思っていたのだが、一人の人物がクルマからりて来た。


 私はその人物に見覚みおぼえは無かった。それもそのはず、こんなハイカラな人間を私はみた事が無かったのだ。


 モダンな洋服ようふくに、ハイカラな色眼鏡いろめがねけ、黒く長いそのかみつやびていた。


『誰?――』


 『女性街』といえば、『女性じょせい解放かいほう戦線せんせん』。


 ということは、この人物も女性解放戦線の一員なのだろうか?


 しかしそうだとしても、今の私達をわざ々迎えに来るほどのそれは無いだろう。


 夜音よねも見つけていないのだから。では一体――。


 昇降口には私達のほかに女学生達が多くたが、そのクルマから降りて来た人物を見るやいなや、彼女達はさわぎ出し、仕舞しまいには私達、基クルマを、なぞの彼女をかこんだ。


「――市川いちかわじゅんよ!」


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