探している
「朴さん――私は夜音を探しに学園まで来たの。何処か夜音が居る所に心当たりは無い?」
「――八乙女さんは、何故夜音を探しているの?」
「何故って――」
環が、女性解放戦線が探していたから。見つけないと『女性街』へ入れないから――それに、夜音が居ないと魔法が使えない。
いや、そもそも私は魔法が使えない。それは夜音が居ても変わらない。なら何故夜音を探すのか。
『女性街』へ行き『オズ』への手掛かりを探す為――しかし、その事に夜音は関係の無い事。
私一人では『女性街』へは入れないから――違う。私は唯一人で行く事が怖く、夜音を…。
「はぁ~。そんなに考える事では無いわ――夜音なら多分『女性街』に居る」
「えっ!でも、女性解放戦線が探しているって――」
「――なら、幹部達も知らされていない様ね。きっと二代目と一緒に居る」
「何故分かるの?」
「彼女の居そうな場所を全て探し、この街の探していない場所はそこだけだからよ」
朴さんは今でも夜音を監視しているのか?でなくては、それは――。
しかし、私以上に夜音を心配しているのだろう。
「――『女性街』は探さないの?」
「私は、もうあの場所へは行かないわ。『新しい太陽』とも縁を切る――私が女性解放運動に参加したのは、雷鳥先生を慕っての事だったのだから。それに、今は側に居てあげたい」
こんな事になり、きっと憔悴しきっているに違いない。
それで朴さんは離れられなくて――夜音は一体何を考えているのか。お婆様に心配ばかりかけて。
それに、雷鳥先生を慕っているのは朴さんだけではない筈だ。
きっと学園の生徒達も心配しているだろう――元々は彼女を慕い、女性解放戦線の人達は集まったに違いないのだから、何時かは朴さんの様に戻って来るだろう。
それ程の人物になのだから。
私も一度直に会ってみたいものだ。雷鳥と呼ばれる人物に――。
「そういえば、思い出したわ。また会えるなんて思ってもみなかったから忘れていた――彼女、ゲーテさんだった人から言伝を預かっていたわ」
だった?――。
「言伝はこう――『私の走馬灯を見たのでしょう。もし覚えているのなら、前に話した日記を探しなさい。貴女ならその在り処が解る筈。誰よりも先に見付けなさい。きっと役に立つ』と、言っていたわ」
「日記――」
魔女について書かれていた日記――確かにその話は聞いたが、私の見た走馬灯では日記なんて出て来なかった。
それに在り処が解るならとっくに見つけているのだが。
彼女の話では確か、六鳴館の地下、隠し部屋で見つけたと。
そしてその部屋に閉じ込められ――まさか、そこに在るのか?
「日記って何の事?――まぁ、聞きはしないけど。懐かしいわね、私も隠していたわ。『乙女画報』を」
『乙女画報』――そういえば、そんなものも走馬灯で見た様な…。