やりかねない
「――あれ、八乙女さん?」
「朴さん!?――」
――洞窟から出て来たのは朴さんだった。
裁判以来で驚きはしたが、彼女も自由文化学園の生徒なのだから、その近くのこの場所に居てもおかしくはなかった。が、何故こんな所に?
いや、今はそれどころではない。何故自由文化学園が軍需工場等に成ってしまったのか、それを聞くことが先決である。
「見たのね?学園を――」
「――何故あんな事に?夜音や雷鳥先生は一体…」
「……」
彼女の沈黙は含みを持ち、何か言いづらそうにしていた。
その時間は不吉で、良からぬ想像を掻き立てた。
まさか、死――。
「――舞踏会のあった日を覚えている?あの日、夜音は学園の事で二代目に会いに行ったらしいの」
二代目とは、夜音のお母さんの事――あの日会いに行った事は知っていたが、学園の為で会いに行ったとは知らなかった。
しかし、今の学園は――女性解放戦線でもどうにもならなかったのだろうか?
「それから程無くして学園は軍に支配された。そして軍需工場に――しかし、それを望んだのは他ならぬ夜音だった」
「えっ!?――何故?」
何故夜音がそんな事を――夜音はお母さんと一体何を話したのか。それに、幾ら夜音がそれを望んだとしても、彼女にそんな力は無い。
ならば女性解放戦線が、二代目雷鳥が自由文化学園を軍需工場にしたというのか。
何の為に――。
「それからか、夜音が消息不明になったのは――」
「ちょっ、ちょっと待って!話が見えないわ――夜音とはついこの間に会ったし、夜音はそんな事を望む筈が無い!」
「――これは雷鳥先生に聞いた事。唯、私も彼女の真意は解らない。それに夜音が消えたのは、きっと貴女と別れた後の事」
「……雷鳥先生は無事なの?」
「えぇ。居場所も知っている」
夜音――貴女は一体今何処で何をしているの?
あの時私は貴女の為ならと、お母さんに会う為ならと…。それがこんな事の為だったなんて。
「これから学園はどうなるの?雷鳥先生は?『真・婦人協会』は?」
「――こうなってしまったらどうする事も出来ないわ。雷鳥先生も真・婦人協会も、もう力は無い。あったのなら、こうは成っていなかった」
「朴さん。夜音が――」
「えぇ、分かっている。彼女が何も無しにこんな事は望まない。貴女だって知っているのでしょう?」
「――えぇ」
しかし、あの性格なら或いは――。