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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯5 おとめの――
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そんな感じ

 一人ひとり裏門前うらもんまえのこされた私は、中に入る勇気ゆうきも無く、帰る事を考え正門せいもんかった。来た道ではなく反対側はんたいがわから一周いっしゅうするように。


 しかし、もし中に夜音よねつかまっているような事があったら。


 もと々この学園がくえんは『しん婦人ふじん協会きょうかい』の雷鳥らいちょう先生がつくったもの。


 雷鳥先生や、夜音、組織の人々が捕まっていたら――。


 私にはどうすることも出来ない。でも、もし、あるいは――そんな他力たりき本願ほんがん後悔こうかいいだくらいなら、今直いますぐにでももどり…。


 しかし、期待きたいしてしまう。そんな事がこっていたなら、万千まちなら。と――。


 ――私は命の危機ききにでもわないかぎり誰かにたよってばかりだな。


 『魔法まほう』が使えたら変われるだろうか――。


 それからとぼとぼ自由じゆう文化ぶんか学園がくえんもとい軍需ぐんじゅ工場こうじょう外周がいしゅうを回っていると、みち枝分えだわかれした所を見つけた。


 なんと言う事のないかれ道。どうせ、正門へ戻っても万千達を待つだけならと、私は正門とはぎゃくの分かれ道へ進んだ。


 道といってもそれは山へむかう砂利道じゃりみちの様で、先へ進んだところで何もないだろうと直ぐにかえそうと思った。


 ――しかしその道、その風景ふうけいへの既視感きしかんは私をさらさきへ進めた。


 見覚みおぼえが有るも何も、この場所へは来た事がある。それは勿論もちろん私ではなく、夜音であり、私だった。


 走馬灯そうまとうたしかにここへは来た事がある。しかし、断片的だんぺんてきにしか見ておらず、この先に何がるのかまでは解らない。


 が、その答えは直ぐに出た。


「ここは――」


 道のまり、山肌やまはだに作られたであろう洞窟どうくつ――そこは、夜音やぱくさん達が学徒がくと動員どういん兵器へいきつくらされていた場所、軍需工場であった場所だった。


 人の気配けはいは無く、どうやら今は使われていないらしい。それは女性じょせい解放かいほう戦線せんせん行動こうどうゆえ賜物たまものなのかもしれない。


 外からでも分るところげたあと裁判さいばんでの話は本当だったらしい。


 流石さすがに中へは入ろうとは思わなかった。ただ、ここへれた事は良かったのかもしれない。


 上手うまく言えないが、何か今まで見たり聞いたりした事の証明しょうめいになる。そんな気がした。


 ガサッ!――。物音ものおとは洞窟の中から聞こえ、中に誰かいる様だった。


 私はおどろき、咄嗟とっさかくれようとしたが、隠れられる様な場所は無く、どうすることも出来ずあわてふためいた。


 ガサッ、ガサッ、ガサッ!――どうやらそれは足音あしおとの様で、今にも洞窟から誰かが出て来そうだった。


『ゴクッ――』


 そして、その人物は出て来た――。


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