そんな感じ
一人裏門前に残された私は、中に入る勇気も無く、帰る事を考え正門へ向かった。来た道ではなく反対側から一周するように。
しかし、もし中に夜音が捕まっている様な事があったら。
元々この学園は『真・婦人協会』の雷鳥先生が創ったもの。
雷鳥先生や、夜音、組織の人々が捕まっていたら――。
私にはどうすることも出来ない。でも、もし、或いは――そんな他力本願、後悔を抱く位なら、今直ぐにでも戻り…。
しかし、期待してしまう。そんな事が起こっていたなら、万千なら。と――。
――私は命の危機にでも遭わない限り誰かに頼ってばかりだな。
『魔法』が使えたら変われるだろうか――。
それからとぼとぼ自由文化学園基、軍需工場の外周を回っていると、道が枝分かれした所を見つけた。
何と言う事のない分かれ道。どうせ、正門へ戻っても万千達を待つだけならと、私は正門とは逆の分かれ道へ進んだ。
道といってもそれは山へむかう砂利道の様で、先へ進んだところで何もないだろうと直ぐに引き返そうと思った。
――しかしその道、その風景への既視感は私を更に先へ進めた。
見覚えが有るも何も、この場所へは来た事がある。それは勿論私ではなく、夜音であり、私だった。
走馬灯。確かにここへは来た事がある。しかし、断片的にしか見ておらず、この先に何が在るのかまでは解らない。
が、その答えは直ぐに出た。
「ここは――」
道の行き止まり、山肌に作られたであろう洞窟――そこは、夜音や朴さん達が学徒動員で兵器を造らされていた場所、軍需工場であった場所だった。
人の気配は無く、どうやら今は使われていないらしい。それは女性解放戦線の行動故の賜物なのかもしれない。
外からでも分る所々焦げた跡。裁判での話は本当だったらしい。
流石に中へは入ろうとは思わなかった。唯、ここへ来れた事は良かったのかもしれない。
上手く言えないが、何か今まで見たり聞いたりした事の証明になる。そんな気がした。
ガサッ!――。物音は洞窟の中から聞こえ、中に誰かいる様だった。
私は驚き、咄嗟に隠れようとしたが、隠れられる様な場所は無く、どうすることも出来ず慌てふためいた。
ガサッ、ガサッ、ガサッ!――どうやらそれは足音の様で、今にも洞窟から誰かが出て来そうだった。
『ゴクッ――』
そして、その人物は出て来た――。