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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯5 おとめの――
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一気!

 ――近付ちかづくにつれ聞こえてきた怒号どごう。それは裏門うらもんあつまった人々のものだった。


「――――っ一気いっき!一気!一気!一気!!」


 狂気きょうき――その人物達はいかりにちており、私達は少しはなれた場所から様子ようすうかがった。


「一気!一気!一気!!」


 一気?――一気とは一体?私にはそのけ声の意味が解らなかった。


 しかし、一際ひときわ大きく、一人だけ何か別の事をさけんでおり、そのこえにはおぼえがあった。


 この集団しゅうだん先頭せんとう、きっと先導せんどうなのだろう――ひたい鉢巻はちまき襷掛たすきがけ。手には竹槍たけやりを持ち、神輿みこしせられかつがれている。


 その人物は、そんな人物は。


「――皆様みなさま準備じゅんびはよろしくて?このわたくしに付いて来て下さいまし!」


 万千まち!――。あの馬鹿ばか!今度は神輿に乗せられ担がれているとは…。


「――大郷司だいごうじさん!」


「行くわよ!――」


「おーー!!」


「そーれ!いっーーっき!!」


「一気!一気!一気!一気!一気!!」


こめかえせー!」「国民をえさせるきかー!」「米を食わせろ!」「やすくしろー!」


「これは、米暴動こめぼうどう――」


 米暴動――。通称つうしょう、『米騒動こめそうどう』。国や軍が『米』を買いめて、って何故なぜそんな事に万千が?


 しかも、彼女が先陣せんじんって、集団を引きれている。


 またたのまれ事をことわれなかったか、あるいはせられて――。


 しかし、何故軍需(ぐんじゅ)工場こうじょうなどで暴動をこしているのか。


 確かにこのあたり軍事ぐんじ施設しせつなど無いが、まさか、万千が――。


 たまきいたっては、万千を見つけたよろこびか、将又はたまた、彼女の勇姿ゆうしを見せつけられかたまっていた。


 呆然ぼうぜんくす私達をよそに、集団は掛け声を上げ、万千を担ぎ、そのまま学園がくえんもとい、軍需工場へ入って行った。


 あっという間の出来事に、ただ見ている事しか出来なかった。一体何だったのだ――。


「――いっーーきっ!一気!一気!一気!」


「!?――環!?どうしたの?」


「おとめ!一宿いっしゅく一飯いっぱんおんよ――私達も続くわよ!」


「えっーー!?待ってよ、今はそれどころじゃ――」


「大郷司さん、今度こんど国民こくみんために…。私もおむすびの恩があるわ――いまきます!」


「環!って――」


 環は私のめにも耳をさず、そのまま集団をいかけ、軍需工場へ入って行ってしまった。


 私を一人(のこ)して――。


 私は一体どうすればいいのか?ここが軍需工場にってしまったからには、夜音よねないだろうし、いや、まさかつかまって…。


 それにしても私一人ではどうする事も出来ない。


 ――私も環に付いて行けばよかった。


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