とっとと
「環さん――やはりそうね、私、分かる?」
「――確か、バイロンさん…」
女性解放戦線『新しい太陽』の一員。『バイロン』――私も組織の人物とは面識は有れど、ハイネさん以外とは殆ど関りが無く、よくは知らない人物だった。
今の状況からして、彼女の登場は私にとって迷惑でしかなく、とっとと消えて欲しいものだった。
『今忙しいの、邪魔をしないで。面倒くさい――』
「――と言ったところかしら?」
私は、思った事を口には出していなかった。
言いそうになった言葉を飲み込まず、そのまま顔に出したのだ。
そう捉えてもらって構わない。
いや、よく理解出来たと褒めたい位だった。
「『女性街』に何か御用?」
沈黙を続けた私だったが、この状況、彼女が女性街に居ることは自然だったが、それこそ私が居る事は不自然だった。
「そんなものを持って、一体何をしているのかと聞いている。応えろ、環――」
面倒だったわ――女性街に等興味も関係も無い事だと言うのに。
女性街で女性解放戦線に見つかるなんて。
「答えろ――」
そう言うと彼女は、私に向かって拳銃を向けて来たわ。勿論、その心当たりもある。
だから私は大人しく、持っていた小刀をその場に置いたわ。
「――私の目的は『八乙女ツクス』。貴女方とは無関係です」
「関係が無くとも、そんなものを持っている女学生を『はい、そうですか』と行かせる訳ないだろう。そんなもの如何する?」
「関係な――事と次第によっては…」
「――よっては?」
「殺します」
私の言うことを信じたのか信じてないのか、鵜吞みにはしないだろうが、驚きもしなかった。
唯じっと私の目を見つめ、それから何かを読み取ろうと――って、私が本気かどうか探っていたわ。視線を逸らさないかどうか。
唯のカッコ付けよ――まぁそれでも、彼女は私に向けていた拳銃を下ろしたわ。。
「それは困った――八乙女ツクスは、私達にも必要な存在だからな。殺されては困る」
「――『魔女』だから?」
「それもあるが、彼女にはやってもらいたい仕事がある。今の『新しい太陽』にとって、とても重要な――」
そう言って向こうを覗き見た彼女に釣られ、私も向こうを向くと、そこには未だに女性街の中を恨めしそうに覗き込むおとめが居た。