違和感
違和感の原因は、今日一日環を見つけられなかった事とは全くの無関係とはいえないだろう。
何故なら私は、彼女のそんな姿を見た事が無かったからだ。
入学当初から袴姿しか見た事の無かった環は、セーラー服を着ていた。
「セーラー服か、どうりで見つからない筈だ」
「違うわ。今来たの――おとめ、ここなら誰も来ないでしょう」
見慣れないセーラー服姿に、似合う似合わないはさておき、見つからなかった理由が判り納得した私は、違和感の正体を冷静になった事で気が付いた。
「環、落ち着いて。万千の事だけど、あれは誤解で――あれを見せられたら、どうする事も出来なかったのよ。それに私は無関係よ!何もしてないの!」
「あの日、破談を聞かされた日。私は貴女を殺しに行ったのよ――」
そう言うと、環は持っていたそれを鞘から抜き出し私に向けた。
その切っ先は鈍く光り、私を映した。
小刀――環は真剣を私に向けたのだ。
環の性格からして、その切れ味は保証されているだろう。
冗談じゃない。冗談ではない。
「!?――何でその時殺さなかったの?」
「私も人の子という事よ。それにいつでも――春休みの事よ、その時貴女は『女性街』に居た」
――――。
あの日、私は大郷司家からの連絡で破談を知った。
形はどうあれ、婚約が決まっていたのよ。地獄に落とされた気分だった。
私は急いで大郷司家へ向かったわ。
しかし、門前払いよ。相手にもされなかった。
途方に暮れた私は、その時、あの日の事を思い出した。
行儀見習いの日、彼女と貴女がクルマに乗って行ってしまったあの時の事を。
何故こんな事に、原因は何か。貴女が、八乙女ツクスがそれを知っているのではないか――。
えぇ、分かっていましたわ。貴女の所為だと。
それでも私は貴女を信じた。『親友』ですもの。他に原因が有ると、それを貴女が知っているのではないかと。
貴女を探し、貴女の家、学校、街を探したわ。
探すと見つからないものね。それでもやっと貴女を見つけた。貴女は『女性街』に居た。
貴女も『オズ』について調べる為だったのでしょうね。
でも誰も見当たらなかった。私には好都合だったわ。貴女と二人きりになれ、問いただす為には。
貴女は柵の前で侵入しようかしまいか悩み、立ち尽していた。
優柔不断で実に貴女らしいけど、私は居ても立っても居られなかったわ。
貴女を取っちめようと、隠れていた物陰から出かけた時、ある人物に呼び止められた。
貴女ではなく私が――。