祖母
「――女性解放戦線とはあれ以来会ってない。『女性街』にも行ったけど誰も居なかったし。私はもっと魔女や魔法について知りたいのに」
「信じる以前に理解出来ないですわね。貴女が魔女だという事より、ご自身で魔女であるなどと信じ込んでいることに――その事、ご家族はご存じでして?貴女が魔女というのなら、まさかご家族もそうだと?」
「母はそうらしいけど、私も詳しくは――」
「そう言えば貴女、お婆様とお姉様の三人で暮らして――でしたらお二人も?」
「祖母は父方だから違うし、『ネイサン』は――ネイサンといっても血が繋がっている訳じゃなくて。彼女、家に丁稚奉公に来ているの」
「そうでしたの。丁稚奉公に――でしたら貴女の事、魔女の事は、お婆様や丁稚奉公に来ているお姉様は知っていて?」
「知っているし、信じてくれている――お婆ちゃんには、その『力』の意味を教えてもらった」
お婆ちゃん――母の事は話したがらないけど、何かを隠している様にも思えない。
魔法の事、魔女の事もそう。知ってはいるものの、詳しくは知らないと言う。
それでも、私だけではなく、ネイサンも本当の子供の様に可愛がってくれる優しい人。
私が魔女という事より、魔法の所為で私に危険が及ぶ事を心配する様な人。
私は、そんなお婆ちゃんにこれ以上母の事や魔女の事は聞けなかった。
「ところで、丁稚奉公は一体どのような経緯で?それに、丁稚奉公とは一体何をなさるの?――まさか、貴女のお姉様が丁稚奉公で来ていたとは。丁稚奉公ねぇ」
「アンタ、丁稚奉公って言いたいだけでしょ?――」
などと万千と話していた所為で、始業式の時間が来てしまった。
私は環を探しそびれてしまった。
それでも、一目だけでもと始業式中も探したが見つからず、休み時間なども探したが見つからず、結局放課後になってしまっていた。
環は何処にも居なかった。
組が違うとこんなにも会えないものなのか?それとも休みだったのか?まさか環の身に何か――。
心配しながら帰路につく私は、時間が巻き戻り壊れずに済んだ自転車を押していると、跡形も無く焼けた建物、通称『紅館』だった所の前に来ていた。
この建物が無くなったおかげで、今日もあったであろう勤労動員が免除となっている。
何なら補習までやらされそうだったのだから、そう考えるとあの事件は決して無駄ではないだろう。
女性解放運動、もとい女性解放戦線等の仕業なんて誰も知らないが。
犯行声明や、噂位あってもいいのだが――。
「皆知っているのよ、口には出さないだけで。心では喜んで、応援までしている筈。その存在、言動を――」
「環!来ていたのね――探したのよ。全然見つけられなくて」
「口に出すだけの度胸もなく、保身は『誰かが――』と思っている――まぁ、どうでもいい事だけれども」