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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯5 おとめの――
106/131

新学期

 春休みが終わり、ちまたでは戦争の予兆よちょうか、ぐんなどがこめ価格かかく暴騰ぼうとう各地かくち暴動ぼうどうが起きていた。


 そんな時、私は学年が一つ上がった。


 組替くみがえがおこなわれたとは言え、少ない生徒せいとすうではあまりかわえはせず、あんじょうまた万千まちとは同じ組であった。


 しかし、たまきとははなれてしまった。


 私にとってそれは、こう不幸ふこうか、万千を『おじょう』と呼ぶものたちしかない教室になってしまった。


 私をのぞいて。


 私は環と組みが分れたことで、彼女と気まずい距離きょり一定いっていたもとうとしていた。


 春休みに起きた事を今の今までそのままにしており、どうしたら良いのか今尚いまなお答えは出ず、彼女と会う事を憂鬱ゆううつに感じていたからだ。


 万千が今ここに居るという事は、環とは破談はだんしたに違いないから。


「――貴女きじょ所為せいと思っているでしょう。彼女、あの時あの場所にはいらっしゃらなかったですし」


「えっ!?環と話してないの?それっきり?それじゃ、まるで私が――」


 まるで私が万千の家になぐみ、無理やり破談にんだみたいじゃない――きっと環の事だ、想像力そうぞうりょくはたらかせ、事細ことこまかく想像しいかりにふるえていたにちがいない。


「彼女、貴女をおやかたきように探していたらしいですわ。桑原くわばら桑原」


「いや!いてよ、誤解ごかい!――そもそも、アンタが乙女心おとめごころを分かってない所為でこうなったのよ。少しは乙女心を……。あぁ、貴女には無理だったわね。微塵みじんもなさそうだもの」


「――!なら、貴女から分けてもらおうかしら。たたけば出てくるでしょう?こんな風に!」


 その瞬間しゅんかん、私のかお目掛めがけ万千の右平手(ひらて)が飛んで来た――ホコリじゃないんだから。


 不意ふいにとはいえ、おかげで私のほおれ上がり、新学期(そう)々《そう》注目ちゅうもくまとにされてしまった。


 とは言え春休み中、環と会わなかったのは不幸中ふこうちゅうさいわいだったらしい。


 私は私でいそがしく、環と会う時間が無く、すっかり彼女の事を忘れてしまっていた。


 そんな私も悪いとは思うが、その所為で彼女から逆恨さかうらみされていたとは。


 一刻いっこくも早く環に会い、誤解を解かなくては。


「それより貴女は、まだ魔女まじょだの魔法まほうだのと、女性じょせい解放かいほうのご婦人ふじんがたとおあそびなさっているの?」


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