表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯4 今までも、これからもおとめ
105/131

血の色

 もっと話をきたかったが、聞いたところで今の私には何も出来ない。それを今日理解(りかい)した。


 私は、魔女まじょとしてあまりにも未熟みじゅくである。


 私だけでなく、夜音よね危険きけんな目にわせてしまった。


 もっと魔法まほうが使えたら。魔法が使えるようもどれたら――。


 そのためには、女性街じょせいがい六鳴館ろくめいかん地下室ちかしつ、そこにあった日記にっき、それを見付みつける事が出来れば。


 何かが分かるはず――。


「夜音、貴女きじょに一つ、呪文じゅもんを教えるわ――彼女が、本当に魔法まほう必要ひつようになった時、貴女が彼女を、魔女を必要とした時(とな)えると良い」


「どういう意味だ?今でも魔法は――」


「『メンソーレ』。呪文の意味はじきに分かる――それじゃ、彼女によろしくね」


「待って。あんた名前は?」


「――ここじゃ、『クラウン』でとおっている。合わせくれてかまわない。そう言えば彼女の名前を聞いて無かったな」


「やつは、八乙女やおとめツクス。まわりからは『おとめ』と呼ばれている。合わせくれて構わないだろ――」


「おとめ――」


 道化師どうけしの彼女は、夜音と少し言葉をかわし、天幕てんまくへ帰っていった。


 その内容ないようは私には分からなかったが、彼女が私の名前を呼んだ様に思えた。


 夜音は彼女の名前を教えてくれた。


 しかし、それは名前ではなく、彼女は何かかくしているようだった。


 それでも、サーカスはしばらくここへ滞在たいざいするらしく、ぐになくなる事はないらしい。


 また会うと何をされるか分からないが、彼女とはもう一度話をしたいと思った。


 彼女の隠しているそれを知るために――。


 ゲーテさんは、体の変化にともな憔悴しょうすいしきっていた――。


 彼女が私にしたこと、今はまだたしかな事は分からないし確かめようがないが、彼女には言いたい事や、聞きたいことが山ほど有った。


 しかし、年老としおいた彼女を前に、私は彼女をいただす事が出来なかった。


 ただ彼女は帰りぎわ、私と目も合わせようとはしなかったが、すれちがい際に一言ひとこと『ごめんなさい』と言い、クルマに一人()み彼女は帰って行った。


 私と夜音は、特にこれといった事も話さず、隠しておいた赤バイのもとかった――。


 それからは、夜音の運転うんてんする赤バイに乗り、家路いえじについた。


 彼女の運転にれたのか、速度そくどを出さないからか、その時は恐怖きょうふを感じなかった。


 夜音は私を家までおくとどけると、その場で何やらだまなか々帰ろうとはしなかった。


 何か言いたい事を言えずにいる様な――。


「…あたしは、魔女まじょりそびれたらしいな――もし、魔女に嫌気いやけがさしたら、わりにあたしが魔女に成ってやるよ」


「私は魔女をめたくとも、誰かに魔女をゆずる気は無いわ――何時いつかならず『オズ』を見つけかなえて見せるわ」


 夜音はそれ以上何も言わず帰って行った。


 その時の夜音が見せた表情ひょうじょうは、私の心配しんぱいをフッとわらばしていった。


 ――――。


「いいの?帰して――」


「シーリーン…。今はまだおよがせておこう。彼女()がどうなるのか見てみたい。それに、私のところにも『O、s』から赤紙あかがみとどいた――戦争がはじまる」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ