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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯4 今までも、これからもおとめ
104/131

仮死

「いいえ。これは私の問題。私が、魔女まじょの私がけりをつける事――だから、夜音よねを…」


「――あ~、分かった、分かったよ。彼女を助けよう。夜音ちゃんを」


「!?本当?ありがとう!――」


「いや、私はけにけただけ。夜音は貴女きじょたすけに戻り、魔女の血をけ入れることをしんじていた――彼女は賭けに負けた場合、自分が魔女の全てを引き受ける覚悟かくごで、サーカスへ入ると決めていた。自分よりおとめを助けて欲しいと」


 ――――。


 貴女が逃げ出した後の事よ。彼女は逃げ出そうともせず、貴女が戻ると信じていた――。


「あたしはこれからどうなるんだ?――あたしも見世物みせものになるのか?」


こまったわね、貴女一人がても。かといって見逃みのがすのもしゃくね。逃げた彼女もどうするか。彼女をうべきか――」


ねらいはあたしだろ――もしあいつが、ここへ戻って来たら、あいつを見逃してくれないか?あたしが一人居れば十分だろ」


「貴女が魔法を使うとしても、その状態じょうたいがいつまで続くか。使えなくなる可能性もある。貴女が正真しょうしん正銘しょうめい魔女になったらいいのだけど。それに、戻るかしら、彼女――まぁ、かりにそうだとして、ただでとはいかないわね。私達は本当の魔女にしか興味きょうみが無い。どうしてもと言うのなら、貴女が本当の魔女になりなさい」


「どういうことだ?――そんな事が可能なの?それで見逃してくれるなら」


「私も方法は分からない。しかし、彼女ならそれが出来る可能性がある――それには条件じょうけんもあるわ。第一に、彼女がここへ戻る事。第二に、彼女自身が魔女でいる事をめる決断けつだんくだす事。彼女にその気が無いと私達はどうすることも出来ない」


「あいつがみとめれば何か変わるのか?」


あるいは――それより、貴女は本当にいいの?魔女がどういうものかも知らないくせに」


かまわない。例えそれで、命を落とすことになっても。それがあたしの――」


「貴女は一体?――分かったわ…。もし、彼女が魔女で居続ける事をえらんだら、貴女も彼女も解放かいほうしてあげる」


「!?――何故なぜそこまで…」


ったからよ、貴女の覚悟かくご――ただ、魔女をけるまたとない機会きかい、そう簡単かんたんに行くかしら」


 ――――。


「彼女は自分を犠牲ぎせいにすることで、貴女を助けようとした――さらに貴女は、自身のさだめを受け入れている。約束やくそく通り解放してあげる」


 夜音がそんな事を。


 私のために命まで…。何故そこまで、私の為に何故そこまでしてくれるのだろう。彼女にとって私は――。


「夜音はじき目がめるだろう。彼女は無事だ。そこのくたばりぞこないもきずはもうふさがっている。心配しんぱいない――貴女と話が出来るのもあとわずかだ。『OZ』について話しておこう」


「『オズ』なんて国、無いのでしょう?夜音の反応はんのうからさっしがついたわ」


「知らないと言っただけだ。その存在そんざいを見つけられなかったと。貴女は『OZ』をさがしてどうする?」


「私は魔女を辞めたいの。『オズ』へ行けばそれが出来ると思って」


「唯の人間になる為なら方法は色々ある。げんに今がそう。しかし、人をのろわずに、魔女を辞める。それがどれだけ困難こんなんか――」


 そんな事は分かっている。今日それを見せつけられ、体験したばかりだ。


「うぅ…、ここは?あたしは一体――」


「夜音、気が付いたの?良かった」


 彼女の言う通り、夜音は目覚めた。特に変わった様子ようすも見られず、私はほっとした。


「話がぎたわね。彼女なら無事よ、賭けは貴女の勝ち。約束通り今回は見逃してあげる――私はあきらめないわ。どちらかが一人前の魔女になったらまた会いましょう」


 夜音が目を覚ました途端とたん、私は彼女の、魔女の言葉を理解りかい出来なくなった。


 もしかすると、夜音が仮死かし状態じょうたいでいたあいだだけ、私は魔女に戻れていたのかもしれない。


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