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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯4 今までも、これからもおとめ
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なみだ

 彼女は声に反応はんのうして動き、私はいきがある事にほっとした。


 しかし、魔女まじょの体とはいえ、彼女は魔法が使えない。


 魔法まほうかえされたそれをけ、何故なぜ彼女は無事ぶじだったのだろうか。


 見るかぎ怪我けがひとつつない。


 むしろ、肌艶はだつやく、わか々しい。


 まるで若返わかがったかのような――不老ふろう不死ふし


 これが魔女の血のちから


「…八乙女やおとめさん。私はこの時をっていたわ。貴女きじょような魔女があらわれるのを――今の貴女なら、魔法まほうを使えるようになった今なら跳ね返せるわ」


貴女あなた、何を言って?」


「貴女の走馬灯そうまとう、見せてもらうわね――」


「――!」


「さようなら――」


 その瞬間しゅんかん彼女の動きが、いや世界の動きが、時間が止まったかの様におそくなった。


 あの時の様に――これは、私に魔法がもどったからだろうか。


 動きの遅い世界の中、ゲーテさんが持っていたそれは、私にけられており、目の前にあった。


 今にもゆびにぎりこまれそうで、呆気あっけに取られていた私は、この近距離きんきょりではける事も出来ずにいた。


 かんがえる猶予ゆうよも無く、刹那せつな、私はそれをとなえざるえなかった。


 『チェスト』と――。


 ――暗転あんてん。それは、走馬灯そうまとうなどと呼べぬ代物しろものだった。


 暗黒あんこく


 彼女の話に聞いていた、暗黒の部屋にめられた五十年。


 それが彼女の走馬灯だった。


 暗黒の中、自分の体がやみただよっているかのよう感覚かんかく


 それは恐怖きょうふ孤独こどく絶望ぜつぼうだった。


 とても正常せいじょうではいられない。そんな所に彼女は五十年も…。


 私はそれをどのくらい見ていただろうか。数秒数分、何時間、何日、何年。


 もしかしたら、五十年分。


 たしかなことは分からなかったが、五十年ですら止まって感じた――。


 パーーンッ!


 ――破裂音はれつおん


 私はその音で目をました。


 目覚める前と変わらぬ光景こうけい。私の体は何の変化も無いようだった。


 ゲーテさんのはなったそれは、私には当たらなかったらしい。


「一体何が――」


「見な――どうやら、貴女はまた、魔法にかけられたな」


「え!?――」


 そこにたのは、今まで私の目の前に居たはずのゲーテさんではなかった。


 しかし、その人物を私はかかえており、彼女の手にはそれが握られていた。


 そこに居たのは、見た事の無い高齢こうれいの女性だった――そしてそのいた女性は、何故なぜなみだながしていた。


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