我を――
またも魔法だろう、何もない所から急に、私達の目の前に夜音が現れた。
今度は本物だろうが、意識を失っている夜音はその場に倒れていた。
「夜音!夜音――夜音?」
私は近寄り、夜音を抱きかかえ呼び掛けたが反応が無い。
まるで死んでいるかの様な。
「今度のは本物よ。もっとも、心臓は止まっているけど――」
その言葉に私は、我を失いそうになった。その時だった――。
パーーンッ!
と、破裂音が鳴り響き、それはゲーテさんが握っていたものからだった。
彼女はそれを、道化師の彼女に向け使った。
しかし、不思議なことに、その場に倒れたのはゲーテさんの方だった。
「――スト」
訳が分からない――夜音はピクリとも動かず、呼吸をしていない。
倒れたゲーテさんも動く気配が無い。
一体何が起こったの…。
「魔女に銃は役に立たないって――学習しないな」
「…夜音とゲーテさんに何をしたの?」
「弾を跳ねっ返しただけよ。そっちは、うるさいから、仮死状態に――貴女は気が付かなかっただろうけど、彼女はずっとここに居たのよ。変身もバレたし、少し眠ってもらったわ」
仮死状態。夜音はまだ生きているということ?
魔法によってそうなっているなら、それを解く方法がある筈。
ゲーテさんはどうなんだ、まだ生きているのか?魔女であって魔女でない彼女なら或いは――。
「…なら、どちらもまだ生きているのね?」
『!?こいつ、言葉を――』
「二人を治して。貴女ならそれが出来るのでしょう」
「そっちは魔女の体だろ。死なないよ――それにいいのか?せっかく元に戻ったのに。ついでに、このまま死んでくれた方が私も助かる。私達が欲しいのは、本物の魔女だからな」
「誰が貴女なんかと行くもんですか――夜音を元に戻して」
ん?ちょっと待って。なんで私、彼女と話をしているの?
私、魔女語を話しているの?――まさか、戻ったというの?魔法が。でも夜音はまだ生きている筈。どうして。
魔法が戻ったという事は、私は今魔法が使えるということ。
だとしたら、何とか夜音を元に戻すことさえ出来れば逃げられるかも。
問題はゲーテさんが動けるかどうか。
私は、夜音をそっと下ろし、ゲーテさんへ近寄り、彼女を抱え上げた。
「ゲーテさん大丈夫?生きてる?」