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インターミッション 本作の世界観4 ー 身分2 ー

本日はこのインターミッションに続き

第三部の口上と、第1回を続けてUPします。

 下層階級の話をする前フリですが、Grafは書記官の意味が起源で

方伯Landgraf

辺境伯Markgraf

ただの伯爵Graf

 があると申しました。伯爵をCountというのも郡Countyの代官の意味が起源ですね。宮中にとどまった書記官様が宮中伯Pfalzgrafで後に選帝侯の一角を成したりします。

 普通の伯爵より小規模な管区のものにブルクGraf、ガウGraf等があります。シルト序列の下の方になってくるとSachsenspiegelに職の対応の記述がありません。おそらく13世紀で既に入り乱れていたのでしょう。

 村長Bauermeisterの封建身分も判りません。キュリ嬢しりむすめことクリスの実家が肝煎りとねすとしたのは荘園領主Hoffherrの評定衆ですから参審自由人かその次くらいとの設定です。没落した準貴族くらいで、市内に自宅を持分所有している自由人。

 没落していなくても、貴族の家督を継げない次男坊以下は大変です。誰ぞに仕官しないと無役の自由人、あれです。


 貴族は幼い頃からお小姓とか従者として宮廷の礼儀作法を学び、さらに弓馬の道を学びます。あ、これは日本的表現ですね。彼らは貴族子弟Edelknabeと呼ばれますが、このKnabe-Knappe-Knechtは同じ言葉です。

 英語の騎士Knightは古くはクニッヒトと発音したようですが、ドイツ語圏のクネヒトと同じです。ブリテン島に渡ったサクソン人とエルベ川に残ったザクセン人が同じですから当然ですね。つまり、騎士の語源は小僧・若造で、騎士=馬に乗る戦士Ritter, Chevalier, Cavaliere, Equesの従者です。Knechという言葉は14〜15世紀ドイツの文献では荘園領主の下男とか役人の意味で使われています。小僧と呼ばれてこき使われる身分ですね。貴族子弟Edelknechtもこき使われていたかどうかは・・主人次第でしょう。未成年のうち従騎士→騎士と順調に昇格すれば結構ですが、落伍者がどうなったかは推して知るべし。Junkerも若造の意味ですが後世は貴族の仲間入りします。

 元々が従者の意味だった「侍」が支配階級になるのと同じですね。


 自由人に三段階あり、最上位が参審自由人。二番目がPfleghafteとBargildeで適切な日本語訳がありません。世襲地を持つ地主階級の自由人ですが、所有地を自由には処分できません。土地永代所有の代償として徭役か兵役か、何らかの義務を負っています。ここまでが血統条件や武芸の能力、そして御披露目コスト負担能力をクリアして就活すれば騎士になりうる人々です。

 三番目がLandsasse。これも適切な日本語訳がありません。世襲地を持たないので封建身分は持たないが、完全な自由人です。ベラスコさんが、土地欲しさに兵役を背負い込んだ馬鹿者と言って、二番目の自由人に昇格(?)させてもらったのを喜んでいる彼らを短慮と罵っています。


 非自由人は、土地に縛り付けられた私有民ですが、奴隷ではありません。独占的に使用できる耕地も自宅もある人々です。領主の近習として出世する者も少なくなく、時にGrafは彼らを抜擢して、参審自由人の不足した土地に封建します。自由人の最上位へ特進です。ミニスレリアーレンが更に都市部でミニスターに出世して行く姿を、抜き去られた階層の人々は苦々しく目で追います。

 舞台となる町の市長さんは傭兵上がりということで、領地を喪失した名ばかり騎士階級の人が武功で男爵に返り咲いた設定ですので、これとは別です。


 逆に転落するケースの典型は犯罪者。賠償金で肉体的な刑罰は免れても身分の喪失は避けられません。これが貴族だと償いに臣従を誓うという方法があって盾序列の一段下げで方が付くことがありますが、調停が効かなければ血讐で殺されるかフェーデで蹂躙されるか。決闘裁判で負ければ勝者の意のままです。歴史マニアのR.ワグナーが自分で台本も書いた楽劇『ローエングリン』で決闘裁判に敗れたテルラムント伯爵が命以外一切の地位・身分を奪われて追放の身となるのは正しい時代考証の例としてよく引け合いに出されます。もはや騎士でもありません。

 婚外子が身分喪失者レヒトロスであることは作中に再三出て来ています。遊芸人、決闘代行人などと同じ、中世社会から疎外された人々です。

 本作はあまりディストピア寄りにしたくないので、中世的規範からあまり逸脱しない程度に「都市が自由に」します。


 騎士でさえ三代で地位が固まります。裏を返せば、三代過ぎたら誤魔化せます。農村のように土地に縛り付けられていないならば。


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