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本編解題

【解題】(一部、注に反映)

■1話

 提轄:北宋代の官名を借用。「提轄管烟火盗賊公事」

 拱手叩頭:人間の体型では拱手しながら低首・少跪は出来ても、恐らく叩頭は難

    しい。1話の舞台が龍族の邑であることを叙述上で隠しながらも暗示する

    よう配した。同時に、遺骸の安置がうつ伏せであるのは人として異様なこ

    との韜晦

 竜骨の様な拍板:アコーディオンふうな形の木製打楽器。びんざさら。

    平等院雲中供養菩薩に見られる。意図的に「竜」の文字を用いた。

 治道舞:伎楽の道案内役「治道」(天狗の祖型)より創作

 墓室を閉ざす平石:一般に横穴墓は大型の板石で墓室を塞ぐ。平石を用いるのは

    創作

 森は無害な小動物ばかり:竜から見れば大概の猛禽猛獣もそうである。

 襲衾:遺体を覆う寝具として折口説の真床覆衾より語彙を借用

    意図して「龍」の部首を用いた。

 エクイダ:ウマ科Equidaeに因む命名。7話で単なる「馬」Equusの方言と説明

    1話の舞台が人ならぬ者の棲む異郷を暗示するため、奇異な表現を使用

 子供の眼窩:殺傷に用いられた武器がハルバートなことを韜晦するため、刃渡の

    小さい凶器であると誤解を招く表現を用いた。

 歳星二巡前:歳星1巡=約十二年

    二十四年前の事を一同が昨日のように語り、人ならぬ長命の者たちとして

    描いているが、木星紀年の使用で韜晦した。

 飛び回り:有翼の龍であることを暗示


□本作の舞台を所謂マカロニ文化圏に設定した。異系統言語が交錯する。

 

 アルベリッチ:Alberich = Alb(Elf)のrich。語源的に出落ちなので

    フルネームは一度しか呼ばれない。

 探索者ギルド:Societas Artium Investigatorum

    実在の中世社会でZunftが賤業として排除した職種に同職組合が成立して

    いた仮想で創作した。職人ギルド同様、Trinkhausが中核施設となる。

    MeisterとGeselleの階級闘争を職種間の差別に置き換えた。

    ZunftがMeister階級の特権維持に閉鎖的となる以前の兄弟団に近い。

    本作登場の人物のほとんどは、ギルド全般をArteと発音する設定

 協会:coniuratio(誓約に基づくalliance:宣誓団体)訳語を「協会」とした。

    探索者ギルド関係者が自分たちの団体を呼ぶときの俗語として設定

    首長はConsulだが「ギルド長」と表記した。

    外部者が悪意で band of conspiratorsの意に使う例が後出

 トリンクハウス:小酒房(Trinkhaus)。実在の中世社会で同職ギルドの拠点

 お二方とも細かい説明文まで:識字が応募条件の一つであった。

 葡萄酒の瓶底のようなもの:”The Speyer wine bottle” ラインラントで発見

    4世紀前半のガラス製葡萄酒瓶を参照


■2話

 そういうの、苦手:剣が苦手なのか、男性に近づかれるのが苦手なのか両義描写

 ゴリトス:スキュタイ式胡簶。弓袋と矢筒が一体で、左腰から下げる。

 明らかに一瞥:魔法の道具に反応したことを暗に示す。

 マギステル:Magister 古典的な方技についてはMeisterでなく

    古語の呼称が通用している社会とした。

 魘魅呪詛の容疑で逮捕:された

 ブラッドバン法廷:blutbann=流血罰令権を国王から付与された者主宰の法廷

    話者は誤用している。

 対魔専門家のコンサルタント:祓魔師の類ではなく、Hexen-Kommissar的な

    悪徳法律顧問が世俗裁判所に蟠踞することを有害視した発言である。

 運命の車輪が回る:Sors immanis et inanis, Rota tu volubilis,

    caveat ruinam! nam sub axe legims Hecubum reginam.

 ヘクバも嘆きます:Troades (The Trojan Women) by Euripides 612

    HEC. I see that it is heaven's way to exalt what men accounted   

       naught, and ruin what they most esteemed.

 集団保護司制度:神判における雪冤宣誓について中世的でない別解釈を創作


■3話

 封臣:上位の封建身分者に臣従して封地(lehn)を賜った下位の封建身分者。先祖

    代々から相続した世襲地(eigen)と併せて領有する。

    世襲領地は処分も相続も自由。これに対し、封与された領地は忠誠の対価

    に預かった所領。勝手に売却が許されず、世襲の際は異議申立を受ける可

    能性も残る。

    封建身分に7等あり、1等が国王。6等の者までが授封で家臣を獲得

    つまり、借りた領地の分割又貸しで身分秩序が系列化される。

 伯爵:伝統的に周の五等爵を訳語に当てるが、語弊がある。本来は爵位でなく法

    務官職

    Grafの語義は宮廷の高等書記官に由来し、判官として地方派遣した者が

    土着領主化、或いは在地の自由領主mhd.Vry-Hërreから抜擢して委託し

    たものGraf職は国王より流血罰令権を付託され強権を握るが、原則的に

    Vry-Hërreとは同輩であるため。彼らを裁けない。

    なお、郡のGrafは同綴だが、村長達が互選で選ぶ単なる委員長である。

 参審自由人:(scheffenbar vryer) Vry-Hërreの家臣と同格の騎士出自身分

    自由人の中の最高身分であり、むしろ領主階級の方に近い性格

 騎士:両親及び祖父祖母4人の婚姻が適法、かつ騎士身分であれば騎士出自

    ex homine militari AV1-4  叙任されれば騎士

 傭兵団辞めた甲斐がない:現時点で自分らが傭兵とは認識していない。

 北叟笑む:塞翁が馬だけに



■4話 

 白いゆったりとしたチュニックの…:無用に気を回す性格の描写

 プフスブルの代官所管内では:自分がどこの警官かを韜晦している。

 掾史 :次官。文民

 ブラゲットを握って:性別を疑問に思っての行動だが、一見は性的誘惑に見え

    る。

 三十里:漢尺で1里=1800尺=300歩

    軍兵など壮健な男子が1歩(複歩)を1秒で歩くと、5分で1里。

    行軍に50分歩いて10分休憩するとして、30里は3時間(本作では一刻

    半)で到着する距離。還暦過ぎの老人が健脚であることを表現した。

    実在史料に強行軍の典型「典軍校尉夏侯淵三日五百、六日一千」あり

    一般人にとって百里は一泊二日の距離として妥当である。

 新月:本作は太陰太陽暦を使用するので新月は朔日(1日)となる。大潮と一致


■5話

 アサド:al Asad(ar.) =Leonis(Lt.)

 御堂騎士:本作では嶺北寺社領に本拠を置く修道騎士団の団員と設定した。

      歴史上のテンプル騎士団員ではない。

■6話

 羽根でも生えてんですかね:有翼の龍である。

 猫獣人:わりといるらしい。

 町方役人:市民の警吏・門衛・夜警、賎民とされる刑吏・放免の総称とした。

 放免:模範囚は刑期満了前に拘束を説き、満了まで最下級の市職員として使役

■7話

 応接の上客:二人とも酔っていて、直前に聞いた相手の発言に反応するので、話

    題がしりとりのように転々としてしまい、論旨が一貫しない状態

 葡萄酒の大きなデキャンタ:硝子瓶入りの古酒も出回って入るが、アンフォラ入

    りの新酒がまだ主流。食卓にはデキャンテして供する。

 庇護くりって:クリエンテスclientesをパトロンとして庇護する約束について

    俗語で動詞化して会話している。

 プフスの巡察判事補:州の代官が地元名士から数名任命する司法官

    協定により、Grafの裁判管区内外を跨ぐ案件のため出張開廷した。

 ドンゴロスの芋袋代:受刑者を簀巻にして川に流す処刑法を遠回しに言う。

    用具類は既に依頼者側が用意済みなことが3話で語られる。

■8話

 V字谷の出口を堤防様な城壁で塞ぎ:いわゆる包谷式山城

 狼跋:進退窮まる。『詩経』豳風を参照

 成熟期:Adolescentia 満12〜24(A.V.1-65) 21成年 レーン法26-1

 えへんぼると:evenbordich 同等出生身分。

    貴族が『田分け』で衰退するのを防止するため、嫁ぎ先の封建序列が低い

    場合には、妻が実家から相続した土地は子に継承されず、実家の所有に戻

    る。

    相続できている以上、父の身分は妻と同等かそれ以上。ラント法3-73-1

 下宿屋で兄弟四人暮らし:夫婦生活困難

 女性として見て:「女性である自分の目から見ても」の意だが

    読まれる方々には、うまく誤解していただけることを望む。


■9話

 寵妃:concubine, concubina

 最初の被害者にしても:女性の入籍が気になって判断を誤っている。

 『箱馬車』って言いましたっけ:かつてこの件を調査していたので知っていた。


■10話

 嬰児じゃなかったろ:2歳以下。マタイ福2:16–18

 金庫番くん:金庫長 Buchsenmeister

 

■11話

 尻大根の刑:Lucianos(Luciani Samosatensis) “The Passing of Peregrinus”

       大根radishではなく赤カブとする説もあり、さらなる研究を要す。

■12話

 君子梁上に有り:梁上君子は盗人を謂うが、ここでは窃視者を指す。

 聖月曜日:ホリデイ(日曜日)に飲み過ぎて翌日も勝手にホリデイにすること

 天辺越え:南部人の町なので、一年が冬至に始まり一日は真夜中に

    始まると考える文化風土があるという設定

    北部人は一年が立春、一日が夜明けで始まると考える。

 曹長が早く出世して:中世ケルンを参考に創作

 2階級上がれって:この国でも殉職者はそのくらい特進する。

 リッター=アラン:騎士だという認識

■13話

 イニシャルは『X』:X=10 , Decimus(十郎)


■14話

 淡い栗色の髪:胡人金髪説による。所謂『桜蘭の美女』を参照

■15話

 超小型の三叉鉾:早い話がフォークである。

 トリヴェロ派:ドルチーノ派が立て篭もった地名より固有名詞を借用

■17話

 コルレオーネ:Regulus ; Cor Leonis = The Heart of Liom

■18話

 手袋と血塗られた剣:フェーデ通告Absageの使者が持参するとされる象徴物

    (G.Freytag ,1920)

 叔母上は:言っちゃってる。


■19話

 さしたる用事も:「現れいでたる義経ぎけい公、さしたる用事もなかりせば

    そのまま奥にぞ入り給ふ」江戸時代の芝居で古典文法が誤用

 清信女:優婆夷。Conversa

 クロスカズン:cross cousin 交差イトコ。親が兄妹または姉弟の組み合わせ

    婚姻相手として推奨される社会もあるが、

    中世教会法では近親者として忌避された。婚姻には特免状が必要

 特免状:Dispens 

 初孫御生誕の謎:出落ちな伏線

■20話

 成人まも無いくらい:Auctor Vetus de Beneficiis 基準で二十四とみるか

    レーン法基準で二十一とみるかは趣味で。推奨は後者

 1と半デカッド:十五年

■21話

 合の天象:ここでは「木星ー太陽ー月ー地球」の直列

 異郷で異教徒に:天婦羅的な、何か。Commilitones de TEMPRO

■22話

 魔法の矢:ギルド受付でイーダの注意を引いていた、あれ。

 四人が圏外:彼は街道では二里四方を索敵しているので、おそらく城外か。

 ファッォレット:ハンケチ。単に気取って言った。今は反省している。

 乗馬を暴走させて:ボッキリである。

■23話

 娘を嫁に呉れる約束:南総里見八犬伝参照

 いまだと、まっすぐ:And now I'll do't. And so he goes to heaven;

    (Hamlet3-3)

 母親同士が姉妹って:parallel cousin 平行イトコ。親が兄弟または姉妹の組み

    合わせ

    若き日の院長(出家前)は婚姻に特免状を準備したことが確実だが

    本カップルが敢えて高額寄進で特免状を用意したか疑問

 風牙洞:Brigadoon的な何か

■24話

 振り返ったら塩の柱:創19


次回更新より第三部が開始します。


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