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17/17

【17】 加東萬曜の絵

そのとき爽香の頭に、

故郷福島で近所に住んでいたおばあちゃんの顔が

ふと浮かんだ。


爽香(家を出る時、近所のおばあちゃんが

風呂敷で包んだ物を、

手提げ袋に入れてこっそりと私に持たせてくれたわ)


おばあちゃん「何かあったらこれを売ってね。加藤……(略)……」と。


爽香が美浦市の共同住宅の部屋に着いて

その風呂敷をほどいたら一枚の絵が入っていた。


そのことを今思い出した。


爽香「丹沢さん、ちょっと待っててね」


そう言うと爽香は部屋の奥から

風呂敷で包まれた物を持ってきた。


爽香「これは、以前福島県に住んでいた時、

近所のおばあちゃんからいただいた物なの。

中身は一枚の絵で『加東萬曜』とかいう画家が描いたものらしいわ。

この絵を10万円で買ったことにして」


丹沢「……」


爽香「あたしの今の実力では、

ボートレースでいつ賞金がもらえるかわからないわ。

だから、あなたからお金を借りても返せる訳がないし。

この絵は、おばあちゃんが『何かあったらこれを売ってね』

と言ってあたしがもらったものだから」


丹沢「……」


爽香「いつか賞金がいっぱいもらえるようになったら、

この絵を買い戻すから。それまで持っていてくれない?

もし、あたしがボートレースの世界から姿を消したら

丹沢さんはその絵を売ってお金にして」


丹沢「よし、わかった。そうしよう、それがいい。

その方があなたもレースに打ち込めるだろうし」


爽香「うん、いつか必ずその絵を買い戻せるように頑張るから」


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【後書き】

本編をお読みいただき、誠にありがとうございました。

物語の舞台は、華やかなボートレースの裏側と、

それとは対照的な「市役所」という極めて現実的な日常です。


住民課の丹沢が、自身の進退をかけて行方不明の

住民・速水爽香を追う姿は、一見すると滑稽な

ドタバタ劇のようですが、その根底には

「信じることの尊さ」と「組織で生きる個人の葛藤」

を込めて執筆しました。


特に、後半で描かれる戸部先輩のファインプレーや、

同期の公家さんとの連携は、冷徹な課長の姿勢と

対比させることで、組織の中にある温かな「仲間の絆」を

強調しています。戸部がボートレースの「即日帰郷」

という特殊なルールを知っていた背景には、かつて

彼もまた夢を追った人間であったことを示唆させました。


一方、ヒロインの速水爽香は、孤独と罵声の中で

戦う若者の象徴です。


「水面のクズ」とまで言われながらも、たった

一人の「期待してる」という言葉に救われる。

その瞬間、彼女の心に再び火が灯る場面は、

私自身が最も描きたかったシーンです。


ラストで交わされた「絵画と10万円」の約束は、

単なる金銭の授受ではなく、二人の間に生まれた

「信頼の預かり物」です。果たして彼女は1着を獲り、

その絵を買い戻すことができるのか。その後の物語は、

読者の皆様の想像にお任せしたいと思います。


市役所の窓口で、あるいは水しぶきを上げるボートの上で、

今日を懸命に生きるすべての人へのエールとなれば幸いです。

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【作者より:ポイント応援のお願い】

最後までお読みいただきありがとうございます!

絶体絶命の退職危機を、仲間の助けと「即日帰郷」

という意外な知識で切り抜けた丹沢。


そして、孤独な戦いの中で涙を流した爽香……。


二人の間に「10万円と1枚の絵」という

新たな絆が生まれました。


「爽香に初勝利を挙げてほしい!」

「丹沢のクビが繋がってよかった!」と

思ってくださった方は、ぜひ下の

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、

ポイントで応援していただけると嬉しいです!


皆様の応援が、爽香の初勝利への大きな力になります。

よろしくお願いします!

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