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図書館に1,000年ほど引き篭もっていたエルフですが、外に出たら知らない文明が栄えていました。  作者: 奇蹟あい
第二章 神様の存在

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第4話 新世界にて~魔法の行使

 木に吊るされている子どもに走り寄る。


 良かった。息はある……みたい。

 わたしの(aqua)(fluctus)に当てられて、全身びしょ濡れだけど。


「ねぇ、キミ、大丈夫だった?……ちょっと、返事して⁉」


 腕に食い込んでいた縄をほどき、ゆっくりと地面に降ろしてやる。けれど子どもは、そのままつぶれるようにして地面に突っ伏してしまった。


「ねぇメミニ! どうしよう⁉ この子、ぐったりしていて意識がないみたい!」


【リアンナの無茶な水魔法で溺れたんじゃないのかな? まだ子どもなのにかわいそう】


 そんな……。

 火を消そうと必死だったから……。(aqua)(fluctus)を使うのなんて、1,000年以上振りだと思うし、威力調整も……。


【おいらが診てあげるよ。意識はなし。でも心臓は動いているね。息もしている。顔は青白い……というよりも白い。体は……なるほど、キミは男の子か。人の年齢はわかりづらいけれど、たぶん10歳くらいかな? ん~、おいらの見立てだと、これは『魔力酔い』の症状だと思うよ】


「魔力酔い?」


 聞いたことない言葉だわ。


【リアンナはエルフ族だから知らないよね。体内の魔力(オド)の絶対量が少ない種族に起こりがちなんだけど、一気に大量の魔力(マナ)を体に浴びると、その人が吸収できる魔力(マナ)の許容量を超えてしまうことがあるんだ】


「許容量を超えると……気絶するの?」


【そう。体内の魔力濃度が一定以上になると、体が拒絶反応を起こして意識を失ってしまうんだよ。この状態を『魔力酔い』と言う。反対に体内の魔力濃度が一定以下になった時にも『魔力酔い』で気絶することがあるからね】


「魔力酔いなのね! この子、重症なのかしら⁉ どうすれば良いの⁉」


【大丈夫大丈夫。診たところ症状も軽いし、しばらくすれば体内の魔力濃度も下がって、普通に目を覚ますと思うよ】


「良かったわ……。うっかり殺しちゃったかと思ったじゃない……」


 火魔法からは救えても、わたしの水魔法で殺しちゃったら何の意味もないところだった……。


 でも無事なら良かったわ。

 とりあえずこの木の根っこを枕代わりにして、寝かせておきましょう。


「じゃあ行きましょうか」


【リアンナ? この少年は、このまま放置していくの?】


 メミニがしゃがみこんで、子どもの頬っぺたを指でつついている。


「軽症ですぐ目覚めるなら大丈夫でしょう。助けを求めようにも、周りに誰もいないし……」


【周りにいた大人たちも、リアンナが水魔法で全部流しちゃったからね】


 そうよ、わたしのせい……。

 だからひさしぶり過ぎて出力調整をミスったの! 悪い⁉


【まあまあ。そのうち誰か大人が戻ってくるんじゃない? あの状況から少年が助かって、大人たちも喜ぶと思うよ】


「そうよね。……でも、彼らは何をしていたのかしら?」


 なぜこんな生木に対してあんなに強い火魔法が発動していたのかしらね。

 魔力(マナ)魔力(オド)も使わない種族なのでしょう?


「あら、この木……枯れかけているわ」


 さっきの強力な火魔法に当てられたせいね……。かわいそうに……。根に少し活力を与えれば持ち直せるかしら?


【リアンナ、ダメだよ】


「あら、どうして?」


 使い魔って厄介な面もあるのね。

 わたしがこれから何をしようとしているのかバレちゃっているみたい。


【もうこの土地に魔力(マナ)は残っていないからね。その木を再生させようとしたら、リアンナの体内にある魔力(オド)を使わないといけなくなる】


「それくらいわかっているわよ。土と水の合成魔法で、ほんの少しだけ回復のきっかけを与えるだけ。大した量の魔力(オド)は使わないわ」


 合成魔法なんてひさしぶりだから出力調整に気を遣わないと……。


【リアンナが魔力酔いをして倒れても、誰も助けてくれないんだからね?】


「その時はお願いね、わたしの使い魔さん♪」


 自走できる使い魔って便利! 頼りにしているわよー。

 ねぇ、無視? ちょっとー?


【……わかったよ。やるなら早くしよう。誰かが戻ってきて見られると面倒だし】


 なんで? 見られると何が面倒なの?

 メミニはずっとわたしが魔法を使うことに反対してくるけれど、なぜなのかしら。


【おいらの勘だけど、この新しい世界では、魔法は望まれない力だと思うんだ】


 どうしてそんなことを思うの?

 魔法は正しく扱えば、人が生きていく助けになるわよ。


【おいらやリアンナが生きていた時代にはそうだったかもしれないね。でも今は魔力(マナ)すら必要としない世界なんだよ……】


「わたしにはメミニの言っていることが、よくわからないわ。魔力(マナ)はわたしたちの命だし、大地そのものだし、必要としないなんてことがありえるわけないじゃない」


【おいらは1,000年の間、封印された状態でこの世界を観察し続けてきたんだ。もう、世界は魔力(マナ)を必要としてない。ここに生きる新しい種族たちは魔力(マナ)に頼らずに生きているんだよ】


 どうやって……。

 何をするにも魔力(マナ)は必要なはずなのに……。


【今のリアンナにはわからないかもね。でも、この世界を見て回れば、おいらの言っていることがわかるかもしれない】


「そう……。じゃあそうしましょう」


 どうせ歩き回るつもりだったし。

 姉さんたちが消滅するなんてこと、あるわけないもの。絶対どこかに隠れているだわ。探し出さないと。


【じゃあさっそく行く?】


「うん、そうするわ。でもその前に――再生(vivifica)


 この木に活力を。回復のきっかけを。


【あ、リアンナ! それっ!】


 何よ? 出力はちゃんと絞ったし、そんなに魔力(オド)は使っていないってば。


 と、メミニが目を見開いて見つめている方向を――あ、やばっ!


「子どもにも再生(vivifica)の効果が!」


 あ――。


 わたし、やっちゃった⁉

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