相談
「――それにしても、ほんと寒いよね。まあ、そのお陰で遠慮なく遥くんにくっつけるからいいんだけど」
「……それは、よかったです」
それから、数時間経た放課後のこと。
めっきりと冷え込む帰り道にて、朗らかな笑顔でお話しになる里中さん。お付き合い以降は毎日のように、ご自身の腕を僕の腕に絡めながら。……うん、未だに恥ずかしい。でも、今はそれよりも――
「……あの、里中さん。その、折り入ってご相談があるのですが、よろしいですか?」
「うん、もちろん。というか、そんなかしこまらなくていいのに」
「……ありがとうございます、里中さん。それでは……あの、お昼休みに関してなのですが……その、これからは、古里くんはお誘いしない方がいいかなと……」
「えっ、急にどうし……あっ、二人だけで食べたいってこと? ふふっ、そうだよね。だって、もう恋人同士だもんね、私達」
「……あっ、いえそういうわけでは――」
「……違うの?」
「……あっ、その……」
里中さんのご推測に、思わず否定をしてしまい後悔をする。……しまった、馬鹿か僕は。そういうことにしておけばよかった。それなら、そこで話が成立していたかもしれないのに。
……でも、もう遅い。里中さんの言う通り、本当は二人だけで食べたいから――なんて、今更言っても流石に白々しすぎる。なので、こんな相談をした本当の理由を話す必要があるのだろうけど……でも、何と言おう。自分で切り出しておいてどうかとも思うけど、それでも本当の理由を話すわけには――
「……まあ、言いたいことは分かるけどね。あんまり私達が仲良くしてたら、古里くんはちょっと辛いかもしれないし」
「……ご存知、だったのですか? 古里くんのお気持ちを」
「うん、知ってたよ。こんなこと言うと自惚れみたいに聞こえるかもしれないけど、でも流石に気づかないほうがおかしいでしょ。あんなに分かりやすく好意を出してくれてるのに」
「……そう、だったのですね……」
里中さんのお言葉に、驚き――そして、嬉しさを覚える僕。まあ、分かりやすいと言えばそうなのかもしれないけれど……そっか、気づいてくださってたんだ、里中さん。……でも、それならどうして、現在もまだ古里くんをお誘いに……いや、そこはいい。きっと、彼女なりの理由があるのだろう。だけど――
「……では、それでしたらこれからは――」
「……うーん、でもごめん。それは、今はちょっと無理かなあ」
「……何故、でしょうか?」
「ほら、考えてもみてよ。例えば、私達が古里くんに気を遣って仲の良さを見せつけないようにして、それで古里くんは救われるの? だって、私達が付き合ってる事実は――結果的に古里くんが振られちゃったという事実は、何も変わらないんだよ?」
「……それは」
「……うん、分かるよ。私達の仲の良さをまざまざと見せつけられるのは、現在の古里くんにとっては辛いことだと思う。……でも、だからこそ、古里くんのためにもそうすべきだとも思ってる。だって、私のことを忘れなきゃ、次の恋に進めないじゃん。それに、古里くんには舞歌と結ばれてほしいし。……あっ、舞歌のためってだけじゃないよ? 親友の私が保証するけど、舞香はすごくいい子だから。そして、古里くんもすごくいい子――だから、めでたく結ばれたら、きっと二人とも幸せになれると思う」
「……里中さん」
僕をじっと見つめつつ、自身の胸中をお話しになる里中さん。嘘があるとは思えない、柔らかで温かな声音と微笑で。……里中さんは、優しい。こんなにも、優しくて温かい。……なのに、
「……どうして、こんなことを……あっ、いえ!」
思わず、言葉がこぼれ出る。すると、僕の言葉から察したのだろう、ニコッと微笑む里中さん。そして、どこか不敵ささえも感じる笑顔で言葉を口にする。
「……うん、ごめんね。でも、私は遥くんのことが大好きだから――貴方を手に入れるためなら、手段を選ぶ気はないの」




