お昼休み
――それから、数時間が経過して。
「――お疲れ、みんな! ほんとカッコよかったよ!」
中庭の隅の方にて、ミネラルウォーターのペットボトルを掲げつつ称賛をくださる女子生徒。ボブカットの黒髪を纏うクラスメイトの女の子、里中弥湖さんで。……ところで、ペットボトルを掲げているのは乾杯、みたいな意味なのかな?
さて、今の状況だけれど……里中さんの隣に僕、僕の正面に古里くん、そして里中さんの正面かつ古里くんの隣に宮野さんが。そして、里中さんご持参の色とりどりの可愛らしいウーパールーパープリントされたシートに四人で腰掛けていまして。
さて、何とも異質な組み合わせのようにも思えるけれど……実はあのダブルデート(?)以降、教室などでこうしてこの四人でお話しすること、更には食堂で昼食を共にすることも時々あって。そして一週間ほど前に四人で食堂にいた時に、先約がないなら体育祭も四人で昼食を取らないか、というお話になりまして。……うん、正直とてもありがたい。
「……それにしても、本当に素敵でした、優李くん。グラウンドを凛々しく駆け抜けるそのお姿にすっかり見蕩れてしまい、瞬きすらもできませんでした」
「……そ、そっか。ありがと、宮野」
お水での乾杯からほどなく、お言葉の通りうっとりとしたお表情で称賛をなさる宮野さん。そして、そんな彼女に少し戸惑ったご様子でお答えになる古里くん。それから、ちらと里中さんの方へとご視線を……うん、気になるよね。同じ立場なら、僕も更科さんのご反応が気になっちゃうだろうし。
「うん、ほんとすごかったよね、古里くん。ねえ? 遥くん」
「はい、本当に素敵で、僕もすっかり見蕩れてしまいました」
「……うん、食い付きがすごいね、遥くん」
すると、古里くんの視線に気付いたためか、自身も古里くんをご称賛、そして僕に意見をお求めになる里中さん。だけど、僕の反応に少し戸惑ったご様子で……えっと、どうしたんだろ?
「ところで、気になっていたのですが、借り物競走のお題は何だったのですか? 藤谷くん」
「……へっ?」
ややあって、ふと宮野さんからご質問が。だけど、驚いたものの不思議な質問では全くなく。なにせ、更科さんと僕は校内ではほぼ関わっていない。そのような関係性で敢えて借りにくるとなれば、いったいどのようなお題だったのかという疑問が生じるのはきっと自然なことで。……さて、何とお答えすべきか。一年E組に所属する、苗字が『さ』から始まる山吹色の髪の女子生……うん、絶対ごまかせないよね。えっと、他になにか――
「……まあ、いいじゃない舞歌。気になるのは分かるけど、遥くんも言いにくそうだし無理に聞くことじゃないよ」
「うん、僕もそう思う。もちろん、宮野の気持ちも分かるけどね」
「……そう、ですね。申し訳ありません、藤谷くん。今の質問は忘れてください」
「あっ、いえお気になさらず! その、こちらこそ申し訳ありません、宮野さん」
すると、僕の気持ちをご存じなこともあってか助け舟を出してくださる里中さんと古里くん。更には宮野さんのお気持ちにも理解を示し、決して責めてるわけじゃないことも伝えてくれたため雰囲気が悪くなることも全くなくて……うん、ありがとうございます。




