第九十九話 イケメンどもの夕べ。
百話を目前に控え、読者の皆様に一つお詫びしておかなければならない事がある。
そう。九十四話「牢獄の中。」より、全く女っ気のない展開になってしまい、申し訳ありませんでした。
俺としても、早く女子の出てくる展開を望んでいる。作者め、何やってんだ。
そんな怒りが俺の心の中に吹き荒れる中、五日が経過した。
脱獄自体に充分な準備が必要だったからだけではない。脱獄後にどう行動するかを含めて情報を集めていたのだ。
もちろんサヤの事が気にかかって一刻も早く探しに行きたかったのだが、情報がなければ捜索など出来ないのも事実だ。また、タフガイからもたらされた情報によって、俺がもう少しここで様子を見ようと思った事も大きい。
その情報とは。
王妃が、国を挙げて赤の鎧操者を、つまりサヤを捜索しているというのだ。
緑の鎧操者と青の鎧操者が現れた現在、火の民を束ねるものとしては赤の鎧操者は押さえておきたいところだろう。
王妃がサヤを見つけたところで俺が奪還すれば、当初の予定とほぼ同じ結果になる。なんかあの王妃は危険な感じがするけど、シェリーやセレンは軟禁されているとは言え危険な目にはあわされていないらしいので、まずはじっくり、情報収集と準備の時間をとることにしたのだ。
タフガイが言った「今一番必要なものが何か、俺にはぜーんぶわかってる」の言葉通り、俺達には必要な情報の他にも様々な必需品が提供された。
まずあの日のうちに、大き目のベッドが三台、運び込まれた。俺の独房|(出入り自由)に一台と、四人組の雑居房|(これも出入り自由)に二台。連中は二人ずつ身を寄せ合って眠るわけだ。まぁベッド四台入る広さじゃないからしょうがないけど。
掃除好きらしい無口がトイレもきれいに保ってくれているので、かなり快適な牢獄生活となった。食事もタフガイがたっぷり用意してくれる。タフガイが相当に大食漢なので、食事係も不審に思わないらしい。
こんなに良くして貰っていいんだろうかと恐縮してしまうくらい、タフガイと四人組は俺のために力を貸してくれていた。しかも、心から喜んで俺を手伝ってくれているのがわかる。
なんだろな。サヤやシェリー達と一緒にいた時とは違う良さがあるなぁ。男子校ってこんな感じなんだろうか。
だがさすがに五日もたつと、俺も何か動かなきゃならないと感じ始めていた。
というのも。
王妃が国を挙げてサヤを捜索しているのに、五日も見つかっていないのはさすがにおかしいからだ。タフガイは一応王宮騎士団の所属なので、そのあたりの情報収拾にぬかりはないだろう。
という事は、国の力が及ばない場所に流れ着いているのか、それとも……。
俺はその先を考えたくなかった。誰もいないところ、例えば俺達が最初流れ着いたような無人の浮遊島にいるとしたら。もしもそこで食料の確保が出来なかったとしたら……。
俺は頭をぶんぶんと振って、その考えを払いのけた。
大丈夫だ。サヤは必ず生きている。そう信じるんだ。
俺は一つ気合を入れなおすと、脱獄決行の意思をみんなに伝えた。
タフガイも四人組も、俺がいよいよ脱獄するとなって、子供のように目を輝かせた。いよっ、待ってました! とでも言いそうな雰囲気。
だが、具体策の検討に入ったとたんに問題が生じた。
俺達の認識にズレがあったのだ。
まず俺がタフガイにこんな質問をした事で、その問題が発覚した。
「シェリーとセレンが幽閉されているところに近づく事はできるかな? 彼女達を連れて脱出するのは難しいだろうか」
この五日間、俺がずっと考えていた事だった。実際、俺達五人が単純に牢から逃げ出すだけでもかなりの苦労があるだろう。そこにシェリー達を救い出す事を加えれば、ミッションはそれだけ難しくなるし、さらに七人で脱獄というかなり大規模な脱出劇になる。
もちろん気持ちの上では彼女達を救い出して一緒に脱出したい。だが彼女たちが安全であるなら、一旦俺達だけで脱出し、鎧やスマホを回収してから救い出しに来る方が安全なのではないかと考えたのだ。
「いやぁ、それは無理だろう。人数が増えればそれだけ危険度は増す。今、連れのお二人は安全な状態にあるから、今は一旦置いて行くのが得策だと思う」
タフガイは冷静に言った。
「王妃陛下は何か思うところがあって、あのお二方を幽閉しておられるようだし、危害を加えるような事はないはずだ」
なるほどな。やっぱり後で、ガイオウと共に救いに来るのがベストなようだ。
と俺が納得しかけた時、片目が食って掛かるように口を開いた。四人組はみんな顔色が変わっていた。
「冗談じゃねえっすよ、旦那。アニキの大切なお連れさんをこんなところに置いて行けるわけないっしょ!」
残りの三人が激しくうなずく。みんな同じ気持ちのようだ。
「あの王妃は、いつ気が変わるかわかりゃしねえんだ。置いていくのは危険ですぜ、アニキ」
三白眼が俺の肩に手をかけて言った。
「そうだ。俺達はお連れさんを置いていくのには反対ですぜ、アニキ。アニキだって、ここを出て行った後、一人じゃ色々困るでしょう? 何しろ昔の記憶だってまだ戻ってねえんだし」
リーダー格が言った。残りの三人がうなずいた。
「俺達が囮になって暴れますぜ。アニキはその隙にお連れさんを救い出して逃げて下さいよ」
片目が言った。こいつら、まさか……。
「おいおい、あんたら何言ってんだ? 俺は……」
タフガイが呆れ顔で言いかけるのを遮って俺は宣言した。腹が決まったのだ。
「決めた。シェリーとセレンは後で救いに来る。今は一旦、俺達五人でここをおサラバする事に全力を尽くそう」
俺がそう言うとタフガイはうんうんとうなずいた。
「え? 俺達って……アニキ……?」
片目が驚いて、その右眼で俺をまじまじと見つめた。
「ここを出て行った後、俺が一人じゃ色々困るからな。お前達が一緒に来てくれれば安心だ。いろんなところに通じてそうだしな」
俺はリーダー格に目を移して言った。
「それにお前ら、俺達を逃がすために囮になって、最悪死ぬつもりでいただろ。俺がそんなの許すわけねえじゃん」
俺は片目のおでこに拳骨をこつんと当てた。
「ア、アニキ……」
涙目になる片目。ってゆうか四人とも涙目だ。
「あーそれから、詳しい事はさすがに言えないが、王妃陛下が気まぐれであのお連れさん達に危害を加える事はないと言っておく。どうやら、目的があるらしくてな」
タフガイが言った。まぁあの王妃の事だ。ろくでもない目的なんだろうなぁ。
「じゃ、これで決まりだな」
と俺は言った。実は俺はちょっと感動していた。誰も何も言わずに、四人組は俺とシェリー達を逃がす事を前提に、自分達を犠牲にしようと考えてくれていたし、タフガイは四人組を含めて俺達全員を逃がす事を前提に、何が一番安全な方法かを考えてくれていた。やばい、ちょっと泣きそうなんだけど。
「なぁ、旦那も一緒に逃げた方がいいんじゃねえすか?」
リーダー格が言った。確かに、立場が悪くなってまで騎士団に残る必要はないだろう。
「そういうわけにはいかんよ。いくら下っ端の平服組だからってな。騎士団員は騎士団員だ。抜けるつもりはない」
タフガイは言った。
「それに……。あんたらがお連れさん達を取り戻しに来た時に、こっち側から何かしてやれる事があるかも知れないからな」
そう言ってにやりと笑うタフガイ。やべー。超男前なんだけど!
続いて詳しい脱獄の計画が練られ、翌朝の脱獄決行が決まった。
そして同時に、記念すべき第百話を男だけで迎える事も確定したのだった。
次回予告。
サヤです。
次回はとうとう第百話です!
カイ様の脱獄作戦がいよいよスタート!
男達は一体どう戦い抜くのか!?
次回、Take It All! 第百話
「ジェイルブレイク。」お楽しみに!
ええと、あの……私、今どこにいるんでしょう……?




