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Take It All!~異世界転生でチート級の超絶イケボに!冴えない営業マンが勘違いで伝説の英雄を掛け持ち美少女ハーレム無双? だけどスマホの充電がきついっす~  作者: 硫化鉄
第二部 水の章

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第六十五話 密室? の二人。

 聖地グランデ・トルチュが沈んでゆく。


 俺は半ば放心状態でその現実を認識していた。セレンの奏でる音楽は続いている。彼女としてはこの状況にはなんの焦りもないのだろう。という事は危険な状況ではないと言うことなのか。


 ただ、彼女は水の民だ。人魚だ。島が沈んだところで特に問題はないというだけなのかも知れない。

 でも、俺はそういうわけにはいかないのだ。このまま島が沈んでしまえばいずれ溺れて死ぬ。


 だが、不思議なことに絶望感は沸いてこなかった。今や水上に残っているのは俺とセレンのいるタタミ二畳分位のスペースのみ。状況としては相当やばい。


「あ、あの……セレン。邪魔して申し訳ないんだけど……」


 さすがに心配になった俺がセレンに声をかけた時、数十m先の海面が盛り上がり、巨大な怪物の首が姿を現した。





「わああああああ! セレン! セレン! あれ!」


 俺はあわあわしながら怪物の首を指差すが、セレンは意に介さず演奏を続けている。

 怪物は俺達の方を振り向き、首を伸ばして来た。ろくろっ首かこいつは。


 いや、この顔は……亀だ! まさか……。


 島ががくんと揺れ、バランスを崩した俺に巨大な亀の顔が大口を開けて近づいてきた。


 そうか。この島、グランデ・トルチュはその名の通り大きな亀だったんだ。


 今更のようにそう思ったが時すでに遅く、俺達はなす術なく大亀に食われてしまった。






 暗いなぁ。


 それにしても暗い。


 グランデ・トルチュに食われた俺達は、暗くてじめっとして生暖かくてやわらかい場所にいた。


 多分ね、ここ、グランデ・トルチュの口の中だ。なんか飲み込まれたような感じしなかったし。この巨大ガメ、俺達を食ったわけじゃないのかもしれない。


 セレンが奏でる旋律はまだ続いていた。これ、もしかするとセレンの音楽でこのグランデ・トルチュを目覚めさせたって事か? この音楽を通じて意思疎通しているんじゃないのか?


 セレンがそこにいるのだとしても、こっちには意思疎通の方法がなかった。向こうはしゃべれないし、こう暗くちゃ筆談の文字も読めない。


「セレン、いるんだろ? 俺達、どうなっちゃったんだ?」


 俺の言葉をきっかけに、セレンは演奏を止めた。何とかして答えようとしているのかな。


「くそ、暗いな……」


 俺はさっきまで楽器の音がしていた方向に手を伸ばした。意外なほど近距離で、俺の手が程よい弾力の、柔らかくて幸せをもたらす感触にぶつかった。


「ひぅんっ……」


 とても澄んだ可愛い声が聞こえ、俺の戦闘民族を挑発していった。突然の刺激に思わず声を上げてしまったんだろう。とすると、あれ? セレン、声出せるのか?


 いやいやそんな事より、感触や反応を総合して分析してみる事の方が今は重要だ。俺の冷徹なコンピュータが結論をはじき出す。そうだ。やはりあの感触はおっp……。


 その時、グランデ・トルチュが大きく方向転換したのか、ぐらりと地面が傾いた。


「わわ……わっ!」


 仰向けにひっくり返る俺に何かが覆いかぶさってきた。顔にまた幸せのやわらかい感触が……く、苦しい。


「んぅ……っ」


 また可愛らしい声が聞こえたかと思うと、俺の顔から幸せの感触が去り、代わりに手のひらで顔面を激しく押さえつけられた。どうやら彼女が起き上がる時、俺の顔に手をついたらしい。


 俺は彼女が起き上がるのを待ってゆっくりと身を起こした。まぁあれだけいい思いをさせてもらったのだから、顔を手で押さえつけられたくらいで気を悪くしたらバチが当たる。

 それにしても真っ暗で何も見えなかったのがもったいないなぁ。


「ね、ねえセレン。ここ、真っ暗だけどさ、なんとかならないかな……?」


 いざとなればスマホのライトを使えばいいけど、また深海に行く事になるんだろうし、充電が心配だ。


 セレンがまた別の旋律を奏ではじめた。すると、周囲がだんだん明るくなってきた。マジか。


 彼女の音楽は光の魔法効果があるのか? もしやセレンこそ【閃光の魔術師】なんじゃ……?


 明るさが増してくるにつれて、光源がはっきりしてきた。歯だ。壁のようにずらりと並んだグランデ・トルチュの歯が輝いて、口の中の空間を照らしていた。うわー、なんかブキミ。


 明るくなった口の中を見回すと、これまたかなり広大な空間だった。野球場の一つくらい余裕で入りそうだ。口の中がこれだけ大きいんだから、身体全体の大きさたるや推して知るべしだ。


 近くに座っているセレンは演奏をやめ、真っ赤な顔に下唇を噛んで俺をジト目で見つめていた。


「あ、の……ごめん、暗くて全然わかんなかったんだけど、どっか当たっちゃったよね」


 我ながら白々しいけど「どこ触っちゃったのかはわかってないよ~」感を出しておかないと危険な気がする。

 彼女はこっくりとうなずいた。ジト目のままだ。むぅ。話題を変えねば。


「明るくなったけど、これ、セレンの魔法か何か?」


 セレンは首を横に振る。


「じゃあグランデ・トルチュがやってくれたってことか。セレンが頼んだの?」


 こっくりとうなずく。


「音楽でグランデ・トルチュを話してる……みたいな感じ?」


 こっくり。


「そっか。セレンはグランデ・トルチュと友達って事か。ええと……」


 次にどう質問しようか考えていたら、セレンが手を突き出した。ん? あ、メモ帳よこせってか?


 さっきまで使ってたメモ帳とペンはどっかいっちゃっていたんで、新しいメモ帳とペンを出してセレンに渡した。


 セレンはまたさらっと何かを書いて俺に返した。





『私はずっとグランデ・トルチュに一人で住んでいました。だから、彼が大きな亀だという事も知っていました。


 以前は楽器を演奏することで彼とお話も出来たんです。でも、その楽器は失われてしまいました。


 彼とお話しすることは出来なくなりましたが、私達はずっと友達でした。


 この青い楽器のおかげでまた私は彼と話すことが出来ました。


 今、彼はくじら神殿に向かってくれています。


 さっき起きた事も、この水の領域で起こっていることも、彼は全部知っているんです。


 捕らえられたあの子達を助けなさい、そう言っています』




 相変わらず書くの速えな。

 それにしても、グランデ・トルチュが生物で、状況を把握してたという事は、マスク野郎たちを吹っ飛ばした津波はグランデ・トルチュが起こしたものなのかも知れないぞ。

 彼にとっては前足(ヒレ?)のひとかきであれくらいの事は起こせるだろう。そりゃあ甲羅をあれだけ攻撃されたりしたら怒って当たり前だよな。


 ずっと島だと思っていたのは、手足頭を甲羅の中に引っ込めていたからというわけだ。海ガメなのに手足引っ込められるのはすごいな。


 あ、セレンのメモ、まだもう一行あった。




『あの、ほんとにもう、変なところに触るのはやめてください』




 うおおおおおおお。そうか。やっぱり『変なところ』とやらに触ってしまっていたのか!


 なんか「セクハラやめてください」はちょっと敵意を感じるけど、この言い方は……逆にそそられてしまうな。


 そんな、全国数十万の女性読者を敵に回しかねない不埒な事を思った時、俺達の目の前に外の様子が映し出された。スクリーン的なものがあるわけでもなく、立体ホログラフのような映像。これもグランデ・トルチュの魔法的な力かなんかかな。便利。


 多分グランデ・トルチュが見ている光景なのだろう。前方に大きなクジラの姿が見えた。あそこか。


 どんどん近づくにつれてくじら神殿の大きさがはっきりと認識できてきた。とてつもない大きさだ。


 そもそもとてつもない大きさのはずのグランデ・トルチュが、くじら神殿の大きさに比べたらまるでゾウとアリだ。


 さらに近づくと、視界は全てくじら神殿が大きく開けた口に占められた。やべえ、超怖え。



 俺のそんな思いなど無視して、グランデ・トルチュはためらいもせず、くじら神殿の口の中へ入っていった。

次回予告。


サヤです。


グランデ・トルチュは聖なる巨大な亀さんでした。

その口の中で少しずつ心を通じさせていくカイ様たち。

いよいよ到着したクジラ神殿で、カイ様たちを待ち受けていたものとは……?


次回、Take It All! 第六十六話

「神殿の中。」お楽しみに!



や……やきもちなんか焼いていません……!

焼いてないもん!

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