第二十七話 VSゴーレム。
すっげえパワーだ。自分の三倍もあるゴーレムをワンパンでふっ飛ばしてしまった。
俺は白き鎧を立ち上がらせ、改めて周囲を見回した。いやはや大惨事だ。
中庭への大扉周辺は大破し、壁やギャラリー通路はところどころぶっ壊れ、長老は必死でぶら下がっている。と言っても4mくらいの高さの通路に2m50cmの巨人が両手伸ばしてぶら下がっているわけで、実は足から地面までは50~60cmくらいしかない。
サヤとシェライアはうっとりとこの白き鎧を見上げていた。んー、この【白き鎧】って呼び方めんどくさいな。これだけのパワーを誇るのだから、鎧の王様、鎧王って呼ぶことにしよう。うん。
それにしても、ゴーレムが吹っ飛んで壊した壁は、やっぱりガイオウのせいって事になるんだろうなぁ。一応、謝っておいた方がいいかも知れない。
俺は長老を助けるべくガイオウの手を伸ばし、謝ろうとした。その時、背後で衝撃音が発生し、大聖堂が倒れそうなくらいの振動が襲ってきた。
ガイオウのコクピットの中は相変わらず平静そのものだったが、目の前の長老は通路にぶら下がったままブランブランと大きく揺れていた。まるでテンションマックスのやんちゃ坊主がブランコを一回転させようとしているくらいのレベルだ。
振り返ると、壁をガンガンと壊しながら六体のゴーレムが大聖堂に侵入して来ていた。ちなみにあのアホエルフ共は逃げ去ったのか、既に姿が見えなくなっている。
「ピクシーオーナー殿ぉぉおお! 大聖堂の事は気にせず、存分に戦ってくだされぇぇえええ! その勇姿を見せてくだされぇぇええ!!」
長老がぶらんぶらんと揺れながら力の限り叫んだ。そっか。ならお言葉に甘えるか!
ガイオウがゆっくり振り向いて身構えるのを見て、六体のゴーレムは一瞬動きを止めた。うーん、多勢に無勢。だがガイオウならいける! ……はず!
俺はガイオウを走らせ、敵陣のど真ん中に突進した。走る勢いを乗せた渾身の右ストレートを中央左のゴーレムの胴体に叩き込む。ゴーレムはそのまま大聖堂の外まで吹っ飛ばされ、中庭にいるゴーレム達に突っこんだ。
……え? 中庭にいるゴーレム達?
既に外で防戦していた魔操鎧部隊は敗走していた。中庭にはざっと見ただけでも十数体のゴーレムがいる。大聖堂の中の五体の他にまだまだおかわりが控えているというわけだ。いや、マジか。
中庭に気を取られている隙に両腕を掴まれた。二体のゴーレムがガイオウの両腕をそれぞれ掴んで引っ張り上げた。やばい。
振りほどこうともがいてみたがどうにもならなかった。強大なパワーも、地面を踏みしめて身体を支えることが出来ない状況と、力の入りづらいバンザイの態勢では著しくその力を減殺される。俺はなす術もなかった。完全に油断だ。
両腕を掴んでいるゴーレムが、ガイオウの腕をねじ切ろうと力をこめ始めた。同時に正面に回ってきたゴーレムが、ガイオウのボディに棍棒の一撃を叩き込んだ。
ガイオウのコクピットが衝撃をやわらげると言っても限度がある。さすがにこの一撃の衝撃は大きかった。ミュウが金切り声で悲鳴をあげた。椅子から振り落とされるほどではなかったが、一瞬何が起こったかわからなくなるほどの衝撃だ。てゆうか、ボディ狙われると、ボディの中にいる俺そのものへ棍棒が唸り飛んでくるように感じられてやたら怖い。
「どうすんの? ねえマスター、どうすんの?」
ミュウが俺の肩の上で騒いでいる。
「うるさいな、今考えてんだよ!」
ミュウに向かって怒鳴りつけると、「なによお!」というキレ声とともに思いっきり鼻っ柱を蹴り上げられた。くそ、こいつむかつく。
「カイ様! カイ様っ!」
サヤの声がSOSを訴えていた。無理な体勢のままなんとか振り向くと、俺の背後で二体のゴーレムがサヤ達に近づいていた。俺に三体かからせ、残りの二体でサヤたちを狙う魂胆だ。いや、ゴーレムにはサヤ達を狙う理由がない。なんだ。何が目的だ?
中庭にいたゴーレムもこちらへ向かって来た。これはやばい。
「とりゃああああ!!」
背後でサヤの声が響き、ガン、という重い音が聞こえた。
俺の右腕を掴んでいるゴーレムの脚を、サヤがカグツチ・カノンで殴っている。いや、だからそれは射撃武器だってば。
シェライアは近づいてくるゴーレム達をアイビー・ウィップで縛りつけようとしていたが、さすがにゴーレムのパワーで引きちぎられてしまう。
そうか、ゴーレム達の狙いがわかった。
この、鎧だ。
俺が操るこの【白き鎧】と、そしてもう一つ、この神殿には【緑の鎧】がある。ゴーレムを操っているのがどんなヤツなのかわからないが、この二つの鎧を狙っているのは間違いなさそうだ。だとするならば。
そうだ。ガイオウと並んで、片膝をついた像があったはずだ。あれが【緑の鎧】なんじゃないのか。
コクピットに衝撃が走った。棍棒でガイオウを殴っていたゴーレムが、最上段から思いっきりガイオウの頭に棍棒をたたきつけたのだ。
やべえ、頭潰された! そして俺の背後で、何か硬い物が転がる音。つぶれてもげた頭部が……。
……と思ったが、ガイオウの頭部はまったく無事だった。目の前のゴーレムが、ぽっきりと折れ砕けた棍棒を投げ捨てた。そうか。後ろで転がったのは折れ飛んだ棍棒の先端か。
ガイオウの頑丈さは想像以上だった。そういえば、腕をねじ切ろうとしているゴーレムも、まだ全くそれに成功していない。
とは言え完全に行動を封じられてしまっている事には違いなかった。二体のゴーレムに外からのゴーレムが合流して一斉に像やサヤたちに襲い掛かったら、どうしようもないぞ。
「マスター! サヤが!」
ミュウが俺の耳を引っ張って足元に顔を向けさせた。サヤがガイオウの後ろで倒れていた。砕けた棍棒の破片が当たったのか。
……なんて事しやがる。
俺の頭に血が上った。
「サヤ! 大丈夫か! くそ、放せ……!」
ギリギリと音を立ててガイオウの腕がきしみ始めた。ゴーレムのパワーにも平然と耐えるガイオウの腕が、俺が振りほどこうとするパワーに悲鳴を上げていた。だがそんなことはどうでもいい。腕がもげようが知るもんか。
「サヤ!」
像に接近しようとしているゴーレムをアイビー・ウィップで防いでいたシェライアが、ゴーレムを放り出してサヤに駆け寄った。サヤに回復の呪文をかけようとするシェライアの後ろで、二体のゴーレムが像に迫った。
次の瞬間、大聖堂の壁を突き破ってビームが走り、二体のゴーレムを吹き飛ばした。
「な、なんだ!?」
俺は自分の目を疑った。壁を通して正確にターゲットを撃ち抜く手腕は超一流のものだ。これはいったい誰の仕業なのか。
ビームが撃ち込まれた壁を壊し、一機の魔操鎧が姿を現した。装飾が施された美しい機体。これは一般兵のものではあるまい。
「あの機体は……やはり……!」
シェライアの声に安堵の響きが混じる。
「カイさん、サヤさん、シェライア、大丈夫?」
その美しい魔操鎧から響いてきたのは、ファミルエリシャの声だった。
次回予告。
シェライアだ。
ファミルエリシャの援軍をもってしても、多勢に無勢、
戦況は私達にとって不利だった。
その時、カイ殿がとんでもない事を私に……!
次回、Take It All! 第二十八話
「緑の戦士」お楽しみに!
私には……私には、無理だ……。




