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なきものねだり  作者: ほしがひかる
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    18


 墓参りの翌週。

僕は職員室で担任にある一枚の紙を渡していた。

「へえ、意外だな。向坂の進路がねえ、まさかサービス業なんて」

 渡した紙は進路調査票だった。本当は提出期限を過ぎていたけれど、やっと進路の方向が定まって提出することが出来た。

「意外、ですか」

「悪い意味じゃないぞ? てことは調理系の専門学校に行くのか」

「はい。資格を取りたいですし」僕は口角を上げて「料理、得意なんです」と告げる。

「そうなのか。ともあれ、向かう目標が見つかって良かったよ」

「はい」

 僕に愛を教えてくれた幽霊の少女が、もう一度ご飯を食べたかったと言っていた。

 なら少女の好きな食べ物を沢山作って、少女の分まで沢山食べよう。でもそうしたら少女にまた怒られてしまうのではないだろうか。食べてるのに太らないなんて女子の敵、と。

 職員室を後にして、自分の教室に向かう。

 いつも空席だった窓際の席には、もう座るべき人が居た。

 虚像の自分に縛られていた人は、その自分さえ受け入れて笑っている。

 さて。あと数日で冬休みが始まる。

 そうしたら、両親に会いに行こう。

 最初はまだギクシャクとしているかもしれない。でも、それでもいい。

 もう心から受け取る準備は出来た。

 今まで僕が受け取れなかった愛を、受け取りに行こう。


ここまで読んでくださった方は、多くないと思います。ですがここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、心から感謝します。気まぐれ程度で構いませんので、ご感想をいただければ、今後の創作意欲にもつながるので、お待ちしております。

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