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害獣認定  作者: みっど
第二章 人『身』掌握術
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2-3 奥義

 さすがの隊長の顔にも、焦りが浮かぶ……

「こいつら、一体……?」


 スタジオのセットの裏に隠れたレセプターを、数名のSAT隊員が囲んでいる。

 アサルトライフルの赤い光線が、幾重にも重なり、絶対に逃がさないという意思を感じる……


「完全に包囲した、もう逃げ場はないぞ、観念して投降しろ!」


 姿は見えないが、セットの奥から、レセプターの声が聞こえる。

「フフ、お前たちは何か勘違いしているようだな」

「何だと?」


「お前たちは『狩る側』ではない、『狩られる側』だ」

「こいつ……!」


 その時、レセプターがいる場所の足元から、白い煙が溢れ出す。

 シュワワワ……

「なんだ、煙……?」


「ただの『ドライアイス』だ、ここがテレビ局だということを忘れたのか?」

 視線を元に戻すと、そこにはレセプターが……


 レセプターは、右腕を下から上へ

「人身掌握術・ヒトキリ!」

 ババババババーーーーッ!

 ザシュザシュザシュッ!

「ぎゃああ!」

「がはぁっ!」

「ぐへぇっ!」


 レセプターから飛び出した、無数の真空の刃は、防弾チョッキを着ていた隊員たちを、

 まるで魚を三枚おろしにするかの如く、切り裂いた。


 ドシャッドシャッ!



 腕を下したレセプターが、隊員たちを見下ろす

 その瞳に映るのは、先ほどまで自分を追い詰めていた『知性ある人間』ではなく、

 ただの駆除された『害虫』……

「フフフ、ハハハ……」


 気が付けばもう、SATの隊員は隊長と新人隊員石崎の二人だけになっていた。

 石崎隊員が、隠れながらも隊長に進言する

「隊長、これ以上はもう……撤退しましょう」


「ダメだ、オレの『経歴』に傷がつく」

「えっ?」

「オレ達が与えられた任務は、あのレセプターとかいう小僧の確保、または射殺だ」

「し、しかし……」


 隊長は話しながらも、レセプターの方を見て、状況を確認する。

「見ろ、どうやらあの技の威力は、人を一人切断するのがやっとのようだ」


 石崎隊員は、おそるおそる隊員たちの死体を確認する。

 確かに、真っ二つに、完全に切断された死体はない。

 どれも途中まで斬られて、絶命している。

 だが、人を殺すのには十分な威力であることに違いはない。



 隊長は、石崎隊員の腕をとり、耳元で話す。

「つまり、人を一人盾にすればいい」

 石崎隊員の顔が青ざめる……

「た、隊長、何を言って……」

「そのために、お前を残した」


 石崎隊員はその場から逃げようとするが、腕を捕まれていて動けない。

「隊長、子供のために、オレは生きて帰してやるって……」

 恐怖で震えている、石崎隊員の声。

「安心しろ、お前の子供には、オレがちゃんとお父さんは立派だったと話しておいてやる、涙を浮かべてな」

「そ、そんな……た、隊長ーー!」



 隊長は、石崎隊員を自分の前に固定すると、少しニヤリと微笑む

「これでお前は、この後『英雄』として扱われるかもしれない、うらやましいぞ!」

 隊員を盾にして突っ込む隊長

「う、うわあぁぁ、嫌だーーーーっ!」

 泣き叫ぶ石崎隊員。



 ――――ッ!

 突然、周りがぼやけて、

 時間がひどくゆっくりと流れていくような感覚……

 色が抜けて、現実なのか、幻想なのか、区別がつかない……


 ぼやけた空間に、なぜか自分たちの記憶がフラッシュバックする。

「この子のためにも、オレは立派なSAT隊員になるぞ」

「やったぞ、SATの隊長に昇格だ! これでオレの将来は安泰だー、ははは」


 新人隊員が、自分の奥さんと、生まれたばかりの赤ちゃんを抱きしめている映像……

 SAT隊長の辞令を受けて、喚起している自分……


(なんだ、これは……?)


 目の前にいたレセプターが、こちらを見て微笑んでいる。

「……これが『走馬灯』だ。

 よかったな、貴様のような害虫でも、見ることができて……『うらやましいぞ』」


 レセプターは、右腕を振り上げる。

「人身掌握術奥義・ヒトタチ!」

 キュウゥゥン……


 ザンッ!


 ……一瞬だった。

 無数の真空の刃が、レセプターの前で集まり、一つの巨大な『刃』に。


 その巨大な『刃』は、石崎隊員と隊長の二人を、いともあっさり真っ二つにしてみせた!


「残念だったな、人身掌握術奥義ヒトタチ――

 ヒトキリの真空の刃を一つに収束して放つ奥義だ、その威力はヒトキリの数十倍……

 人間一人の体など、『木の皮』一枚の防御力にもならん」


 ドシャアァァ


「がはっ、ごほぉ……」

 絶命した新人隊員の体は真っ二つに斬られ、懐から奥さんと子供の写真がはみ出している。

 隊長も、まるで日本刀で肩口から袈裟斬りされたように、傷口が開いている。

「くそ、オレの、安泰な未来が……くそっ……」


 それを、レセプターが凍るような眼差しで見つめる。

「貴様のような害獣の、浅はかな考えなど、私にはとうにお見通しだ」

「くそっ、くそっ……」


「だが安心しろ、貴様だけじゃない、この先この世界に、『安泰の未来』など来ないのだから……」


「く、そ……」

 隊長は、そのまま自分の血だまりの中で、静かに息絶える。


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