2-1 情報
パタパタパタ……
静かに、しかし確実に、スタジオのレセプターに近づいていく者たち……
ライフル銃に防弾チョッキ、本格的な装備……
声は一切発せず、手の合図だけで全体を統率する。
完全なる『プロ』の動き……
20名ほどだろうか、ものの数秒で、スタジオを完全に包囲した。
「出てくるがいい、私は逃げも隠れもしない」
レセプターは、少しも振り向かず、そう言ってのける。
扉の影から、隊長らしき男が、ライフル銃をレセプターに向けながら出てくる。
銃を向けながら、手で合図すると、そこら中の影から、隊員たちが現れる。
「SATか……? 20名といったところか」
やっと振り向き、隊長らしき男の方を見るレセプター。
『特殊急襲部隊』……英語名 special assault team
日本の警察の警備部に編成されている、対テロ作戦などの凶悪犯罪を担当する特殊部隊。
特別な装備に、高度な逮捕制圧技術を持ち、
被害者の安全確保、事態の鎮圧、被疑者の検挙などを主な任務としている。
暫しの沈黙……
SATの隊長と思われる男が、静かに口を開く。
「残念だったな、お前たちの情報はすでに掴んでいた。
このスタジオは完全に包囲した、もう逃げることはできない、おとなしくしてもらおう」
「フッ……」
カタンッ
レセプターが椅子から立ち上がる。
「ガシャガシャッ!」
SAT全員の銃が、一斉にレセプターに向けられる。
アサルトライフルの照準の赤い光線が、レセプターの眉間や心臓に当たっている。
レセプターは、SAT全員の位置を確認するように見まわした後、ゆっくりと話し出す。
「『情報は掴んでいた』、か……
私たちがこのテレビ局に入ったと同時に、お前たちも裏口からすでに侵入していたのか」
隊長は答えない……
「だが、その情報は、実はわざと流したものだとしたら?」
「なに?」
「旧人類たちに我らの力を見せつけるため、わざとお前たちが来るように仕向けたとしたら?」
「……」
SAT隊員たちに、動揺が走る……
隊長が片手を上にあげ、隊員たちの動揺を鎮める。
「オレ達が、そんなブラフに引っかかるとでも?」
「なら、試してみるがいい」
フッ!
一瞬、レセプターが消えたように見えた。
隙をつき、素早い動きで照準を外すレセプター。
「撃て!」
ダダダダダダダッ!
隊長の合図で、隊員たちは発砲、レセプターは、それを素早い動きで躱していく。
渋谷の大型ビジョンにも、この光景が生々しく映し出される。
ヒューマンスレイヤーに追われている者も、隠れている者も、少し遠くから見ていた者も、大型ビジョンを見て青ざめる。
「おい、これマジなのかよ……」
「早く逃げないと、やべー」
「もしもし、もしもし、お母さん、返事して!」
テレビ局のスタジオは、さながら戦場に。
セットは破壊され、何百万円もするであろう機材も、ショートして煙が出ている。
隊長の号令が飛ぶ。
「アルファチーム、やつを追え、残りは女と男の確保だ」
「はい!」
若い隊員が、銃を構え、前に出ようとする……
隊長が、それを制止する。
「待て石崎、お前、先月子供が生まれたばかりだろう、無理はするな」
「しかし隊長……」
「大丈夫だ、お前はオレが、必ず家族の元に帰してやる。今はオレの後ろで、サポートに専念しろ」
「わかりました」
他の隊員が、チャイナドレスの女のところへ駆け寄る。
「アンタ、あの男に利用されているんだろ? 力の弱い女性を人質にするなんて、なんて卑劣な奴だ」
チャイナドレスの女は、少し微笑む
「あら、優しいのね……でも大丈夫、アタシあなたより『力』強いから!」
チャイナドレスの女のはだけた太ももに、ヒューマンスレイヤーの紋章が光る。
ヒイィィン……
「人身掌握術・ヒトニギリ!」
ドガアァッ!
「な、なんだ!?」
隊員の足元が割れ、床から巨大な『腕』が出現した!
生々しい筋肉質で、血管まで浮き上がっているその巨大な腕は、隊員の体を鷲掴みにする。
ギリギリギリ……ミシミシミシ……
「ぎゃあああああ」
「フフ、さよなら、優しい害虫さん」
グシャアァ……
最悪な音を立てながら、その『隊員』だったモノは、ただの肉塊に変り果てた……
「ひ、ひいいぃぃ……」
さすがのSATたちも、その光景を見て全員止まる。
「全員止まるな! やつを追い詰めろ!」
隊長の檄が飛ぶ
「やはりあの二人もレセプターの仲間だったか……
あのスキンヘッドの大男は、複数人で囲んで制圧しろ、また何かしてくるかもしれん」
「はい!」
スキンヘッドの大男は、胸の前で腕を組んだまま、一切動かない。
「なんだ? もしかしてビビッて動けないのか?」
数名の隊員たちが一斉に飛びかかる。
「確保……」
スキンヘッドの大男の頭頂部分に、ヒューマンスレイヤーの紋章が浮かぶ。
ヒイィィン……
「人身掌握術・ヒトツキ!」
ザシュザシューーッ!
スキンヘッドの大男の体中から、たくさんの『トゲ』が生え、周りにいた隊員たちを貫く。
「あ、あ、がはっ……」
鋼鉄のような、それでいて骨のような質感のその『トゲ』の先から、隊員たちの血がしたたり落ちる。
貫かれた直後、わずかに動いていた者たちも、全部完全に停止した。
ドサッ
スキンヘッドの大男の周りには、幾重に連なる隊員たちの死体の山ができ、夥しい量の血液が、まるで波打ち際のように溢れ出す。
さすがの隊長の顔にも、焦りが浮かぶ……
「こいつら、一体……?」




