第十二話 補給船を守れ!
戦場は地上だけじゃない──今回は川だ!
しかもただの戦闘じゃない、前線の命綱である補給船を巡る一戦だ。
もし沈められれば、ローマ軍全体が飢えと混乱に沈む。
そしてその船に、カエソとアールヴが乗り込んでしまった……これはもう、読者としては血が沸かずにはいられない戦場だ。
霧は薄くなったが、川面は依然として冷たい風に波立っていた。
前線に物資を送るための補給船が、ゆっくりと上流から近づいてくる。
甲板には干し肉や穀物の樽、矢や槍の束が積まれ、それらを守る兵士たちが緊張した面持ちで周囲を警戒していた。
「……妙だな」
クラウディアが低く呟いた。
川岸を進むローマ軍の護衛部隊、そして左翼から戻ったばかりのカエソたち百人隊。
森側からの敵影はない──しかし、その静けさが逆に不気味だった。
その時、川の向こう側から太鼓の音が響き渡った。
「太鼓……またか」
マルクが呟くと同時に、川面に黒い影が次々と現れた。
丸太をくり抜いた小舟──ゲルマン族の奇襲隊だ!
彼らは川を横切りながら、火のついた矢を放ち始めた。
燃え盛る矢が空を裂き、補給船の帆と積荷を狙う。
「消火班! 矢を抜け! 射手は敵舟を沈めろ!」
クラウディアが鋭く指示を飛ばし、後方部隊が一斉に動く。
しかし敵は止まらない。川岸に到達すると同時に、短剣と斧を構えた戦士たちが船に飛び移った。
「カエソ、右舷を守れ!」
ウルスの号令と共に、カエソは船の縁に立ち、迫る敵を盾で弾き返した。
斧の一撃が盾を裂き、衝撃で足元が揺れる。
反撃の刃を突き出すと、敵が水しぶきを上げて川へ落ちた。
その瞬間、別の敵舟から飛び移った影──アールヴだ!
金髪を濡らし、片手に槍、片手に短剣を持つ彼は、水飛沫を踏み越えてカエソに突進してきた。
「この船、もらうぞ!」
鋭い突きがカエソの顔を狙い、間一髪で盾を傾けて受け流す。
互いに足場が揺れる中、刃と刃が火花を散らした。
背後では仲間たちが必死に火を消し、矢を放ち、敵舟を沈めている。
「お前を沈めれば、補給も終わりだ!」
アールヴの叫びと共に、槍の連撃が襲いかかる。
だがカエソは足を踏み込み、盾で弾き返しながら叫んだ。
「沈むのはお前だ、北の狼!」
衝撃音、怒声、水飛沫──戦場は川の上に移り、補給船の運命を懸けた死闘が続いた。
今回はキングダム風の「戦場が動く」感覚を狙いました。
陸戦から河川戦への急展開、火矢による混乱、足場が揺れる中での一騎打ち──どれも緊張感が高く、読みながら手汗が止まらない展開になったと思います。
次回はこの船上戦の決着! 果たして補給船は守られるのか、それともアールヴの牙が帝国の喉を噛み切るのか……。
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