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地上にて

「ありがとうございます。シルフィール様」


 冒険者ギルドの職員のフランクが僕の隣にいるシルフィールに頭を下げた。


「シルフィール様が魔族を倒してくれたおかげで、調査団を救うことができました」

「私だけで魔族を倒したわけじゃないわ」


 シルフィールは僕とキナコを指さした。


「あの二人といっしょに倒したの」

「あ、そうでしたか」


 フランクは視線をキナコに向ける。


「さすが、魔族殺しのキナコさんですね。それに……」

「ヤクモよ」


 シルフィールが僕の名前を口にした。


「この子は月光の団の新人なの」

「えっ? 月光の団?」


 僕は驚いた声を出した。


「シルフィールさん。僕は月光の団の団員じゃないですよ」

「これから、月光の団に入るんでしょ」


 シルフィールはツインテールの髪を揺らして僕に歩み寄る。


「あなたはEランクだけど、特別にAランクの団員と同じ給料を払うわ。それだけの実力があると思うし。それに部屋もあげる」

「へ、部屋?」

「そう。月光の団はタンサの町の中央に屋敷があるから。私の隣の部屋が空いてるし、そこを使っていいから」

「い、いや。僕はアルミーネのパーティーに入ってるから」


 僕は両手を胸元まであげて、首を左右に振る。


「月光の団に入るのは無理ですよ」

「抜ければいいじゃない。こっちのほうが条件がいいんだし」

「それはダメっ!」


 アルミーネが僕の左腕を掴んだ。


「ヤクモくんは大切な仲間だから、絶対に渡せないよ」

「そうなのだ!」


 今度はピルンが僕の右腕を掴む。


「ヤクモはピルンといっしょに魔王を倒して英雄になるって約束したのだ」

「いや、そんな約束してないし」


 僕はピルンに突っ込みを入れる。


「とにかく、僕は月光の団には入りませんから」

「はぁ? どうして?」


 シルフィールが僕をにらみつける。


「月光の団の何が気に入らないの? 十二英雄の私がリーダーをやってるのよ」

「いや、気に入らないんじゃなくて、今のパーティーの仲間といっしょにいたいんです」


 僕は自分の腕を掴んでいるアルミーネとピルンを交互に見る。


「アルミーネは聖剣の団を追放された僕をパーティーに誘ってくれた恩があるし、キナコには、いろいろと戦い方を教わってます。ピルンには……」


 数秒間、僕は無言になった。


「なぜ、黙るのだ?」


 ピルンの頬がぷっくりと膨らんだ。


「ピルンのすごいところも言うのだ」

「ぴっ、ピルンは正義感があって、ファッションセンスも……最高かな」

「かわいいが抜けているのだ。忘れたらダメなのだ」

「そう……だったね。は、ははっ」


 僕はぎこちなく笑いながら、シルフィールに視線を戻す。


「だから、月光の団に入ることはできないんです」

「ふーん。十二英雄の誘いを断るんだ?」


 シルフィールの銀色の眉が吊り上がる。


「いい度胸してるわね」

「すみません。もし、ソロだったら、喜んで月光の団に入ったと思います。シルフィールさんの圧倒的な強さを近くで見ていたいから」

「んっ、そう……なんだ?」

「はい。シルフィールさんといっしょに戦えて、すごく勉強になりました」

「……ふーん」


 シルフィールは一歩前に出て、僕に整った顔を近づける。


「まあいいわ。あなたの部屋はずっと空けておくから、今のパーティーに飽きたら、いつでも連絡して」


 そう言うと、シルフィールは僕の胸を人差し指で軽く突いた。

この物語を『面白い』『続きを読んでみたい』『作者がんばれよ』『応援してやるか』など思っていただけたら、ブクマ、評価などしてもらえると、作者が大喜びします。


また、私の作品以外でも、小説家になろうの中で気に入った作品があったら、同じように評価してあげてください。

作者は、こういうことで喜び、モチベがあがるので。


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よろしくお願いします。

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