石油王アップグレード 七
今日も寝落ちからの朝の寒さで起床からの慌てての投稿。
「俺は不器用だから説明はお前に任せた」
まるで寡黙な昭和の名優のように「自分不器用ですから」と告げて、高クラーゲンのクラは去って行った。
「あいつどこ行くんだ?」
「おそらく海だろう。儂らはまだもお主にはメシが必要だろ?」
十三の疑問に残ったゲンが応える。
「そういやそうだな。色々あったしまだ空腹を感じる余裕もないけど、さすがに夜までは保たないな」
「漁ならクラに任せとけ。お主が獲ってくるより確実だ」
指摘されて十三も漁に出ようと動き出したが、それをゲンが止める。人間のしかも素人の十三と大海の覇者とも呼ばれるクラーゲンとで漁の成果を比較する方が間違いであろう。
「まぁ、儂らのことはもう良いだろう。それよりお主本人のことだ」
「俺のこと?」
「九龍玄女さまに喰われたナガイキから儂らが産まれたように、九龍玄女さまのお力で再誕したお主も九龍玄女さまの影響を受けているはずだ。どこか以前と違うと思うことはないか?」
「そう言われてもなぁ?」
取り立てて体調に変化は感じない。そう思いながら十三は自身の異能をチェックする。
「これは?!」
初めて石油王の能力を自覚した時のように意識を向けると、その能力の詳細が脳裏に浮かぶ。そして気付く。
「新たな能力?!」
「お?やはりか」
十三の呟きにゲンも期待で目を輝かす。
試しに十三がその力を振るうと、十三の手から薄い膜が出る。
「これは?」
「ペットボトルのペット(PET)、つまりポリエチレンテレフタレートだ」
「ほう?」
十三の説明にゲンも興味深そうに相槌を打つ。
「どうやら石油由来の合成樹脂も自由に生み出せるようになったようだ」
「となるとプラスティックもか?」
「ああ、この通り」
そう言って十三はプラスティックの板を掌に生み出した。
「ホットボンドのようには使えないのか?」
「やってみよう」
ゲンの注文に十三が応える。
すると加熱されてドロドロになったプラスティックが指先から零れ落ちる。
「出来るようだな」
「すごいな。つまりお主3Dプリンターになったようなもんだな」
「あ!?そうか!そういうことか」
ゲンに言われて十三も気が付いた。これはかなり自由度が高い能力であることに。
「他になんか新しく見に付いたものはないのか?」
「そんなこと言われても石油王の能力が進化したぐらいしか感じないなぁ」
そう返事しながらもふと何気ない衝動で十三は指を鳴らした。
パチッ!
心地良い響きとともに十三の指先から火花が飛ぶ。
「おっ!?なんだ?!」
自分でやっておいて驚く十三。
「ふむ、それは儂らクラーゲンの力のようだな」
「知っているのか?!ライゲン!?」
「儂の名前はゲンじゃなかったのか?」
「そうです。あなたはゲンさんです」
ちょっとしたボケにマジレスされて十三は誤魔化すように敬語で返事した。しかしゲンもクラも名前付ける前と後ではえらい変わりようである。
「ま、それはともかく。儂らの基になったナガイキはクラーゲンの中でもデンキクラーゲンと呼ばれる種だったのだ。ナガイキもお主も一度九龍玄女さまにごちゃまぜにさせられてから再誕したわけだから、そのナガイキの力の一部がお主にも付いたのだろう」
そうゲンは説明する。確かに十三の記憶にあるナガイキは発光しながらクジラを攻撃していた。が、
「デンキクラゲは刺された痛みがビリッとして電気ショックぽいからそう呼ばれてるだけで、実際電気が流れてるわけじゃないはず」
「儂らはクラゲじゃなくてクラーゲンだからな。地球の生物とこの世界のモンスターを一緒にするな」
十三の指摘はゲンの正論に論破された。
毎回千字程度と少ない文字数にしているわけだし、もちょっと余裕を持ってストックしとかないとダメですな。




