石油王アップグレード 一
九龍玄女という名の巨大幼女に摘み挙げられた時、「これはヤバい」と十三の本能が鐘を鳴らした。それでも、月が地球に惹かれるように彼は抗えざる巨大幼女に身を委ねた。
九龍玄女は躊躇なく十三を口に放り込み、十三の視界は闇に閉ざされその意識も一瞬で途絶える。
そして再び訪れるキラキラ光る謎空間。
当然九龍玄女の体内ではない。
(ここはクルールーと会った…?!)
「その通りじゃ」
十三の心の声に返事があった。声のした方、後ろを振り返った十三の目に黒髪の美少女が飛び込んで来た。
(うわぁ!?かわいい!)
「そうかの?そう言われると照れるの」
元々ややぽっちゃりだったインドア派のヲタク青年であった十三もここしばらくのワイルドな生活でやや痩せ寄りの中肉中背となっていた。単に粗食が理由でやつれただけかも知れないが。その十三と同じぐらいの身長だから一七〇センチほどか、十代の女性としてはやや高めだろう。
背は十三と同じぐらいだが、十三よりも明らかに小さく色白で整った顔立ちのおそらく十代後半の美少女。十三が今まで見てきたアイドルたちと比べても遜色ない美少女がそこにいた。
一見華奢なスレンダーな体型。だがちゃんと出るとこはしっかり出ていて、スラリと伸びた脚も長く所謂モデル体型である。
その瞳には意志の強そうな輝きがあり、十三は鮮烈なその輝きに目が離せなかった。
(この娘は間違いなくセンターの器だ!)
握手会その他のイベントで美少女に見慣れていた十三が思わず「原石発見!」と歓喜するほどの美少女。しかし、しばらくその顔を見つめているうちにどことなく見覚えのある面影が…
(あれ?もしかしてこの娘…)
「もしかしなくても妾じゃ」
「九龍玄女さま?!」
びっくりした拍子に声が出た。だが十三は気付いていなかったが、今まで十三の心の声に彼女はしっかり反応していた。
それはともかく美少女の正体は九龍玄女であった。
「えっ?!九龍玄女さま?!なんで?あれ?いつの間に大きく?いや、小さく?」
十三は混乱していた。確かに彼女は体型や顔立ちは成長していたがサイズは小さくなっていた。
「いきなり飲んでびっくりさせたかの?クルールーが行ったという儀式の詳細が知りたくてお主が持つクルールーの記憶を丸ごと取り込んだのじゃ」
混乱する十三に九龍玄女は説明する。
「あっ、九龍玄女さまも日本に転生するんだ」
「こちらの世界に居ってもやることないしの。人間に転生して日本で生きる方が楽しそうじゃ」
「ちなみについでに俺もってわけには?」
「いかぬ。ということはお主もわかっておろう」
「ですよねー」
そのことはすでに結論着いていたので十三に失望はない。
「おそらくこの界間超トンネルは一方通行なのじゃろう。このように立ち止まって話をすることは出来てもそれぞれ進むは一方のみ。妾は日本へ転生する途中なのじゃが、妾に取り込まれたお主は日本へ戻れないのでここで分離したというわけじゃ」
「つまりここでお別れってことか」
これだけの美少女とすぐにお別れが寂しいが、握手券数枚分には話出来たと思えば普段行っていたイベントとそう差はない。
「そろそろ時間かの?妾が日本での生活のために必要な物以外は置いてゆくゆえ、それらは好きに使うが良い。ではさらばじゃ」
そう言って九龍玄女はキラキラ輝く光の中に消えて行った。




