ぼっち石油王の無人島生活 一
「ふぁあ」
あまりの釣れなさに欠伸が出る。
ゆらゆらとイカダを揺らす波が十三の眠気を助長した。
(今日はこのポイントはダメっぽいな。ポイント移動するか?それとも諦めて戻るか?)
ぼんやり考えてる間にも睡魔は襲ってくる。
(とりあえず一旦眠るか。この波なら特に問題ないだろう)
と、イカダに寝転がり見事な青空と太陽を見上げる。
十三がノレイエに来て五日が経っていた。しばらく暮らしてみてわかったが、この時期のノレイエは日本で言うならば春のような陽気の過ごしやすい島だった。
残念ながら食料を筆頭に生活物資は不足していたので快適な暮らしというわけにはいかなかったが。
特に漁船のような船舶や保存食などが残ってなかったのは痛かった。考えてみれば、船は島を捨てるために、保存食は残された島民たちの糧として必要だったので、十三が来る前に無くなっていたのも当然であろう。そしておそらくノレイエが無人島になってから十三がやって来るまでの間に流れ着いた漂着物の中にもそれらはなかったのだろう。
(「無い袖は振れない」し、有る物で何とかやってくしかねぇよな)
うつらうつらしながら十三は自分の好きなことわざを思い出す。
クルールーの神力、サイコメトリーとリセットは便利ではあったが、何不自由なくとまでいかなくてもこの島を出て人間社会である程度快適に暮らせる目処が立つまではなるべく温存したいと十三は考えていた。毎日アンキトーストを腹一杯食べることは可能だが、それをやってしまうと詰んでしまうことぐらいは理解出来ていた。
だからこうして釣りを行い食料を確保しようとしているのだ。今日は今のところ不漁だが、毎日それなりに様々な魚を釣ることでアンキトーストの消費量を一日二枚程度に抑えることに成功していた。
釣りを始めた当初は岸釣りをしていたのだが、さらなる釣果を求めて昨日からイカダで沖(と言ってもそう遠くない近場だが)に出るようにしている。
そのイカダもガソリンスタンドにあったドラム缶やポリタンクやアルミハシゴなどを利用して自作したものなので神力は使っていない。
釣りに使っている道具もガソリンスタンドや島の住居などで集めた物で自作した。当然リールなどは付いていないのでそう遠くまでは届かない。餌となる物もないのでルアーフィッシングをイメージして作った、(よく言えば)疑似餌を適当に操作しての釣りだ。
海から遠い山育ちで、小学生の頃親と岸釣りに行った時か数年前友人に誘われてバス釣りに一回行っただけの十三の知識と経験ではこのような釣りが限界だった。
とはいえここ十年ほど無人島で釣られることもなかったノレイエの魚はそんな下手くそ釣り師でもそれなりに釣れるようで、釣りを始めてからボウズだったことは今のところない。




