ぼっち石油王の無人島生活 二
「んー」
三十分ほど横になっていた十三が伸びをして起き上がった。
(やっぱポイント移動するか。そういやまだ島を一周したことなかったし、探索がてらぐるっと回るかな?)
今日一日ぐらいボウズになってもまだ困らないだろうと判断した十三はぐるっと一周回って海から島を眺めることにした。もちろんその後時間に余裕あれば釣りを再開するつもりだが。
「よっ!と」
気合いを入れてリコイルスターターを引きエンジンをかける。
船そのものはなかったのだが、幸運なことに十三は漂着物の中から船外機を発見出来た。船外機を発見したからイカダを作って船釣りをしようと思い立ったのだ。インドア派のヲタク青年だった十三に手漕ぎでの船釣りはキツかっただろうし、本人もするつもりはなかった。
もちろん十三は船外機の操作をしたことはなかったのだが、そこはサイコメトリーという便利な能力がある。リセットしたことで新品同様になった船外機は軽快なエンジンを響かせて十三お手製のイカダを走らせる。
(クルールーの記憶でわかってたつもりだけど、この島に流れ着いた漂着物はほとんど地球産だったな)
船外機を操作しながら十三はクルールーの神殿横の倉庫を思い出していた。
(他にも異世界あっても不思議じゃないけど、ノレイエが繋がりやすいのは地球ってことなんだろうな。確かクルールーは界間超トンネルとか言ってたっけ?)
トンネルが繋がりやすいとは言っても十三はクルールーのように世界を超えて再び日本に戻ることは出来ない。あの世界では油田十三は死んでいるのだ。現代日本では死んだ人は生き返らないのだ。仮に別人として生活しようとしてもおそらく世界法則によって界間転移した瞬間に死んでしまうだろう。油田十三という魂が地上に留まることは出来ないだろうというのがクルールーの説で、そのクルールーの知識を受け継いだ十三本人の推論であった。
だから十三はこの世界で生きていく覚悟だったのだが。
(しかし無人島とはねぇ)
苦笑するしかない。この島の遙か北西にはメイン大陸とやらが存在し、そこに人間たちが住んでいることは知識として知っている。ならばそこを目指せば良いだけなのだが、何分遠い。豪州から日本を目指すぐらいには遠い。
(この世界は剣と魔法のファンタジーな世界と聞いてたんだけどねー)
未だそれらしきものに遭遇したことはない。
クルールーの記憶では、エルフやドワーフや獣人たちもいる日本のゲームや漫画でよくある設定のファンタジーな世界だったはずだ。
(エルフや獣人の美少女に会いてぇな)
ドルヲタの十三はこの世界でやりたいことがあった。それは「自分でアイドルグループを運営したい!」というドルヲタなら一度は妄想するであろう夢だ。
なにせ十三は今や石油王である。ならばグループの運営ぐらい容易いのではないか?と夢想しても仕方ない。ただし石油王であっても資産家ではないので運営資金が潤沢にあるわけではないが。
どちらにしてもまずはこの島を出てからの話である。ここノレイエにいる限り十三はぼっちなのだから。




