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魔法使いシャオ  作者: 秋華(秋山 華道)
エルフ編
37/43

アサリ

世界は、共通の敵とも言えるエルフの出現により、再び1つになろうとしていた。

独立した国々は、どう考えても単独でエルフを相手にする事はできない。

当然トキョウの軍事力、或いはシャオの力を当てにせざるを得なくなってくるわけで、再びトキョウの傘下へと戻ってくる国が現れ始めていた。


エルファンはまだ戻って来ていなかった。

そんな日々の中、アサリはシュウカといる時間が増えていた。

アサミよりも大きな魔力を持ちながら、その大雑把な性格からか、今一強くなれていないアサリ。

魔力の大きさから言えば、シャオほどではないにしても、もっと強くなれる素質は持っていた。

そんなアサリに、シュウカは色々と教えていた。

そして今日はアサミも一緒だった。

「アサミ!この雷神、おまえが使ってみなぁ~」

シュウカはアサリの雷神をアサミに渡した。

「えっ?でもこれアサリのだけど‥‥」

「良いの。私は新しい武器をいただきましたから」

アサリはそう言って、鞘に収まる刀を見せた。

「この雷神と風神は、普通の剣と比べても少し短く細い。子供の頃のお前たちなら丁度良かったかもだけどぉ~‥‥これは俺の考えなんだけどさぁ~これって元々二刀流武器だと思うんだよねぇ~。で、アサミなら器用だから二刀流できるっしょ?」

「うん‥‥実際2本あればなって思った事もあったしその方が戦えそう」

「‥‥できるんかい~!!」

シュウカもできそうだとは思っていたが、その方が良いと言われるとは思ってはいなかった。

だからついツッコミを入れた。

「アサミは器用ですからね」

アサリにとっては自慢の妹だった。

「でもアサリ、その刀よりも雷神の方が強力な武器っぽいよ?本当にそれでいいの?」

アサミの目に映る鞘に収まった刀からは、特に何も感じられない。

アサミにはただの刀に見えた。

それに対して雷神は、その力は既に今まで実証できている。

攻撃力を高め、魔法の魔力サポートもしてくれる。

普通に考えれば雷神の方が強力な武器と言えた。

「最近シュウカさんに『居合斬り』なるものを教わりまして、その為にはこちらの長い刀の方が良いみたいです。それにこの刀、なんだか凄いんですよ」

アサリはそう言うと、鞘から刀を抜いた。

すると刃の部分がピンクに光る刀が現れた。

「何それ‥‥」

ピンクに光る刀には迫力も無ければ、魔力も感じられない。

むしろ飾りつけは玩具っぽかった。

「アサミちゃん、バカにしてもらっては困るよぉ~。これは陽の刀って言われていて、新選組の4人が持つ刀と遜色ない、いやむしろそれ以上の究極の刀なんだよぉ~」

シュウカの言葉に説得力は感じられなかった。

「なんとぉ~!信用していない?本当は新撰組の4人に持たせている4本の刀とセットでさぁ~、5人で一組の刀なんだぞぉ~。昔は何でも5人一組が当たり前で、色は赤、青、黄、緑、桃と決まっていたのだぁ~。中でもピンクは紅一点、必殺技の重要な部分を担う一番のぉ~‥‥あれ?」

シュウカの言っている事は、皆意味が分からなかった。

シュウカもそれに気が付いて、話を止めた。

「何にしても百聞は一見に如かずだ」

シュウカがアサリに促すと、アサリは鞘を腰に装備した。

「んじゃまぁ~いくよぉ~」

シュウカはすぐに魔力を高め始めた。

アサリは居合斬りの体勢を維持して動かない。

シュウカは更に魔力を高め続けた。

シャオやアイには劣るものの、かなりの魔力が集まった。

そしてその魔力が火球に変わる。

テラメテオだ。

その火球はアサリへと向かった。

「アサリ!」

火球をまともにくらえば、死に至る可能性のある強力なものだった。

アサミの叫びがアサリの耳に届いた。

一瞬の出来事だった。

次の瞬間には、火球は消失していた。

アサリが刀を抜き、一瞬で火球を斬っていた。

驚く事に一切の爆発も起こらなかった。

薙ぎ払っていたのなら、他へ飛んでいた可能性もある。

だが魔力は完全に消失していた。

「魔法無効化?魔力解体?」

「ああ。この刀には魔を斬って消滅させる力があるんだ。そして魔は刀の餌になるぅ~。魔を吸収する力があるって事だなぁ~」

「へー‥‥凄い刀だったんだね。見た目は可愛いけど‥‥」

アサミは納得した。

「名付けて!魔除けの桃刀!」

アサリのネーミングセンスは、割と良かった。

そんなわけで、アサミは雷神と風神、両方を使う事に決めた。

「これでわたくしも、少しはお役に立てますね」

アサリは少し気にしていた。

自分が皆の足を引っ張っているのではないかと。

尤もそんな事があろうはずもなかったが、アサミや共に戦う仲間の使い手と比べるとやはり劣ってはいた。

魔力が大きいのだから、アサリは強くなりたかったのだ。

まあそんな思いをアサリはシュウカに話し、それを受けてシュウカが居合斬りを教えた訳だ。

ちなみにシュウカは居合斬りができない。

ただ古の知識として知るに過ぎなかった。

それをただそのままアサリに教えたら、よっぽど相性が良かったのだろう。

アサリはすぐに身に着けてしまった。


この後、しばらくアサリとアサミは、シュウカを相手に新しい戦い方を試していた。

シュウカの操る岩を相手に剣を振るい続けた。

ちなみにシュウカは、魔力による物質コントロールが得意である。

だから訓練相手として良かった。

そんな訓練中だった。

トキョウで休養しているはずのラキシスがやってきた。

「あ、ラキシス?」

シュウカの声に皆振り向いた。

「疲れもとれたので私もこちらへ来ました。町も取り戻したいですからね」

「お疲れ様です」

「あー‥‥でも今はちょっと返事待ちって言うか、とりあえず‥‥」

「話は聞いてますよ」

ラキシスは笑顔だった。

本当は、自分の町を襲ったエルフを許せるはずもない。

町には身内こそいなかったが、友もいた。

そんなエルフと仲良くしようと言われて、すんなり受け入れられはしない。

それでも、仲良くやって行こうという皆の思いには納得していた。

ただそれでも町は取り戻したい。

どこかで誰かがまだ生きているかもしれない。

そんな思いがあってラキシスはカルディナまで来ていた。

「そだなぁ~。エルファンが戻って来たら、町の事も聞いてみるかぁ~」

しかしこの日もエルファンは戻っては来なかった。

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