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魔法使いシャオ  作者: 秋華(秋山 華道)
エルフ編
36/43

岐路

シャオたちはしばらく、返事を待つ為にカルディナの町に滞在していた。

既に中央大陸へ渡ってきているエルフも多数いて、それらが何時襲ってくるかもしれないわけだから、対応する為に此処にいる必要もあった。

シャオは、カルディナの東にあるノースエベスの町が襲われる可能性も考え、サンゲンをそちらへ向かわせた。

「隣の町は、トキョウ傘下の町じゃないから入れないよ?」

アサミの心配も、シャオは「だったら外でw」と軽く返していた。

例え別の国だったとしても、シャオは『人間とエルフが争う』事を避けたかった。

「それに私とシャオはただの旅人だし問題ないんじゃないかな」

アイも深くは考えていなかった。


それから数日が過ぎたが、エルファンは戻って来なかった。

シャオはここ3年、一ヵ所に3日以上留まる事などほとんどなかった。

それに何時魔界の門が再び解放されてしまうかも分からない。

正直落ち着かなかった。

「こんなにゆっくりするのも久しぶりだな」

「うん。でもなんだかゆっくりできないね。何かやってないとって感じ」

アイの苦笑いに同意したシャオだったが、同時に少し落ち着く自分を感じていた。

そんな話を屋敷のテラスで話していた2人の目に、サンゲンの姿が入った。

2人はすぐに立ち上がって準備を始める。

しばらくしてアサミがテラスへとやってきた。

「ノースエベスにエルフが来たって!」」

アサミの言葉を聞いた途端、シャオはすぐにドラゴンを召喚した。

「相棒!手伝ってくれ!」

シャオがナイフに話しかけると、魔力がナイフから溢れてドラゴンの姿へと変わった。

直ぐにシャオとアイが乗った。

「ちょっと行って来るね!」

アイがそう言った声は、最後には空の彼方に消えていた。

「早っ!」

当然アサミの声はシャオたちには届かなかった。


ドラゴンは荒野の上空を東へと向かった。

この辺りは3年前までは、雪や氷に覆われた地だったかもしれない。

しかしここよりも北には、森も存在している。

シャオたちは3年旅をして気が付いた。

黒の霧は濃い場所もあれば薄い場所もあった。

極地に行くほど相対的には濃くなっていたが、中にはほとんど黒の霧が認識できない場所もあり、そういった所には森も存在していた。

眼前にエベス山脈の北端が見えてきた。

その麓にノースエベスの町がある。

シャオは一直線にそちらへ向かった。

町の外には、100人ほどのエルフの姿が見えた。

それと対峙するように、町の治安維持隊か魔法部隊の姿があった。

少し見た限りエルフが押しているように見える。

町の治安維持隊もよく見ればもう戦える状態ではなさそうだった。

「すぐに飛んできたんだが、既に此処までやられているか‥‥」

「先の戦いで、優秀な使い手はほとんどいなくなったからね」

アイは話しながら、エルフと町の者の間に、巨大な魔法障壁を展開した。

いきなり魔法障壁が現れた事で、エルフも町の者も戸惑っているのが分かった。

「ノースエベスの方々!私たちに任せてくださーい!」

ドラゴンが低空へと降りたタイミングでアイが叫んだ。

「プリズム!」

シャオはプリズムを展開し、エルフからの攻撃を全て返した。

「あまり強力な攻撃は止めた方がいいぞ!全部そちらに返すからな!」

しかしシャオの言葉をエルフたちは聞く耳を持たず、呪文を唱え始めた。

「全く‥‥」

シャオは更にプリズムを展開した。

シャオに向けて、複数のエルフがテラメテオを放った。

「考えてやがるな」

プリズムはコールド系の魔法である。

炎の攻撃でそれを溶かし相殺する意図を持った攻撃だった。

「でもまだまだこの程度なら‥‥」

シャオはプリズムに魔力を重ねた。

テラメテオがプリズムに当たる。

すると炎は一瞬に消えて、魔力のエネルギーだけが方向を変えてエルフへと返っていった。

「アイ!」

シャオの声に、アイはエルフの前に魔法防御を展開し、エルフたちを守った。

「悪い!癖でそのまま返しちまった!」

「大丈夫、結果オーライみたいよ。助けられて動揺しているわ」

エルフは更に攻撃してきたが、動揺の中その威力は弱かった。

「ではこのまま追い返しますか」

シャオはそろそろ仕上げとばかりに魔力を高めた。

その間エルフの攻撃をシャオはまともに受けているように見えたが、まるで効いている様子はなかった。

アイも気に留めるわけでもなく、自分は地上での衝突を回避させることに集中していた。

「よしいくよ!ファイヤーウォール!」

ファイヤーウォールは、炎の壁を作る魔法である。

アイが分けた人間とエルフの間に、炎の壁が展開された。

その大きさは、高く、厚く、熱い。

離れた町にいてもその温度が感じられそうな大きさだった。

ちなみシャオがくらっていた魔法はファイヤ系の魔法である。

プリズムを展開していたシャオに向けて、エルフたちは皆ファイヤ系で攻撃してきた。

それをシャオは上手く踏み台として大きなファイヤーウォールを作り出していた。

当然シャオなら、敵の放つ程度の魔法は無意識にレジストできるレベルである。

ダメージなどあるはずもなかった。

「俺のファイヤーウォールはこれだけじゃないぜ!」

シャオがそう言うと、炎の壁はゆっくりとエルフたちのいる方へと移動した。

エルフたちは慌てて下がり始めた。

魔法を無効化しようとしたり、コールド系魔法をぶつける者もいたが、シャオの作り出した炎の壁には全く影響がないように見えた。

エルフは1人、また1人と飛翔で空へ上ってきた。

その内何人かはシャオへと向かってきた。

そのエルフに対してドラゴンがブレスを吐く。

その攻撃は容赦がなかった。

「サザン!殺すなよ!」

シャオの言う『サザン』とは、ドラゴンに付けた名前である。

「ダイジョウブダ。コノテイドデクタバルヤツラジャナイ」

エルフたちはドラゴンブレスをかわし、尚もシャオたちに接近を試みる。

手には剣を持っていた。

「接近戦希望か?ツイスタートルネード!」

「オレモマキコムカ?」

「大丈夫。上手くコントロールするさ」

ドラゴンは空中で静止した。

その前方、エルフたちがいる所に巨大な竜巻が発生した。

それはエルフたちを巻き込み、更にエルフたちを飲み込んでいった。

「これくらいなら死なないよね?‥‥」

全てのエルフを飲み込んだ竜巻は、全てを北西の方へと飛ばした。

戦いは終わった。

「ありがとうございます!」

地上からの感謝の言葉に、シャオとアイは手を振ってこたえ、そのままこの場を後にした。

「あの魔力、シャナクル様だな‥‥生きておられたか」

この町の長はシャオの事を知っていた。

その男は苦笑いしながらも嬉しそうだった。

この時から再び、世界は1つになろうとしていた。

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