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神とともに歩む者  作者: mikibo
西国学園編
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滅びの願い2

来てくれた……というべきなのだろうか?


「あまり歓迎されてないようだな。最高のタイミングだと思ったんだが?」

「それは当然よね、私がしてしまうこと……」

「言うな」


短く私に告げる。

そして、娘に彼は向き直る。


「俺からの最後の……いや、最期の言葉だ」


千花もわかっている。

これから何をするのか、何が起こってしまうのか。


「前を向いていけ」


娘はうなずく、唇をかみしめて、泣きそうな顔をして。

そんな娘を見て微笑み、無言の別れを告げる。


「我 時空を司る者なり 我 分かたれしものに帰属するものなり 我が示すは 縛られし鎖を切り裂く力 我 汝と共に歩むものなり」


足元から順に光の残滓として、私に向かって流れ込んでくる。

こんな状況ではなかったら、これがそういうものではなかったなら、幻想的な物であっただろう。

そして、下半身が消え、腹が消え、腕が消え……そして、最後に首が消えた。


私は知っている。


千花に言った言葉は、私にも向けられているのだということを。

ならば、聞き届けてやろう。

死に取り残されてきた自分を想う。


「お前の命を燃やして、私は前に進む。誰にも邪魔はさせない」

「別れは終わったかい?」


髪は白く、目は赤い少年……神殺しが声をかける。


「今代の神殺しは、言葉まで発せられるようになったのね」

「今度こそはお前()が死ぬ番だ」


少年という体躯に見合わぬ大きな剣。

人一人は余裕で隠すことができるだろう。


「渚は殺させない。そのための私なのだから」

「言葉を覚えたところで通じぬのなら意味はないなッ!」


美咲のダガーはバターのように切り裂かれた。

渚で受け止める。


「大丈夫なんですか?」


さっきの神殺しと私の絶対的な相性の悪さの話をしたからだろう。


「よく見て、この渚、黒いでしょ?」


自分の持っているのを見せる。


「次元干渉しているから、神殺しの攻撃が届かないようになっているの」

「違う次元にものがあるということで、認知されたりしないの?」

「相手が私より高次元を認識していたらね。でも、それは私の方に分があるから」


長く生きてきたのは伊達ではない。

しかし、私が今使えるのは、この次元干渉ができるものだけ。つまり、形を持つことのできるものだけである。風や炎にまとわせることはできない。


「あの弓矢で終わりにはできないのですか?」


千花に問われる。


「具現化は強すぎて、次元をまとうことができないの」

「まったく、使えないわね!」


しかし、こんな軽口を叩いていられるのは、最初だけであった。


私が切りかかり、美咲のナイフが背後から神殺しの心臓を、千花が私の背後から首を狙う。


それはかわされ、弾かれ、押し返される。

逆に反撃で、重さを無視しているかのような速度で剣が振るわれる。私はそれに吹き飛ばされ、千花は鳩尾を殴られ吹き飛ばされる。


「大丈夫?」

「私を気にしてる場合じゃないです!」

「……ッ!!」


迫っていた銀光に、とっさに渚を振るい、退かせる。

美咲も千花もこの一瞬で悟っただろう。

神にも対抗しうる力を持つということは、常人を上回っているということも内包しているのだということを。

だが、


ー硬質なものの衝突する音が響くー


こちらも常人ではない。


真っ黒な柄が振るわれた大剣を受け止めた。

美咲のナイフが追撃し、飛び退かせる。

さらに追って千花が鎌で薙ぐ。

が、これも届くことはない。

反撃を食らい、鎌の刃が欠ける。


どれくらい時間がたったのか。


ついに、耐え切れなくなり刃が砕け散る。


「……そんな」


千花がこちらへ飛び下がる。

あの娘の鎌が砕け散ったのは、神殺しが高次元の存在を理解し始めたからだ。


「私ももうほとんど持ち合わせがないわ」


美咲も現状の厳しさを伝えてくる。

私もそろそろ限界だ。


しかし、神殺しも無傷というわけでもない。


ここで相手から仕掛けてくる。


「火魔術『火壁』ファイアーウォール


美咲がここで初めて魔術を行使する。

今までなかったパターンに神殺しは躊躇する。

その一瞬に千花が柄を振る。


ガキンッ!


ぎりぎり間に合ったようだが、完全には受け止めきれず後ろに吹き飛んだ。


最後に私。


「『次元切リ裂ク至高ノ二振リ』」


叩き込む!


『時超えし御業』(クロノドライブ)


世界がわずかな時間、私を残して動きを止める。

腕を引いて防ごうとしているが、もうすでに、ガードできない位置に叩き込んでいる。


ザンッ!


血しぶきが上がる。

初めての致命傷となりうる可能性のある打撃である。


「やった?」


しかし、ここで予期せぬ事態が起きる。

いや、むしろ神殺しの今までの行動を考えれば当然予想できたことである。


美咲の言葉を吹き飛ばすような怒号。


グオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!!!



肉体はその姿を魔物へと変える。

魔物たちの神となっているのだから、これくらいは当然だろう。


ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!


千花の鎌は刃が砕け、美咲のナイフは底をついた。

これではもう戦えない。

対して向こうは、獣化のために傷が癒えている。


『変わらなかったのう』

『これでいいのよ。歴史は繰り返す。次は、うまくといいわね』


残った全身の力をかき集めて動く。

そして、神殺しの手をつかむ、足を踏みつける。

神に対する抵抗力が私に焼くような痛みを与える。


しかし、拘束しても自分たちでは……否、この世界の人では決定的なダメージを与えることはできない。

一人を除いて。


「嘘……」


背後で美咲のつぶやく声が聞こえた。

恐らく、美咲のギルドカードの変更の知らせが届き、巫女としてなすべき使命が書かれているのを見ただろう。






〈称号『死にゆきし者たちへの葬送者』が付与されました〉






「さて、死の淵までご案内」

「あんた待ちなさい!! 死ぬ気なの!?」

「私は死なないわ。前にも言ったでしょ。だから、やりなさい」

「嘘よ! まだ戦えるわ! それにあなたが拘束しなくても……」

「あなたの力は対消滅。神殺しと同格の存在は私しかいない」


美咲に言外に告げる。


-もうどうにもならないところまで行ってしまったということを-


そして、空に向かって、私はつぶやく。


「龍炎、みんな。ごめんね。また、繰り返しちゃったよ」

「嫌よ! そんなのってないわよ!」

「早くしなさい!」

「こんなことあっていいはずがないじゃない! 私はあんたを殺すためにきた訳じゃないのよ!」


美咲はふりかえり、千花に同意を求める。

しかし、千花が美咲の肩に手を乗せ横に首を振る。


「そんな……」

「もう持たないわよ!」

「必ず……必ず戻ってくるって約束しなさい! できなかったら、世界中の食べ物全部おごってもらうんだからね!」

「どうってよ……まあ、いいわ。約束しましょう。戻ってくると」


美咲は前を向く。


「神の涙は大いなる恵み 転じて 大いなる災いとなす 其は禁忌とされし 命を以て滅びを招く力なり」


天秤の絵が大地に描かれる。










振り返った私が最後にみたのは美咲の泣き顔だった。

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