55話目 キリッ
島に戻った俺は、人を集めてワイバーンの解体をお願いした。
「今日はコイツでバーベキューをしよう。沢山あるからどんどん捌いてくれ!」
「リョータさん、コレってワイバーンって奴ですよね?沢山って何頭いるんですか?」
ジャックが震える声で聞いてきた。
「俺とハルで25頭づつ、全部で50頭だな。」
「50!もっと人を集めてきます。いや、解体の得意なヤツにやらせますので、時間貰っても良いですか?」
「うーん…夕飯に間に合うならそれでもいいよ。」
「状態が良いので、丁寧に処理すれば高く売れる筈です。夕飯迄なら3頭は肉に出来ます」
3頭か…まぁ胴体部分だけでもは牛くらいあるし、十分だろう。
「じゃあそれでよろしく!あっ、探索に出てる奴等も誘ってあげないと可愛そうだな。ハル、お願い!」
「ハルはこのコのお世話をしないと。誰か別の人に頼んで!」
「うふふ、ハルったら。じゃあリョータさん、私がお連れしますわ。」
そう言って俺の運搬を買って出てくれたのは、真っ黒い羽のハーピィさん。
長い黒髪にちょっとタレ気味の大きな目、ハルとは比べるまでもなく主張の強いわがままボディのおねいさんハーピィ。
艷やかな黒い羽も相まってとってもオトナな雰囲気だ。
「じゃぁお願いします。先ずは対岸の広場に転移しますね。えぇ~…」
「ウミよ。空を飛ぶハーピィなのにウミって名前なの、変でしょ?母さんは海を自由に泳ぐマーメイドに憧れがあったんだって。もちろん私はあんな風に泳げないわ。」
「じゃぁウミさん、よろしくお願いします。」
一旦森に作られた広場に転移した後、東に向かって飛んで貰う。遥か先には、こちら側を捜索中のハーピィさんが見える。
そこを目指して移動中、何やら思案中のマルシアさん達を発見。近くに降りてもらう。
「あれ?リョータさん?リョータさんも異変に気づかれたのですか?」
「ん?いや、ワイバーンが沢山取れたからバーベキューのお誘いに来たんだけど、何かあったの?」
「ええ、…いえ、逆ですね。魔獣がいないんです。この辺りだとゴブリンやモンキー系、ウルフ系にキャット系の魔獣がいるのですが、全く姿が見えません。」
「ふ〜ん、それってオークよりも弱いのかな?もしかしたら、ハーピィさん達を見て逃げ出したのかもね。」
「なるほど…オークより強い、となると1部の上位種。配下の魔獣に被害が出ないように逃げ出した、と考えても可怪しくは無いですか…。
えっ?ワイバーンって言いました?」
「うん、ワイバーン。バーベキューするから、今日の捜索は一旦終わりにして、島に戻ろう。」
「………。」
「ん?どうかしました?」
「いえ、ワイバーンですか、流石リョータです……。」
まだマルシアさんは思案顔だ。
「何か気になる事でも?」
「逃げ出した魔獣が何処に向かったのかと思いまして。もう少し探索を続けても?」
了解をし、夕方まで探索を続けた結果、無事にマルシアさんの仲間たちを発見。
島に帰還した。
戻った時にはワイバーンの解体も完了しており、ガルとマルシアさんの仲間たちの歓迎会となった。
今回でガルの仲間たちが約180人、マルシアさんの仲間たち約160人、その他の兎や狐、猫の獣人さん達が合わせて200人程増え、ハーピィやマーメイド迄合わせると住人は1000人を超えるだろう。
ハーピィさんやマーメイドさんは何人居るのか知らないけど。
しかし、賑やかになったものだなぁ…お酒が足りないな。アルベール領に着いたら、先ずは酒の大量購入だな。他国との貿易もしてるって事だったし、醤油や味噌も探して見よう。
歓迎会はお酒が少なくなってきた為、早めにお開きになった。マルシアさんチームはまだ住居も決まって無いしね。
割振りは皆で話し合って決めて貰おう。
「さて、俺は温泉でも入って来ようかな。」
湯気の上がっていた辺りを思い出しながら転移魔法を使う。
地上から5メートル位の高さに出て焦ったが、無事着地。まぁ、俺のステータスなら、どんな高さから落ちても死ぬ事は無いだろう。
脱衣場見たいな所はあったが、何十年と放置されていたので、崩れてしまっている。
もちろん魔法ですぐに建て直したけどね。
「あっあぁ〜!…いい湯だ!」
温泉はちょっと熱め。でも湯船は少し浅いな。座るには浅いし、寝転ぶには深い。微妙に違和感がある。明るい時にでも改装しよう。
既に日は沈んでいるが、星の光だけでもそこそこ明るい。こっちには月が無いんだよねぇ…大潮とかも無いのかな?
確かにこっちに来てから潮の満ち引きって感じないなぁ。
等とどうでも良いことを考えていると、山の麓から火の手が上がった。
あそこは村か何かかな?お祭りでもしているのか?気になったので、温泉から上がって腕輪から望遠鏡を取り出す。
覗いて見ると、村に魔獣が襲いかかっている様だった。
「あれは誰かが火魔法を使ったのか?そう言えば逃げた魔獣の行き先をマルシアさんが気にしてたけど…あれって俺のせいなのかも?」
風呂上がりなのに背筋が寒くなったよ。ヤバい、助けに行かないと!
すぐに服を着て、炎を目印に転移。
幸いにもまだ村の防壁は破られていなかった。防壁を飛び越え、中から結界魔法で村を包み込む。
派手に魔法を使ったからか、村人に取り囲まれた。
「何者だ!魔物をけしかけたのはお前か!」
「違う!魔法で結界を張った。もう安全だ!」
「何!…おい!」
声をかけてきた者の合図で何人かが防壁の確認に走ったようだ。
うーん…これは待ってれば良いのかな?
「山頂付近の温泉に浸かっていたら、炎が上がるのが見えて駆けつけた。敵意は無い。それよりも魔物は倒さなくて良いのか?」
「今確認を出した。少し待ってくれ。」
暫くして先程駆け出して行った人達が戻ってきて、何やら報告をしている。どうやら彼がリーダーみたいだ。
「すまなかったな。結界魔法を確認した。しかし、この大きさの結界を張れるとは、あんた何者なんだい?」
「ただのB級冒険者さ。ちょっと魔法が得意な、ね。怪我人がいるなら治療しよう。案内してくれ。」
「いや、治療魔法が必要な程の怪我人はいない。それより結界は何時まで持つ。」
「まだ暫くは解けない筈だ。その間に撃退する。何処か見通しのいい所に案内してくれ。」
「なら大丈夫だ。先ほどの報告だと、殆どの魔獣は結界に触れただけで弾き飛ばされてピクリとも動かないとの事だ。」
うん、それは何より。
あれ〜、俺のヒーロームーブは?
なんか大した事ない相手に張り切って大騒ぎしてる小物っぽく無い俺?
"ちょっと魔法が得意な、ね"(キリッ)とか言っちゃったよ?
2回も「案内してくれ!」(キリッ)って言っちゃったよ?
はぁ~、似合わない事はするもんじゃないなぁ…もう帰ろうかな。
「ここはもう大丈夫だな?近くに村が有るならそこも確認しておきたい。」
「この辺りはここだけだ。西と南にも村が有るが、ここから歩いて1日程掛かる。魔獣もそこまでは行かないだろう。」
大丈夫そうだ。この村の住人は森から魔獣が来るのに慣れているのかもな。
しかし…ここに魔獣が来るってぇ事はだよ?
ディニク辺りもやべぇんじゃねえのかな?ちょっと様子を見に行ってみるかな?




