1話目 落雷からの転生?
「はぁ〜…渋かったねぇ」
そんな呟きに船長が答える。
「雷鳴らなきゃもう少し粘れたけど、さすがに危ないからねぇ。餌のアジやらエビ何かをお土産に持っていきなよ」
今回は最近話題になっているバナメイエビを使っての試験釣行。
船長と2人で仕掛けなど、試行錯誤の釣りだったのだ。
オレはライフジャケットを外しながら
「ヒラメ一枚しか釣れなかったし、嫁も喜ぶよ。晩飯は刺身になめろう、エビチリだな。ヒラメは熟成させて寿司でも握るかな。」
そんな話しをしていると大粒の雨が降り出した。
急いで片付けをし、船長へ挨拶をして自宅へと車を走らせる。
自宅につく頃になると、さらに雨足は強まり、本格的に雷も鳴りだしていた。
車から釣り竿とクーラーボックスを持ち、玄関へと向かう途中で、轟音とともに目と前が真っ白になる。
ビクッと体を収縮し目を瞑る。
心臓は早鐘を打つように激しく動いている。
(びっくりしたぁ!近くに落ちたか?)
目を開くが、まだ目の前は白いままだ。
激しい光にまだ視力が戻ってないのかと思い、その場にしゃがみ込む。
足元にはヒラメがビタンビタン、アジとエビがビチビチ、イソメがウネウネしている事に気付く。
(あれ?クーラーボックスは?ん?目は見えてる?)
改めて当たりを見回す、真っ白だ。上も下も、つなぎ目のない白。影も無い。
(なんだよこれ!どこだよここ!まさか…、死後の…?)
さらに鼓動は激しくなり、死を意識した途端にえずく。
四つん這いになり暫くの間えずいていると、頭上から声がかかる。
「お〜、お前大丈夫かぁ?」
顔を上げると坊主のおっさんが居た。
「あんたは、 誰だ? ここが何処か、 わかるか?」
おっさんはオレの背中を擦りながら答える。
「オレか?オレはお前らのいう所の神様だな。雷様だ。此処は神域ってトコなんだが…。
いや〜悪かったなぁ〜ペットが言う事聞かなくてよぉ、叱ってたんだよ。
いつもオレの靴を隠すんだぜぇ、いい加減にしろってんだ。そしたらアイツ、オレの雷避けるもんだからよ、んでお前さんに当たっちまったわけだ。」
(雷様?当たった?やはりオレは死んだのか?)
愕然として視線を落とすと、歯型でボロボロのサンダルを片足だけ履いている足元が目に入った。
「ふっ、ふっははははははは」
神を名乗るおっさんの足元に、不意に笑いが込み上げた。
「おいおい、大丈夫かぁ?お前さん、死んじまった訳だけどわかってるか?」
「ふうーふうー…ああ、実感は無いけど、どうやら死んだらしいな。」
笑った事で少し落ち着いたみたいだ。
(マジかぁ〜…釣り竿は雷落ちやすいってホントなんだなぁ… かどやの塩ラーメン、和泉亭のとんかつ、カナリアのオムライス…
死ぬ前にもう一回食いたかったなぁ。
今日釣ったヒラメだって、寿司、刺し身に昆布締め、カルパッチョ… はぁ)
頭の中でため息をついてから神を名乗る男に問う。
「それにしても、閻魔様じゃなくて雷様なんだな?」
「お前さんをオレが殺しちまったからなぁ、オレのトコに来るようにしたのさ。ペット達も一緒にな。」
「ペット?あぁペットねぇ。」
(魚や釣りエサの事だよな?エビはともかくイソメをペットにする奴いないだろ。)
「それで?オレはこの後どーなるんだ?ペットとここで暮らすのか?」
「いや、お前さんのペット達は海じゃないと生きていけないだろう?流石にここに海を作る訳にはいかんしな、オレの管理する別の世界に行ってみんか?」
「雷を無かった事にして今まで通りって訳には行かないのか?」
「仮にも神の雷だからなぁ、無かった事には出来ねんだよ。ゴメンなぁ。」
「別の世界ってどんな所なんだ?」
「元いた所とそんなに変わらんだろう?海が有って山が有って空が有るぞ。
人も居るし、動物も居る。まぁ少し文明は遅れているしれんかな?」
「安全なのか?いきなり破落戸に絡まれて死亡とかはヤダぞ?そもそも急に現れて不審に思われないのか?」
「まぁその辺は任せてくれ。
知らない世界に、無責任に放り出すような事はしないさ。
知り合いも居ない、知識も無いじゃぁ流石に辛いだろう?
何かお前さんからリクエストはあるかい?」
(リクエストか……
きっと海の近くに行くことになるんだろう。船や釣具が有れば食い物には困らないか?)
「船を貰えたり、釣具を持っていく事は可能か?」
「あ〜船は構わんが、釣具は無理だな。向こうで作れるようにしとくからそれで勘弁してくれ。
ペット達も向こうで困らないようにしておくよ。」
「わかった、ありがとう。
じゃあそろそろ案内頼めるか?ペット達が死にそうになってる。」
「おっと!じゃぁ案内するか。
向こうで困ってるヤツが居たら出来るだけ力になってやってくれ。本当に済まなかったな。」




