#1-27 ステータス調査 襲来!!
お互いがレベル3になった。何故、最初にレベル3の状態にしたのか? それは、レベル2の状態だと検証中にレベルアップしてしまうからである。
レベルアップすればステータスが変化する。つまり、ヴリドラさんの攻撃によって受けるダメージが減少してしまうのだ。今回は全く同じステータスの状態で100回分データが取りたかった。だから、最初にレベルを3にした。
「じゃあ、こっから検証ね。はいこれ。」
自分は谷口さんにスマートフォンを渡す。
「えっと……何を100回すればいいんだっけ?」
「まず、自分がヴリドラさんの【押しつぶし】に対して【防御】をする。【防御】したら1回本気で殴る。谷口さんは殴った時に減ったHPバーを撮影して。そして、倒した後に自分の残りHPを確認してメモアプリでメモして。」
「分かった。とりあえず、ヴリドラのHPバーの撮影と師匠の残りHPのメモを100回すればいいんだね。」
「10匹倒したら交代で。今日はお互い50匹ずつのデータを取ることをノルマでいくぞ。」
「お、おお!」
そこから、2人の作業が始まった。
撮影するHPバーはかなり親切な設計になっており、どこの角度から見てもHPバーの側面や裏側を見る事が出来ない。つまり、ヴリドラさんを正面から覗いても、背面から覗いても、HPバーは真っ直ぐ表示されている。どの向きからでも真っ直ぐ表示されているので、人によって見え方が変わっている不思議な代物なのだ。
よって、撮影する際は向きを気にする事がない。ただ、正確な値を知る為にはなるべく近付かないといけなかった。
「【地響き】来るぞ!」
「おっとっ!?」
谷口さんは間一髪でジャンプをして回避をする。
最悪、攻撃を喰らってもダメージは小さいのだが、既に手に握っているスマートフォンは唯では済まない。貴重品は【アイテムボックス】にしまっておくのが普通なのだが、今回は撮影が必要の為、持たざるを得ないという状況になっている。
うーん、これでは危険だ。ながらスマホ運転と同じくらい危険だ。通販を見た感じ、かなり便利そうなカメラ(?)が売ってたんだけど、高いんだよね。けど、安全に変えられる以上、早く貯金して購入するしかなさそうだ。
谷口さんは最初の方は楽しもうとしていたが、徐々にその笑顔が消えていく。それもその筈、何時間もずっと同じ事をやっているのだから。それに撮影とメモも兼ねているので、経験値効率も非常に悪い。何故奥にいって高レベル帯を狩らないのかとずっと心中で愚痴ってそう。
最終的には彼女の目のハイライトが完全に消滅しながら、無心でヴリドラさんを葬っていた。
「お、終わった……」
2日間掛けて、なんとかヴリドラさんのデータを100回ずつ回収する事が出来た。谷口さんの作業時間は累計28時間ってところか。
「逃げ出さなかったね。」
普通、逃げ出す。1日14時間働かないといけないという超ブラック企業だから。しかも、ずっと同じ作業の割にはレベルも一つしか上がっていない。レベリングの効率もかなり悪い。
この環境は地獄以外何物でもない。何度も言うが、自分は楽しいと思うからやっていける。だが、谷口さんとなるとそうもいかないのだろう。
「……逃げ出さないよ? 私が決めた環境の場だからね。それに今すっごく楽しいからね!」
そんなハイライトが消えた目で言われても恐怖しか感じないのだが。
谷口さんは疲労で直ぐに寝るのだが、自分はそんな簡単に寝る訳にはいかない。深夜にもやるべき事があるからだ。いつもはサイトに情報を書き込んでいるのだが、今回は集めた情報を分析する作業を行う。
流石に睡眠不足と過労の蓄積で少しずつ疲労が溜まっているが、まだまだいける。あと2週間は頑張りたい。
まずは毎朝こそこそやっていた『自滅』の成果だ。最初は痛いのに対し恐怖しか感じなかったが、ポーションで想像以上に回復出来たので、数日程で『自滅』に適応できるようになった。
レベル2・レベル3・レベル4をそれぞれ数十回、自滅行為を繰り返し、喰らったダメージを算出した。
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【レベル2】攻撃力84、守備力111
26、29、27、28、28、30……
= 平均28±2ダメージ
【レベル3】攻撃力87、守備力115
31、29、30、28、31、27……
= 平均29±2ダメージ
【レベル4】攻撃力90、守備力118
31、28、34、32、30、29……
= 平均31±3ダメージ
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平均ダメージを算出していると言ってるが、明らかにダメージが違うものは端折っている。痛いのが怖くてダメージが少なかった場合やクリティカル出た場合等がその時だ。
クリティカルはレベル4の時に1回だけ出たのだが、普通に100ダメージ程入るからガチで死にかけた。自分のHPはレベル4で122しかないから……うん、クソ危なかった。この時点でもう自滅するのは止めようと思った。
そんなこんなでなんとか自分の【通常攻撃】のダメージを算出することが出来た。このデータを元に攻撃力と守備力のダメージ計算の法則を求める。
もしかしたら、ダメージ計算は攻撃力と守備力だけに依存していないのかもしれないけど、とりあえず攻撃力と守備力のみに依存していることと仮定しよう。
えっと、これはどうやって求めればいいんだ? 敏捷性とは違って、数学的に求めるのは難しそうだ。とりあえず、ゲームでよく使われるダメージ計算を当てはめてみるか。
まずはこれ、RPG業界で最もシンプルで最も使われる計算式だ。新作RPGのダメージ法則を知りたかったら、とりあえず最初にこの式を用意する。
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(与えるダメージ) = (物理攻撃力) - (物理防御力) / 2
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攻撃力を物理攻撃力、守備力を物理防御力と置き換え、上式に代入してみる。
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【レベル2】攻撃力84、守備力111、平均28±2ダメージ
84 - 111 / 2 = 28.5 ダメージ
【レベル3】攻撃力87、守備力115、平均29±2ダメージ
87 - 115 / 2 = 29.5 ダメージ
【レベル4】攻撃力90、守備力118、平均31±3ダメージ
90 - 118 / 2 = 31 ダメージ
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あれ? 同じ計算式と喰らったダメージが殆ど同じだ。レベル2、3では小数値だが、切り捨てれば同じ値になるし……もしかして、この式が正しいってこと?
もう一度、計算で求めたダメージ値と検証で得たダメージ値を見比べる。うん、やっぱり同じだ。
もう、この式が正しいって事でいいかな? うん、面倒くさいからこれでいいや。
よし、ここで全く一致しない値が出て、ここからが検証の本領発揮だっ! って所だったのに宇宙人さん……もう少し手を込んでもいいんじゃないでしょうか? これじゃあ、自分が検証する間でも無く、感覚だけで解析されちゃうよ。まぁいいや、楽だし。早めに法則が見つかって損することは無い。
とはいえ、全ての攻撃において全く同じ値が出るわけでもない。同レベル帯にも、若干ダメージに乱数がある。
レベル2では26~30ダメージ、レベル3では27~31ダメージ、レベル4では28~34ダメージのどれかに固定されており、クリティカルや恐怖心の軽減といったイレギュラーを除けば、かならずダメージ数はこの範疇に収まる。問題は乱数はどれ程分散されるかだ。
これも答えは滅茶苦茶簡単だ。答えは与えたダメージの±10%、少数点切り捨てだ。レベル2、3では±2なのにレベル4では±3になっているからだ。レベル2、3の与えるダメージが20代、レベル4が30代になっている。だから、その10%の±2、±3になっている、ということだ。
つまり、ダメージが40を超えれば乱数は±4、100を超えれば±10になることが簡単に想像出来る。ほら、こちらも滅茶苦茶シンプルでしょ?
というわけで、ダメージ計算の法則がまとまりました。想像の500倍早く終わってびっくりしてます。
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(与えるダメージ) = (物理攻撃力) - (物理防御力) / 2 ±10%
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